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時計や靴、玩具と携帯がつながるとき、Wibreeが生きてくる──Nokiaのテュリマー氏

Bluetoothとの使い分けなどの面で、いまひとつ具体的な用途が見えない近距離無線通信技術のWibree。Nokiaのテュリマー氏は、身の回りのものを携帯と連携させようとするときに、この技術が生きてくると話す。
2006年12月13日 18時12分 更新

 Nokiaが10月に発表した近距離無線通信技術のWibree(ワイブリー)。すでに各国で普及フェーズに入っているBluetoothとどう使い分けるのかという懸念があるなど、その必要性や用途は今ひとつ市場に伝わっていない感がある。

 「Wibreeはセンサーのような用途で用いられ、Bluetoothと共存できる」──。こう話すのは、NokiaでWibreeを担当するコーポレート・ストラテジー、テクノロジー・アウトライセンシング責任者のハッリ・テュリマー氏。Nokiaはあらゆるものが携帯電話と接続する世界を想定して、この技術を推進しているのだという。

Wibreeは、携帯電話に新しい可能性を開く技術となるのか

Photo NokiaでWibreeを担当するコーポレート・ストラテジー、テクノロジー・アウトライセンシング責任者のハッリ・テュリマー氏

ITmedia Wibreeの技術概要について教えてください。

テュリマー氏 WibreeはNokiaが今年10月に発表した携帯端末向けの近距離無線通信技術です。2.4GHz帯の周波数帯を利用し、超低消費電力が大きな特徴。データ伝送速度は1Mbps、距離は約10メートルまでをカバーします。

 Wibreeの利用を想定しているのは、時計のような1年以上のバッテリー持続時間を持つデバイスとなります。時計などの端末に接続機能を持たせ、携帯電話やPCと通信できるようにします。

ITmedia 近距離無線通信技術としてはBluetoothがあります。なぜWibreeが必要なのでしょうか。

テュリマー氏 現時点では、これらの端末を接続するためのオープンな標準技術がないからです。

 Bluetoothはそもそも、携帯機器などの小型端末向けに設計された通信技術ではありません。改良が進んでおり、携帯電話への搭載には問題はありませんが、ボタン電池を使うようなデバイスに搭載する場合には消費電力が問題になります。確かにオープンで広く採用されている技術ですが、低消費電力という要件を満たすことができません。

 Bluetoothは、音声ストリーミングやファイルの転送などには適しており、今後もこの分野で利用されることでしょう。ほかにも、ローカルでの接続を実現する技術がありますが、みなプロプライエタリ(独自の仕様)で互換性がありません。より幅広い、多くのデバイスで採用されるには、オープンであることが重要です。

 Nokiaは2000年頃から、携帯電話と低消費電力デバイスとを接続するというニーズがあると考えていました。携帯電話にはすでに、GSM/W-CDMAをはじめ、複数の無線通信技術が搭載されています。我々としては、これ以上、無線やアンテナの数を増やしたくありませんでした。そこで、低消費電力デバイス向けに最適化され、携帯電話の既存の無線技術に統合可能な技術を開発し、オープンな標準にしていくことに決定したのです。

 WibreeはBluetoothチップと共存します。携帯電話におけるWibreeの実装は、Bluetoothとのデュアルモードチップになると予想しています。標準的なBluetoothチップにWibreeを付加することは、コストからみてもサイズからみても、大きな負担にはなりません。0.1ミリ程度のサイズ増、数セントのコスト増で実現するでしょう。実際にはほとんど影響がないといえます。

ITmedia Nokiaが想定しているWibreeの用途は?

テュリマー氏 デバイス間で大容量データを転送するような場合には、これまで通りBluetoothが使われるでしょう。Bluetoothヘッドセットを使った通話では、音声データが常時送られている状態ですが、Wibreeはセンサーのような役割を果たすと思います。小型端末が短いメッセージを少ない頻度で送るような場合です。

 例としては、スポーツ時計があります。まず靴に時計と接続できるセンサーやGPSレシーバーを装着しておきます。ジョギングが終わると、PCに自分が走ったコースを表示したり、運動量を計算することができます。このようなスポーツ時計はすでに開発が進んでおり、事業として発展しつつある分野で、時計と接続するセンサーを持つさまざまなアプリケーションや製品が登場しています。ここにWibreeを使えば、携帯電話を含むより多くの端末に接続できるようになります。

 Wibreeは小型端末に相互運用性をもたらします。このような環境では、携帯電話は時計のストレージの役割を果たすことになります。小型デバイスのディスプレイは小さく、表示や操作が限定されますが、携帯電話と接続することで小型端末を携帯電話のアクセサリのように利用することも可能となります。

 電話が鳴ったら時計のボタンを押して通話を開始する、時計に保存する情報を携帯電話で入力する、といったことが実現するわけです。このように、相互運用性、統合性があれば、小型端末と携帯電話あるいはPCと接続でき、既存のアプリケーションに付加価値を加えることができます。

ITmedia このほかにどのような適用がありますか?

テュリマー氏 まず、先にあげたスポーツおよびウェルネス(健康)があります。この分野はある程度事業化が進んでおり、すでにニーズはあると見ています。

 それ以外にニーズが見込めるセグメントとしては、医療やおもちゃ、ゲームなどのエンタテインメント、ワイヤレスマウス、キーボードなどのオフィス分野が挙げられます。

 医療では、モニタリング端末と携帯電話をWibreeで接続することで、携帯電話が病院などにあるITアプリケーションのゲートウェイの役割を果たせます。エンタテインメントでは、ゲーム機にリモコン機能を持たせることができます。オフィスのワイヤレスマウスやキーボードはすでにあるものですが、Bluetoothより低消費電力で利用できます。プロプライエタリ(独自の)技術の場合、PCメーカーはマザーボードに組み込んでいないため、PCのUSBポートに外部無線受信機を装着しなければなりません。BluetoothとWibreeのデュアルモードチップが登場すれば、PCにも採用され、ワイヤレスマウスなどを直接接続できます。

 Nokiaとしては、携帯電話でBluetoothとWibreeのデュアルモードチップを採用し、携帯電話と小型端末が接続できるようにしていきます。これにより、携帯電話で利用できるアプリケーションの数は増え、Nokiaユーザーに新しい体験を提供できるでしょう。BluetoothとWibreeは共存し、用途に合わせて使い分けることになります。

ITmedia 今後の計画を教えてください。

テュリマー氏 現在、ローンチパートナー6社(米Broadcom、英Cambridge Silicon Radio、米Epson、ノルウェーNordic Semiconductor、フィンランドSuunto、太陽誘電)と仕様を策定中で、2007年第2四半期に公開する計画です。

 この作業と並行して、半導体企業が自社のチップソリューションを開発します。現在の計画では、2007年末には単体のWibreeチップが登場し、WibreeとBluetoothのデュアルモードチップはその6カ月後の2008年半ばに提供されることになっています。例えばNordic Semiconductorは、2007年後半にスタンドアロンのWibreeチップを提供すると発表しています。

 Wibreeが受け入れられるよう、Nokiaと競合するメーカーを含め、業界に幅広く参加を呼びかけていきます。将来的には、Nokiaが維持するのではなく、何らかの形で独立させていくつもりです。

[末岡洋子,ITmedia]

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