2007年のケータイ業界はどうなる?──石川温氏が動向を予測(1/2 ページ)

» 2007年02月06日 21時35分 公開
[大滝啓也,ITmedia]

 ケータイジャーナリストの石川温氏が、NICT情報通信ビジネスセミナー2006で「2007年ケータイ業界大予想」というテーマで講演。携帯電話業界の今と、2007年の各社の動きを説明した。

番号ポータビリティ第1ラウンドはKDDIの“一人勝ち”

Photo 石川温氏

 石川氏はまず、2006年10月24日にスタートした番号ポータビリティ(MNP)制度によるユーザーのキャリア間の移動を総括。2006年12月末現在、番号ポータビリティを利用してKDDIに転入した契約数が14万8800に上るだけでなく、転入したユーザーのARPU(1ユーザーあたりの月間売上高)がau全体の平均より1300円程度高いことを挙げ、質・量ともにKDDIの“一人勝ち”だったことを改めて紹介した。また、番号ポータビリティを利用して番号を変えずに移行するよりも、解約して新規に契約するユーザーが多かったことにも言及し、まだ番号を気にせずキャリアを変えているユーザーも少なからずいるという現状を示した。

PhotoPhoto 番号ポータビリティ序盤戦はauの一人勝ちという結果になった。auの平均よりもARPUの高いユーザーが転入しているという

 ただ、3月は「いちねん割引」「年割」などの更新月を迎えるユーザーが多く、「盛り上がるのはこれから」と石川氏。各社の春商戦モデルは、「ドコモは2007年春モデルで厚さ11.4ミリの薄型端末や2画面ケータイなど個性的なモデルをそろえたのが興味深いものの、2006年秋に発表したワンセグ端末の投入が遅れている。auは、ワンセグとFeliCa搭載機を大量投入したが、デザインのインパクトに欠け、薄型のラインアップが少ない。一方ソフトバンクは薄型で高機能な端末をバランスよくそろえているが、量販店重視が逆にキャリアショップをおざなりにしており不安」(石川氏)と、各社とも決め手に欠ける点を指摘した。

 ちなみに2007年の春商戦がどうなるかについては、「正直ソフトバンクは強いと思う。弱点がなくなった。料金プランもホワイトプラン・Wホワイトとそろえ“※印”がなくなったことで、豊富な端末のバリエーションと合わせて強力な布陣ができた思う」と分析。逆にauは「昔のドコモっぽく、守りの姿勢が見られる」との見方を示した。

音楽配信サービスの普及には「手軽さ」と「定額制」が重要

 最近では、ポータブルオーディオプレーヤーだけでなく、ケータイで音楽を聴く若者も増えていることから石川氏は「まだまだ音楽ビジネスが伸びる」と話す。音楽配信サービスは、大部分は携帯電話向けであり、「着うたフル」や「着うた」が多くを占める。携帯向けの配信が多い理由は、決済方法がクレジットカード払いではなく、携帯電話の利用料と一緒に代金が払え、心理的負担が少ないことが大きく影響していると見る。

 auは、音楽を同社の製品戦略の柱に据えていることからも分かるとおり、取り組みは他社よりも積極的だ。着うたフル対応端末は1000万台を越えており、サービスを利用できるユーザーもすでに多数いる。auならではの音楽配信サービス「LISMO」も展開しているが、これはどちらかというと端末でダウンロードした着うたや着うたフルのバックアップに用いられているケースが多いという。

 ドコモは、2006年秋に発表した903iシリーズや、一部の703iシリーズを、ナップスタージャパンが提供する「Napster To Go」サービスに対応させた。これはPC経由で楽曲をダウンロードし、ケータイで持ち運べる音楽配信サービスで、月額1980円で約250万曲のラインアップの中から好みの楽曲が聞き放題となるが、楽曲のラインアップが洋楽中心で、なおかつ対応機種が少ないのが弱みとなっている。石川氏は「課金を意識することなく好きな曲を好きなだけダウンロードできるのは便利。楽曲データをケータイ単体でダウンロードできるようになると爆発的に普及するようになるのではないか」との見通しを示した。ユーザーがこのような“定額制”に慣れてくると、今後は動画や電子書籍配信などへのステップアップも考えられるという。

 ソフトバンクモバイルは、端末をiPodとセットで販売していたりするものの、なかなか携帯の音楽機能に関する具体的な戦略は見えてこない。ただ、先日アップルがiPhoneを発表したMacworld Expoに孫正義社長が姿を見せたことから、「興味はあるはず」(石川氏)と分析する。

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