誠

プリンタ用表示
連載

神尾寿の時事日想:

普及が進むSuica電子マネー。その全国的な推進を、JR各社は真剣に考えるべき

JR四国を除くJR各社はFeliCaを利用したIC乗車券を導入する方針だが、Suicaとの相互接続を明言しているのはJR西日本のICOCAだけだ。しかし地域ごとに規格を作るより、Suicaを全国展開したほうがメリットが大きいのではないか。
2006年11月29日 14時29分 更新

 11月27日、ミニストップが、東京23区と千葉県(千葉市、船橋市、市川市)の計135店舗で11月末までにJR東日本が運営する電子マネー「Suica」の導入を完了したと発表した(11月27日の記事参照)。ミニストップを擁するイオングループとSuica電子マネーを運営するJR東日本は2005年に包括的な業務提携を結んでいる。今回の導入は、その第1弾という位置付けだ。

 周知のとおり、Suica/モバイルSuicaは公共交通系電子マネーの草分けであり、ここにきて更なる普及・拡大を果たしつつ、機能・サービス面でも進化を続けている。

 まず普及状況だが、Suicaの発行数は約1827万枚(モバイルSuica含む、以下10月末時点の数字)。モバイルSuicaの利用者も増えており、ユーザー数は約20万人を超えた。電子マネーの利用件数は1日平均39万件である。Suica電子マネーはIC乗車券として使える東京圏と新潟、仙台を中心に広がるサービスであるが、エリア内での利用率では全国区で使えるビットワレットの「Edy」に比肩する。ユーザーへの普及度と利用率の高さを鑑みれば、SuicaとEdyは、数あるFeliCa決済の中で断トツのリードをしている。

 機能・サービス面で進化したのも見逃せない。例えば、Suicaと駅ポスターを連携した「SuiPo」(8月1日の記事参照)や、駅の会員制私書箱サービス「えきあど」(10月17日の記事参照)は、Suicaの認証機能を活用し、電子マネーとの連携も考えられている。また2007年6月からは、Suicaと連動する2種類のポイントサービスもスタートする(11月14日の記事参照)。Edyに比べて見劣りしたポイント連携の分野でもキャッチアップを図る模様だ。

 このようにSuica電子マネーは、サービス開始が早かっただけでなく、普及や機能進化の面で見てもこの市場の先導的な役割を果たしている。だからこそ、他のFeliCa決済とのリーダー/ライターの共有化が進み、コンビニなど街中の加盟店も増えている。普及のスピードと利用率が重要になるFeliCa決済において、この優位性は大きい。

他地域のJR各社も「Suica電子マネー」方式を検討すべき

 ここにきて他地域のJR各社でもFeliCa型のIC乗車券導入を相次いで発表・実現している。

 JR東日本以外のJR各社では、JR西日本が「ICOCA」サービスを開始済み(3月24日の記事参照)。IC乗車券の部分ではSuicaと相互乗り入れが実現しており、電子マネーは独自方式として展開している(2004年4月の記事参照)

 さらに11月25日には、東海旅客鉄道(JR東海)の非接触ICカード「TOICA」がスタートした(11月24日の記事参照)。ほかにも、JR北海道やJR九州がプリペイド方式の非接触ICカード導入を表明している(9月27日の記事参照)。これら新たに加わるJR各社のIC乗車券サービスはすべてFeliCaが採用されるが、今のところSuica乗車券との相互乗り入れがどうなるか、電子マネーが導入されるかは発表されていないのが現状である。

 各地域のJR各社にとってIC乗車券は鉄道の基幹をなすものであり、独自方式で導入するのは当然だろう。その上で、他のJR各社や私鉄のIC乗車券サービスと「相互乗り入れ」する形になっていくだろう。利用者の利便性を最重要視するならば、新規にIC乗車券システムを導入するJR東海、JR九州、JR北海道には、いち早く他社との相互乗り入れ実現をしてほしいと思う。

 一方、電子マネーについてだが、これはJR東日本の「Suica電子マネー」方式を他地域のJR各社が導入・推進し、全国的に広げる形でいいのではないだろうか。

 先述したとおり、Suica電子マネーはFeliCa決済としての完成度が高く、おサイフケータイ向けサービスであるモバイルSuicaも既に実現している。他のFeliCa電子マネー/クレジットとのリーダー/ライター共用化や、ナショナルチェーンでの導入も進んでいる。他地域のJR各社が独自の電子マネーを導入・普及させるよりも、Suica電子マネーを後押しする方が経済合理性が高く、ナショナルチェーンやネット決済分野など幅広い加盟店の拡大という点でも有利である。すでにあるモバイルSuicaの仕組みを使えば、迅速かつスムーズにおサイフケータイ対応を行えるというメリットもある。

 香港の「オクトパスカード」(2005年10月の記事参照)を引き合いに出すまでもなく、鉄道など公共交通と電子マネーはもともと相性がいい。そのメリットを全国的に生かすためにも、JR各社は全国規模での「Suica電子マネー」方式の導入・普及を考えるべきではないだろうか。それは利用者の利便性を大きく向上させて、加盟店の利益にも繋がる。

 JR東日本のリーダーシップ、そしてJR各社の柔軟かつ大局的な視野に立った姿勢に期待したいと思う。

[神尾寿,ITmedia]

Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.