これまでRFID携帯の試作機を使ったさまざまな実証実験を行ってきたKDDIが、法人市場向けにau携帯用のRFIDリーダーを製品化し、投入すると発表した。リーダーは日立製作所が推進するミューチップに対応。両社の強みを生かして、まずは法人市場での利用拡大を見込む。
実証実験で利用した端末は端末内にRFIDリーダーを内蔵していたが、製品版では端末にリーダーを取り付けて端末とリーダー間の通信をBluetoothで行う仕様に変更。ミューチップリーダーに取り付けて使える端末は「W32T」のみとなるが(「W31T」については動作確認中)、Bluetoothに対応した端末であればリーダー機能を利用できる。
両社は今後3年間の販売目標を1万台に設定。携帯電話とRFIDを融合したソリューションの売り上げ目標は100億円としている。
なお、今回開発されたリーダーで読み取りが可能なのは2.45GHz帯対応のミューチップのみ。ICタグの普及/拡大を目指す経済産業省の「響プロジェクト」(2004年9月の記事参照)が推進するUHF帯対応のICチップ読み取りへの対応は「今後の検討課題」(KDDIの渡辺氏)としている。
RFIDは、無線を搭載した微細なチップ(ICタグ)をモノに取り付けて識別や管理を行う仕組み。例えば商品にICタグを添付すれば、商品自体の詳細な情報を公開できるほか(2005年3月の記事参照)、製造年月日をベースとした品質管理や在庫管理、移動履歴の確認も行えるなど(2004年1月の記事参照)、法人/個人にかかわらず多様なニーズが見込まれている。
日立製作所は、ミューチップを中心としたICタグやリーダー/ライターの開発、合計125メニューのトレーサビリティ・RFIDソリューションを軸にRFIDを推進しており、携帯電話用リーダーを投入することで普及に弾みをつけたい考えだ。
KDDIは、RFIDを法人市場拡大に向けた切り札の1つと捉えている。「ユビキタス時代のキーワードに代表されるものであり、(実証実験を行う中で)使えるシチュエーションがあると感じた。(Rev.Aなどの)新しいネットワークに組み込んで開発を行い、法人需要の獲得につなげたい」(渡辺氏)
携帯電話とRFIDの組み合わせで生まれるメリットは大きく3つある。1つは、auの携帯電話が使える環境下であれば、時間や場所を問わず利用できる点だ。
2つめは、現場にネットワークインフラを整備する必要がない点。その一例として挙げられたのが、現在試験運用中のレール敷設/保線管理システムだ。ミューチップを内蔵した杭を線路に打ち込み、ミューチップリーダーと携帯電話を使ってメンテナンス箇所を特定したり、点検履歴を確認できるようにしたもので、ネットワーク環境のない場所でも利用できることが分かる。
3つめは、携帯電話に搭載されたさまざまな機能との連携が容易に行える点だ。ミューチップで読みとった情報の管理やサーバへの送信はBREWアプリ経由で行う仕組みで、端末に内蔵されたGPSやカメラ、ブラウザなどとの連携が可能。上記のレール敷設/保線管理システムも端末のGPS機能との連動でメンテナンス箇所の特定ができる仕組みになっている。
両社はそれぞれの持つメリットが生み出す相乗効果を生かし、法人のさまざまなニーズに対応できる体制を強化する計画。販路についても日立トレーサビリティ・RFIDフォーラムに参画する企業と連携することで、幅広い販路を開拓するとしている。また将来的には端末にRFID機能を組み込み、コンシューマー向けサービスを提供することも視野に入れている。
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