2007年のケータイ業界はどうなる?──石川温氏が動向を予測(2/2 ページ)

» 2007年02月06日 21時35分 公開
[大滝啓也,ITmedia]
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放送と通信の融合は進むのか──カギはCPなど参加できるモデルを作れるか否か

 ワンセグは、今や年齢に関係なく、若年層から50歳以上の人まで、幅広いユーザーが利用するサービスとなっている。auではワンセグ端末をすでに140万台以上出荷しており、他キャリアでも対応機種が増えるなど、今後はカメラと同様に標準装備の機能になっていくと石川氏は予想する。しかし月平均視聴時間は約4時間で、これは家庭のテレビの30分の1程度の数字でしかない。

Photo ワンセグは月におよそ4時間程度しか見られていないという

 現在のワンセグ対応携帯電話は、家庭でテレビを見ながらプレゼントに応募する際などに“ショートカット”的に使われている。またワンセグはテレビ離れが進む若者を再びテレビに向かわせる役割を果たしており、データ放送も一般的なテレビ放送との“ダブルウィンドウ”として使われているという。通販番組などでは、家庭のテレビに比べて200倍の誘導率を誇り、販売効率も57倍と、一定の効果が見られるそうだ。ただ、結局のところワンセグはキャリアとテレビ局だけで行っているビジネスであり、「いかにコンテンツプロバイダや他の企業が参加できるビジネスモデルを作るかがカギ」(石川氏)だという。

PhotoPhotoPhoto ワンセグはECサイトとの連携などが有効だが、キャンペーンへの誘導などはあまり効果がないなど、実証実験でいろいろなことが分かってきている。ただ、キャリアとテレビ局だけのビジネスになっており、コンテンツプロバイダの出る幕がない

 デジタルラジオはワンセグと同等の技術だが、“ワンセグのおまけ機能”的要素が強いと石川氏。多彩な番組編成が可能になるものの、利用できる範囲が首都圏でいえば国道16号線の内側と狭く、推進役のTOKYO FMの独り相撲で他社がついてこられなくなったことも将来性が見えにくくしているとする。

 今後はウィルコムのインターネットラジオ(2006年12月の記事参照)や、KDDIとソフトバンクが企画会社を立ち上げている「MediaFLO」などが盛り上がると予想。真の放送と通信の融合は、アナログテレビが停波を迎え、700MHz帯の争奪戦が起こる2011年以降に進むと見る。

コンテンツプロバイダにとっては“冬の時代”

 KDDIがauで行っているコンテンツ展開がうまく行っていると言われているが、よく見ると「EZ Book Land!」は丸善、「au Travel」は日本旅行といったように、うまく機能しているのはキャリア主導の“垂直統合型”ばかりだと石川氏は指摘する。「iモードはオープン」と言っていたドコモでさえも、楽天と組んで“楽オク”を展開するなど、水平分業からはほど遠い。

 また、auはGoogleと、ソフトバンクモバイルはYahoo!と連携し、ポータルサイトの入口に検索窓を用意したことから、メニューをたどってキャリア公式サイトにアクセスするのではなく、検索エンジンにキーワードを入力し、目的のコンテンツに直接アクセスする流れができてきた。このこともコンテンツプロバイダーにとっては逆風となる。

 キャリアはごくわずかのコンテンツ利用手数料を増やすことよりも、エンドユーザーにフルブラウザなどを利用してもらい、いかにしてパケット定額制の上限料金まで使わせるかを考えるようになってきていると石川氏は話した。

 また、Web 2.0時代を迎え、ユーザーは「コンテンツを見る」だけでなく、「参加する」ようになってきたのも大きな変化だという。コンテンツプロバイダがサイトを更新する頻度には限界があるが、常に参加ユーザーの書き込みが絶えないSNSなどは、新鮮で飽きの来ないコンテンツであり、auの「うたとも」やEZ GREEに見られるように、キャリア自身が力を入れて運営している。そもそもパーソナルなツールであるケータイはSNSとの相性がいいため、今後もこういった利用は増えていくと見る。

おサイフケータイは今年こそ普及する?

 FeliCaを搭載したおサイフケータイは、現在急速にその数を増やしている。それに加えて、モバイルSuicaをクレジットカードなしでも利用できる「EASYモバイルSuica会員」が開始され、敷居が低くなったことから、今年こそは普及に弾みがつくと石川氏は見る。

 まだ携帯電話でのサービスは正式なアナウンスがないものの、3月18日には首都圏の私鉄やバスで利用でき、Suicaとの相互利用も可能な「PASMO」のサービスが始まり、利用可能な範囲はさらに広がる。セブン-イレブンをはじめとする、セブン&アイ・ホールディングスグループの各店舗で利用できる電子マネー「nanaco」が今春立ち上がるのも追い風だ。「今後はポイントサービスなどが普及のポイントになる」(石川氏)

 すでに会員数が150万人を突破したというドコモのDCMXは、“利用料が電話代と一緒に請求される”という大きなメリットがある。手軽に使えることから、比較的多く利用されているかと思いきや、対応タクシーに乗っても「お客さんが初めての利用者です」と言われてしまうことがあるなど、おサイフケータイで利用できるサービス自体、まだまだ認知度は低いようだ。

 おサイフケータイがなかなか普及しないのは、導入や操作、機種変更時の手続きが面倒という問題があるからだと石川氏は考える。「財布の買い換え(携帯電話の機種変更)でお金を移すのに手数料が取られる」ことや、故障時などに電子マネー部分のアフターサービスがキャリアショップで疎かになっているのもユーザーに負担感があり、こうした問題の解消も、普及に向けて不可欠だと話した。

Photo おサイフケータイはなかなか普及が進まないが、いろいろな問題点が徐々に改善されつつある。今年こそ普及に弾みがつくと石川氏

通話は最大のコンテンツ

 なお、携帯がいかに高機能になろうとも、基本となる通話機能はなくならないと石川氏は言う。ウィルコムが月額2800円で通話定額をはじめ、ソフトバンクも月980円のホワイトプランで、時間制限はあるものの部分的な通話定額を開始し、ユーザーの支持を集めている。「実はケータイの最大の敵は、他に何もできなくしてしまう“通話”である」と石川氏。それだけ重要視される機能であり、つながりやすさ、通話品質などにキャリアは今一度力を入れる必要があると話した。

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