連載
神尾寿の時事日想:
日本でも周辺環境が整うBluetooth。ドコモとauは「標準搭載」を検討すべき
ノートPCやデジタル家電、車載機器や業務用端末などのBluetooth搭載が進んでおり、市場・ニーズ共に広がってきている。「市場がない」を理由にBluetooth機能の搭載が遅れていた携帯電話も、そろそろ変わるべき時が来たのではないだろうか。
12月8日、Bluetooth Special Interest Group(Bluetooth SIG)は、都内で記者説明会を実施した。Bluetooth SIGのエグゼクティブ・ディレクターであるマイケル・フォーリー氏は記者説明会で、Bluetoothを取り巻く現在の状況と今後の取り組みについて語った(12月8日の記事参照)。この2年間でBluetooth関連市場は急速に広がり、2006年11月には累計10億台を達成。欧米市場では、ノキアやモトローラなど携帯電話メーカーも、標準的な機能として大半のモデルがBluetoothを搭載しているのが現状である。
では、日本の状況はどうだろうか。
各キャリアの現行ラインアップを見てみると、ソフトバンクモバイルはBluetooth対応機を積極的に揃えているが、ドコモとauは主力モデルでの採用に未だ消極的だ。ドコモはP90xシリーズと、ノキアやモトローラなど海外メーカー製端末、auは一部の東芝製端末がBluetoothの“受け持ち”となっている。お世辞にも積極的な姿勢とは言い難く、筆者の目には一部端末での搭載でお茶を濁しているだけのように見える。
日本のBluetooth市場環境も整ってきている
一方、“携帯電話以外”に目を向ければ、日本でもBluetoothの市場環境は整いつつある。
まず、この分野で代表的なBluetoothハンズフリー市場だが、ここは自動車メーカーが純正カーナビにBluetooth機能を搭載した結果、装着台数の規模がこの1年あまりで急速に拡大した。すでにトヨタ自動車が約55万台、日産自動車が約20万台、本田技研工業(ホンダ)が約12万台のBluetooth対応カーナビを販売しており、「Bluetooth携帯電話の普及を待っている」状態だ。また、これら自動車メーカー純正のBluetooth対応カーナビは、ハンズフリー通話機能だけでなく、プローブカー/フローティングカーなどテレマティクス機能により、新たなデータ通信需要を生み出す素地であることもポイントである。
自動車メーカー大手3社以外では、今年11月に発売されたスズキの新型軽自動車「セルボ」の一部グレードが、Bluetoothハンズフリーシステムを標準搭載している。また、ボルボ・カーズ・ジャパンではノキア製のBluetoothハンズフリーシステム「Nokia Advanced Car Kit』(CK-7W)」をディーラーオプションとして用意した。このようにBluetoothハンズフリーシステムへの対応は、軽自動車や輸入車にまで広がっているのだ。
Bluetoothヘッドセットや後付けタイプのハンズフリーキットの市場も堅調に広がっている。この分野はノキア、プラントロニクス、ジャブラなど様々なメーカーが存在するが、「(ノキアのBluetoothヘッドセットである)HS-4Wは発売後しばらく経っているが、コンスタントに売れ続けている」(日下部真一・ノキア マーケティング部マーケティングコミュニケーションマネージャー)という。
むろん、Bluetoothの市場はクルマだけではない。PCやポータブルオーディオ、モバイルプリンター、さらには業務用ハンディターミナルまで広がっている。例えばアップルコンピュータは最新のIntel MacでBluetooth機能を標準的に採用、ソニーもノートPCのVAIOシリーズやPC周辺機器、ウォークマンのアクセサリーでのBluetooth対応に積極的だ。業務用機器の分野では、日立オムロンターミナルソリューションズやブラザー工業のモバイルプリンター、デンソーウェーブ製のハンディターミナルなどがある。
もう「市場がない」「ニーズがない」とは言わせない
このように日本でも、Bluetooth対応機器の環は広がり、普及台数も伸びている。ドコモとauの携帯電話だけが、頑なにBluetooth対応機種を増やさないのだ。これは新たなニーズへの対応、新市場の創出を考える上で、いかがなものだろうか。
以前と比べれば、ドコモとauも、Bluetooth対応携帯電話でA2DPによるワイヤレス音楽再生の普及を試みるなど、Bluetoothにやや前向きになった。しかし、Bluetoothは本来USBのようにユニバーサルな接続方式であり、ユーザーが「Bluetoothが必要だから、この端末しか選べない」という今の状況は間違っている。
携帯電話がすべてのデジタル機器やサービスの“ハブ”であることを鑑みれば、Bluetoothを標準的な機能として位置づけて、関連市場全体を牽引していくべきである。例えば、「Bluetooth 2.0+EDR」など今後の高速化規格も、ドコモやau、ソフトバンクモバイルなど携帯電話キャリアが先導的に標準対応をしていけば、市場が急速に立ち上がるだろう。特にPCやデジタル家電でのBluetooth標準搭載を促す力があるはずだ。キャリアとしても、ドコモは「Napster To Go」、 auは「LISMO」といったPC連携型の音楽サービスを提供しているので、PCと携帯電話の接続がワイヤレス化し、ユーザーの利便性と利用率を向上できるメリットがある。
Bluetoothの市場は、すでに存在する。ドコモとauは食わず嫌い的な消極姿勢をあらため、ラインアップの大半に「標準搭載」することを真剣に検討すべきである。
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