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Interview:

3年後には「10年後に業界1位」を現実感あるものに──ソフトバンクモバイル松本氏に聞く(後編) (1/2)

「日本の通信業界を変える」べくソフトバンクモバイルへの転身を決意した松本徹三氏。後編では松本氏が見据えるソフトバンクの未来、そして日本の携帯市場の将来について聞いていく。
2006年10月16日 22時07分 更新

 クアルコムジャパンの会長から米Qualcommの上級副社長を経て、ソフトバンクモバイルの執行役副社長 技術統轄兼最高戦略責任者(CSO)に就任した松本徹三氏。同氏の主なミッションは中長期戦略の策定であり、これまでの経験をいかして技術・市場トレンドの方向性を見極めることだ(10月6日の記事参照)

 ソフトバンクの未来、そして日本の携帯市場の将来に、松本氏は何を見据えているのか。今日の時事日想は特別編として、松本氏インタビューの後編をお届けする。

松本氏が重視する「3Gインフラ」の強化

Photo ソフトバンクモバイル執行役副社長 技術統轄兼最高戦略責任者(CSO)の松本徹三氏

 ソフトバンクモバイルの船出は逆風のただ中に漕ぎ出すものであった。第3世代携帯電話(3G)への移行では他社に後れを取り、端末ラインアップの数こそ揃えたもののサービスではドコモとauに未だ水をあけられている。ボーダフォン時代に周回遅れを余儀なくされた状況から、どれだけ速く、そして“どのような姿勢”で追い上げるかが目下の課題だ。

 松本氏は携帯キャリアのビジネスをよくサッカーに例える。バック(後衛)がインフラ・ネットワークであり、ミッドフィールダー(中盤)が端末・サービス、そしてフォワード(前衛)が営業・マーケティングに該当するという。松本氏は「ソフトバンクモバイルはもともとフォワードが強い会社」と述べた上で、インフラ・ネットワークの強化が重要だと指摘する。

 「(キャリアのビジネスでは)バックのインフラがしっかりしていないと、またたく間にポイント(契約者)を取られます。インフラ整備では、ドコモは湯水のごとくお金を使えますし、auは効率的・合理的なインフラを構築している。ソフトバンクモバイルにとってまずやらなければならないのは、この部分(インフラ)をあらゆる技術や知恵を絞って強化し、鉄壁の守備陣とすることです。点を取られない構造を作ることが先決です」(松本氏)

 ソフトバンクモバイルは3Gインフラの整備を前倒しで行う方針を表明しているが(8月8日の記事参照)、周知のとおりこれは「お金をかければ解決する」ほど単純なものではない。用地確保と基地局整備には多大なコストだけでなく、人材と時間が必要になる。

 「インフラに関しては2つの段階があります。今の段階は、現存のネットワークを強化してとにかく『どこでも繋がるように』しなければならない。これは顧客満足度に繋がることですから、戦略も何もない。地道に(エリア拡大を)やっていくしかないのです。この点に関しては(社長の)孫さんをはじめ、ソフトバンクモバイル幹部全員で共通認識を持っています。

 そして次の段階が、将来のネットワークです。今は他社に追いつくしかないのだけれども、新しいテクノロジーをどのタイミングで導入するかは、『これから』を決める部分です。ここで判断ミスは許されない。ソフトバンクモバイルではHSDPAの導入まではキャッチアップしましたが、HSUPAまではマストだと考えています。2008年頭までには市場投入します。さらに、そこに至るまでには、スタンダードな技術以外に、ダイバーシティアンテナやイコライザーなど周辺分野の最新技術も積極的に導入していきます」(松本氏)

 3Gの高速化競争では、auが下りの高速化技術であるCDMA2000 1x EV-DO Rev.0(CDMA 1X WIN)の全国展開をほぼ終え、上りを高速化する技術CDMA2000 1x EV-DO Rev.Aの導入を12月に予定しており、一歩リード(8月22日の記事参照)。それをドコモのHSDPA(FOMAハイスピード)が、端末ラインアップとエリア拡大をして追いかけている(8月8日の記事参照)。ソフトバンクモバイルはHSDPAの導入こそしたが、端末ラインアップとエリアの拡大はこれからだ。しかし、徐々に高速化技術の導入ペースをあげていくという。

怖いのはKDDIがRev.Cを採用したとき

 3Gの高速化テーブルにおいては、auの採用するRev.A、ドコモとソフトバンクモバイルが採用するHSUPAまでが便宜的に「第3.6世代」と評されている。その次にくるのが、OFDMA技術を取り込んだ新たなパラダイムだ。CDMA2000の系譜ではRev.C、W-CDMAの系譜ではLTE(Long Term Evolution)がこれに相当する。

 「3Gのインフラで我々が他社を追い抜くためにはどこかで飛躍しなければならない。そこで(ソフトバンクモバイルが)恐れているのが、KDDI(のau)が採用するであろうRev.Cです。これを彼らがどのタイミングで導入してくるのか。Rev.Cは(Qualcommの次世代高速通信技術)802.20(3月16日の記事参照)がベースになっていますから、OFDMAやMIMOも取り入れている。さらに、EV-DO Rev.Aから導入されるスケジューリング機能もあります。しかも

(従来のCDMA2000ネットワークとの)下位互換性がある。私はRev.Cの強さを十分に認識しています。Rev.C(を導入したau)は恐るべき敵になる」(松本氏)

 松本氏は前職がQualcommの幹部だけに、基幹技術のトレンドや将来の方向性には明るい。だからこそ、Qualcommの力を最大限に引き出しているauの動きには、常に目を光らせているようだ。

 「我々はこのRev.C(を導入するであろうau)に勝たなければならない。そのためにはLTEをいち早く導入する必要がある。Rev.CとLTEはコンセプト的にはほとんど一緒ですから、その導入タイミングとコスト効率性が重要になるでしょう」(松本氏)

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[神尾寿,ITmedia]

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