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神尾寿の時事日想:

本格的な普及体制に入るモバイルSuica

10月〜12月にかけて大幅に機能・サービスを拡張し、第2段階に入るJR東日本のモバイルSuica。3キャリアで使えるおサイフケータイのキラーサービスとして、JR東日本だけでなく、各キャリアも利用促進へ注力すべきではないだろうか。
2006年09月06日 12時07分 更新

 9月5日、東日本旅客鉄道(JR東日本)がモバイルSuicaサービスに関する大幅な機能・サービス拡張を行うと発表した(9月5日の記事参照)。詳しくはニュース記事に譲るが、(1)EASYモバイルSuicaの開始、(2)ネットバンキングを利用した銀行チャージへの対応、(3)ボーダフォンへの対応、(4)ビューカード以外のクレジットカードによるオンラインチャージ対応、(5)利用可能な定期券の種類を拡張、(6)ネット決済への対応が新たに追加される機能になる。モバイルSuicaアプリも刷新されており、実質的な「フェーズ2」と言っていいバージョンアップだろう。

 モバイルSuicaに関しては、そのサービス開始初期からJR東日本がイシュアとなる「ビューカード」限定であることや、アプリ初期導入が煩雑ででわかりにくいことが、“敷居の高さ”につながっていた(1月30日の記事参照)。しかしその一方で、モバイルSuicaユーザーは着実に増え続けており、現在11万3000人に達している。さらにモバイルSuicaは、ビューカード会員の増加にも貢献した(9月4日の記事参照)

 JR東日本はモバイルSuicaの実現にあたり、駅改札機や窓口の改修を始め、多大なシステム投資をしたという。一時期話題になったように、おサイフケータイの通過性能試験もコストをかけて、入念に行っている。すべてはSuicaの信頼性を落とさないためだ。それらの背景もあり、これまでのモバイルSuicaは「ビューカード」利用が条件として付けられていた。しかし、新たなモバイルSuicaでは様々なチャージ方式に対応し、ビューカード以外のクレジットカード登録者に対しても年会費初年度無料キャンペーンを行う。JR東日本の“利用者の拡大”への強い意気込みが感じられる内容だ。

モバイルSuicaは依然としてキラーサービス

 筆者はサービス開始当初からモバイルSuicaを使っているが、このサービスはまさに「使い出したら手放せない」ものだ。初期登録の煩雑さや細かな部分の操作性の悪さで閉口することもあるが、オンラインチャージを筆頭とするカード型にない利便性の魅力はそれらの課題を上回ってあまりある。またSuica自体の利用可能店舗も着実に広がっており、「PASMO」との相互乗り入れで私鉄・地下鉄でも使えるようになる(2005年12月21日の記事参照)。サービスとしてのモバイルSuicaは、おサイフケータイの利用促進を促すキラーサービスとしての潜在力をもっている。

 10月から、モバイルSuicaが「ビューカード限定」でなくなることで、これまでモバイルSuicaを様子見していた多くのユーザーにサービスを訴求できるようになる。首都圏を中心に、公共交通を軸としたおサイフケータイ利用率向上に期待できるだろう。Suica電子マネーを採用する事業者はもちろん、他の電子マネーやクレジット決済サービスなどについても、電車と駅を導線とした面エリアでの展開は大きなチャンスになる。

JR東日本とキャリアの連携キャンペーンに期待

 もうひとつ筆者が期待しているのが、モバイルSuicaの機能拡張に伴う再度の利用促進キャンペーンだ。JR東日本はモバイルSuicaのサービス開始時に駅構内を使い、対面での申し込み受付・利用促進キャンペーンを行って「ユーザー獲得に大きく貢献した」(JR東日本幹部、1月28日の記事参照)。周知のとおり、おサイフケータイの各サービスで利用促進に最も貢献するのは、対面での説明と初期設定のサポートだ。今回、利用対象者が広がったのを機に、Suica対応の主要駅で大々的なモバイルSuicaキャンペーンを行えば、その効果はサービス開始時期のそれを大きく上回るだろう。

 また、おサイフケータイのさらなる普及を考えるなら、各キャリアがJR東日本と連携した利用促進キャンペーンを実施することに期待したいところだ。特に首都圏や仙台、新潟の主要なキャリアショップでは、モバイルSuicaの利用促進と設定サポートに力を入れてもいいのではないだろうか。公共交通でおサイフケータイが使われるようになれば、波及的にその他のおサイフケータイ関連サービスの利用率も向上するからだ。モバイルSuicaは公共交通のサービスでもあり、キャリアが支援する価値はあると思う。

 キャリアにとって、目前のMNPは確かに大事である。しかし、携帯電話業界のビジネスはMNPが終着点ではない。むしろ、MNP後にビジネス領域を拡大し、どれだけ発展できるかが重要だ。中長期的な視野に立てば、携帯電話キャリアやメーカー、そして販売店にとって、おサイフケータイの普及と利用促進は重要なミッションである。

 10月から、本格的な普及体制に入るモバイルSuica。首都圏をはじめとする都市型おサイフケータイのキラーサービスとして、JR東日本と各キャリアが利用促進に注力することに期待したい。

[神尾寿,ITmedia]

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