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神尾寿の時事日想:

マルチ端末化時代を前に、混乱防止と使いやすさ向上で先手を打つべき

コンビニが先導する形で、FeliCa決済用リーダー/ライターの共用化が進んでいる。マルチ端末の開発・導入は喜ぶべき流れだが、実際の運用上、混乱が起きることはないだろうか。
2006年09月01日 22時46分 更新

 8月30日、ローソンが、iD、Edy、SuicaなどFeliCaを利用する複数の決済方式に対応できるマルチ端末を、2007年3月末までに全店舗に設置すると発表した(8月30日の記事参照)。12月初旬からiDに対応し、2007年3月にはEdy、Suicaなど複数の電子決済方式への対応を開始することを目指すという。

 FeliCa決済方式はこれまで乱立状態が続いており、電子マネーとクレジット決済ともに自社方式を採用する加盟店の拡大に務めてきた。しかし、ここにきてそのシェア争いに風向きの変化が起き始めている。加盟店側が、複数のFeliCa決済の乱立を強く嫌忌しており、コンビニ業界を中心に「複数方式への対応」の流れが加速し始めた。既報のとおり、セブン&ホールディングスが全方式対応のマルチ端末型リーダー/ライターの導入を表明(5月19日の記事参照)。ファミリーマートもEdy/iD共用端末を採用する模様だ(8月29日の記事参照)

 リーダー/ライターのマルチ端末化はFeliCa決済の登場当初から求められていた加盟店の声であり、普及のボトルネックの1つになっていた。しかし、今年度後半から、電子マネーとクレジット決済、さらには異なるクレジット決済の事業者同士が、マルチ端末型リーダー/ライターによるインフラ整備で手を携えていく。これはFeliCa決済の普及とユーザーの利用率向上に大きく貢献しそうだ。

おサイフケータイで予想される「支払い方法の取り違い」

 リーダー/ライターのマルチ端末化は、FeliCa決済が社会基盤になる上で、必須の要件だ。しかし一方で、複数の決済方式の併存状況は変わらないため、実際の利用シーンでは多少の混乱も予想される。

 筆者は先日、お台場の「デックス東京ビーチ」でiDを使おうとした。デックス東京ビーチは施設全体でiDとEdyに対応しており、現在はそれぞれ別々のリーダー/ライターが用意されている。筆者は支払いの際に、明確に「iDを使います」と言っておサイフケータイを出したのだが、店員が用意したのはEdyのリーダー/ライター。その店員の慣れの問題もあるだろうが、支払い時にやや混乱が生じたのは事実だ。

 今回のケースでは、EdyとiDでリーダー/ライターが別であったため、筆者はすぐに気づいて訂正をお願いすることができた。しかし、おサイフケータイの中には「Edy」と「iD」の両方のアプリが入っていたため、そのままかざせば、意図せずに“iDで払うつもりがEdyで払ってしまう”結果になっていたわけだ。

 おサイフケータイは1つの携帯電話の中に複数のFeliCa決済が共存できるのがメリットだ。しかし、今回のような支払い時の「利用するFeliCa決済サービスの取り違い」が起きる可能性はFeliCaカードよりも高い。今後、マルチ端末型のリーダー/ライターが普及すればなおさらだろう。

混乱防止と使いやすさ向上に先手を

 店舗での複数方式のFeliCa決済対応は歓迎すべきものだが、マルチアプリケーションが前提のおサイフケータイでは、店頭でのやりとりで混乱や取り違いが起きる可能性がある。この問題の解決には、最終的には「店舗のオペレーションと店員スキル」に頼るところが大きいが、おサイフケータイ側でも混乱防止の先手を考える必要がある。

 例えば、おサイフケータイ側とマルチ端末型リーダー/ライターで「利用するFeliCa決済の優先順位をつけられる」仕組みを搭載してはどうだろうか。現在でも、iDなどは登録したiD対応カードサービスの利用優先順位を設定できるようになっているが、それを拡大するイメージだ。すべてのFeliCa決済を対象に、ユーザーが利用したい順番を設定しておき、マルチ端末型のリーダー/ライターにかざした時はその事前設定に基づいて支払いが行われる。オプション設定として、事前設定とは別に、個別の店舗・チェーンや、金額や各種条件に応じて細かく使用するFeliCa決済を設定しておけるとさらに便利だろう。例えば筆者ならば、「基本の使用はDCMXだが、ガソリンスタンドでは提携ポイントが貯まるQUICPayのJOMOカード、ANAのダブルマイル対応店舗ではEdyを使う」と設定する。むろん、店頭で支払い方法を口頭で指定すれば、すべてに優先してそちらが使用される。

 筆者の理想は、店頭で「おサイフケータイで」と言えば、そのままスムーズに支払いができる世界だ。クレジットカードを使う時に、カードのブランド名やサービス名をいちいち告げるだろうか。少なくとも筆者は、そのような光景をTVCM以外ではほとんど目にしない。多くの人が、「カードで」と言いながらサッと差し出すだけではないだろうか。

 FeliCa決済のマルチ端末化が進み、さらなる普及が見込める今だからこそ、「おサイフケータイをさらに使いやすく」する知恵が必要だ。特に利用現場での混乱は、普及と利用促進を阻害するので、それを防止する機能の搭載には先手を打つ形で臨んでほしいと思う。

[神尾寿,ITmedia]

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