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神尾寿の時事日想:

W44Sを絶妙なタイミングで投入するau。対してドコモは……

話題のワンセグ携帯「W44S」を投入、新サービスも発表したau。MNP序盤戦を制し、先行体制をさらに強化する体制をさらに強化することで、年内の優勢は確定的といえそうだ。
2006年11月17日 23時56分 更新

 11月16日、KDDIはワンセグ/デジタルラジオなどAV機能を強化したハイエンドモデル「W44S」を発表し(11月16日の記事参照)、合わせて「au Music Port Ver.3」を始めとするLISMOの刷新、音楽分野の強化について発表会を行った(11月16日の記事参照)。詳しくはニュース記事に譲るが、今回の発表は端末1機種のみの発表にも関わらず、KDDIの小野寺正会長やエフエム東京代表取締役会長の後藤亘氏が登壇、応援にEXILEが駆けつけるなど華々しいものだった(11月16日の記事参照)

予想以上にインパクトのあるW44Sの投入

 発表された内容も、会見の華やかさに負けてはいない。確かに新しい取り組みであるデジタルラジオは、今のところ首都圏と大阪中心部のみで利用できるサービスであり(11月16日の記事参照)、その意味で店頭での訴求力は限定的だ。その可能性については別の機会に取材・分析するつもりだが、いずれにせよ目前の年末商戦の“武器”としては、それほど影響力はないだろう。また、au Musidc Portの改良なども、ユーザーの声に応えた着実な進化ではあるが、目覚ましい店頭効果があるものでもないだろう。

 むしろ注目なのは、W44Sの実力と投入タイミングである。

 W44SはAV機能を強化したモデルとして、デジタルラジオだけでなく、地上デジタルテレビのワンセグ放送にも対応している。しかも縦方向と横方向の開閉に対応した新機構「デュアルオープンスタイル」は、サイクロイド液晶を搭載したシャープの「AQUOSケータイ」と同様にワンセグ視聴に適したスタイルである。画質もよく、しかもW44Sの液晶サイズは3インチと大きいこともあり、ワンセグ対応端末としてのW44Sのインパクトはかなり強い。これまで代表的なワンセグケータイといえばシャープのAQUOSケータイであったが、それに十分に対抗できるモデルに仕上がっていると筆者は感じた。

 さらに重要なのは投入タイミングである。W44Sは「12月上旬には投入できる。年末商戦には間違いなく間に合う」(KDDI幹部)という。年末商戦はこれまでハイエンドモデルの需要が高くなる傾向であり、W44Sのようにスペック重視でガジェット感の強い“全部入り”ハイエンドモデルは売りやすい時期だ。しかも、AQUOSケータイのイメージがやや落ち着いた中で、W44Sの新たなメディアスタイルの提案は、店頭で新鮮に見える可能性が高い。

ドコモのワンセグ端末はいつ出るのか

 KDDI幹部によると、今回のW44Sは8月に発表された一連の“秋冬モデル”と同じタイムテーブルで開発されており、8月時点での発表も可能だったのだという。しかし、11月に単独での発表になったのは、「ハイエンドモデルは発表から発売までの時間があくと、インパクトが薄れるから」(KDDI幹部)だ。ハイエンドモデルが最も売りやすい時期に向けて、最適なタイミングでの発表になったという。

 12月上旬を見据えて他キャリアのラインアップを見ると、ソフトバンクモバイルはAQUOSケータイを擁しており、W44Sの投入で目新しさがやや薄れるもの、それでもワンセグ端末で十分な競争力を保つだろう。

 しかし、その一方で不安を感じるのが、ドコモのラインアップである。同社は10月12日に「D903iTV」「P903iTV」「SH903iTV」の3つのワンセグ端末を発表したが、それらの端末は1ヶ月を経過した今も1台も店頭に並んでいない(編注:D903iTV/P903iTV/SH903iTVは2007年初頭に発売の見込み)。特にサイクロイド機構と3インチ液晶搭載、AQUOSケータイの進化モデルとして華々しく発表したSH903iTVをW44S発売前に投入できないのは痛い。「発表は先だったが、発売で出遅れる」というシナリオになってしまうためだ。先進イメージが大切なハイエンドモデルだけに、W44Sより発売が遅れて年末商戦も逃すという展開では、店頭での訴求力減少は避けられない。

 実はワンセグ端末は、例の1つに過ぎない。最近のドコモは端末投入のタイミングで遅れて、商機をみすみす逃しているケースが多く見られる。FOMAのインフラ整備で努力の成果が実り、新サービスも十分に魅力的なのに、肝心の端末投入のタイミングが悪ければMNPの競争で不利になるのも仕方ないだろう。また発表から発売までに時間がかかれば、それだけ発売された時の訴求力は弱くなる。

 一方、W44Sの投入タイミングからも分かるように、auは端末開発のペースと市場投入のタイミング取りが絶妙だ。ドコモが、せめて発表済みの新端末の多くを年内に発売できなければ、MNPで先行するauの優勢が年内は確定的になるだろう。

[神尾寿,ITmedia]

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