連載
Interview:
喜久川社長が振り返るウィルコムの2006年、そして2007年 (1/3)
音声定額という“ホームラン”に続き、“W-ZERO3”“W-SIM”というヒットを重ねながら、堅実に純増数を伸ばすウィルコム。ウィルコムにとって2006年はどのような年だったのか、ジャーナリストの神尾寿氏が、喜久川政樹社長にインタビューを行った。
携帯電話業界がMNPで沸き立つ一方で、今年一年、着実に成長したのがPHSキャリアのウィルコムである。同社は音声定額サービスの導入を皮切りに、“ウィルコムだけ”を積み上げるマーケティング(6月26日の記事参照)を徹底。コンシューマー市場だけでなく、法人市場においても注目の存在になっている。
今日と明日の事日想は特別編として、ウィルコム社長である喜久川政樹氏にインタビュー(10月10日の記事参照)。2006年の総括と、来年、そして今後に向けての展望を聞いた。

「堅実な成長」と「健全化」に成功した2006年
2005年2月、DDIポケットからウィルコムとして生まれ変わった同社は、音声定額など特徴的なサービスを矢継ぎ早に投入した(参照記事1/参照記事2)。携帯電話とは異なるビジネスモデルで、注目を浴びる存在になった2005年に続き、2006年は新生ウィルコムが“軌道に乗る”年であったと、喜久川氏は振り返る。
「昨年は名実ともに再立ち上げの年でした。ウィルコムになり、PHSを事業体として生き残らせる、伸ばしていくという時期。昨年は“音声定額”というホームランがありましたが、一方で社名変更や新たなプロダクトの投入、プラットホームの開発投資もあり、収益的に見れば大きな赤字でした。
一方、今年の総括は、加入者をしっかりと獲得する“堅実な成長”と、会社のバランスシートを“健全化”していくこと。そのような年だったと思います。(純増数を)伸ばすことを重視しながら、今年8月以降から黒字基調に持ってこられたのが大きなポイントでしたね」(喜久川氏)
ウィルコムは、音声定額やPCも含むデータ通信定額制など特徴的なサービスを多く持っているが、それらを派手に宣伝するのではなく、着実に同社のサービスが求められる市場を開拓・訴求してきた。以前、氏が「マイクロマーケットの連鎖」と語ったマーケティング手法が奏功し、堅実な成長が続いているようだ(6月26日の記事参照)。重要な時期には大きな投資をしながら、早期の黒字化、事業の健全性を重視する。このバランス感覚こそが、ウィルコムの強かさに繋がっている。
「成長の礎になったのは、やはり音声定額サービスですね。さらにノートPCとフルブラウザ端末の中間(のマーケット)に位置するW-ZERO3シリーズ(参照記事1/参照記事2)の成功。これが今年の牽引役になりました。
もう1つ(今年)の大きな流れがW-SIM(2005年7月の記事参照)です。前々から構想はお話ししてきましたが、それがプロダクトとして開花してきた。W-SIMを使うことで、W-ZERO3から9(nine)まで新しいマーケットを作る動きができた。その点でもポイントになる1年だったと思います」(喜久川氏)
予想以上の成功と、想定以下に留まったもの
ウィルコムのこの1年を振り返ると、契約者数の純増がコンスタントに続いていたのが印象的だ。携帯電話キャリアの純増数に比べると月ごとのブレが少なく、堅調な伸びをしている。
しかし、ウィルコムでは契約者をひとくくりに捉えておらず、その純増数の中身を見れば、成功したセグメントがある一方で、今ひとつの伸びだったセグメントもあるという。
[神尾寿,ITmedia]
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