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mobile 2.0時代は、こうやって勝ち抜く──アクセルマークの戦略

3.5G時代の到来で、変革期にさしかかった携帯コンテンツ市場。無料のPCサイトビューアを提供するなど、来るべきmobile 2.0時代に向けて着々と準備を進めるアクセルマークの戦略とは。
2006年08月25日 14時17分 更新

 「へんなサービス、変わったサービスが出てきたときに、“アクセルマークの仕業なんだ”といわれるような会社になりたい」──。こんなコンセプトを掲げたベンチャー企業が、携帯に内蔵されたブラウザでPCサイトを閲覧可能にする「mobazilla」(モバジラ)を無料で提供開始した(8月24日の記事参照)。仕掛けるのは、アクセルマークという会社だ。

Photo アクセルマークを率いる小林靖弘社長とメディア・コンテンツ事業部長の田島満氏

 mobazilla経由でPC向けサイトにアクセスすると、コンテンツはアクセルマークのサーバで携帯の小さな画面に最適化される。ユーザーは変換されたコンテンツを携帯にプリセットされたブラウザで閲覧できる。既にあるサービスでは、jigブラウザのWeb版(6月13日の記事参照)やEZwebのgoogleエンジンを使った検索サービス(7月19日の記事参照)に似た利用イメージだ。

 最近では、フルブラウザを組み込んだ携帯やサードパーティ製のフルブラウザが増えているものの、パケット定額に対応していなかったり、ブラウザを利用するのに料金がかかったりとハードルが高い。

 mobazillaは、携帯にプリセットされたブラウザからPC向けサイトにアクセスできる仕組みを無料で提供することで、パケット定額に加入している3G携帯ユーザーなら、誰でも気軽に使えるようにした。今後はネットワーク上に閲覧履歴やブックマークを保存する機能、ブックマークをほかのユーザーと共有できる、ソーシャルブックマークサービスを提供する計画だ。

Photo mobazillaのインタフェース。トップページには検索サイトやニュースサイトへのリンクも用意される。出先でPCを開くことなく情報を検索したいというニーズに応えるために開発した
Photo 招待制から登録制に移行したgoogleのGmail(8月23日の記事参照)もmobazilla経由で利用できる。メディア・コンテンツ事業部長の田島満氏が、mobazilla提供に合わせて使えるように「アクセルマークラボ発表当日の朝5時までかかって対応させた」という

 このmobazillaは、アクセルマークが立ち上げた携帯向けプロジェクト「アクセルマークラボ」の1つとして公開したサービスだ。アクセルマークラボは、同社のスタッフが、携帯電話を利用する1ユーザーの視点で“携帯であったらいいな”と思うサービスを自社開発して一般ユーザーに公開し、ユーザーの意見を反映させながら実用化を目指すプロジェクト。mobazillaのほかにも、オークションサイトを横断検索できる「mogle」(モーグル)と携帯向けブログの検索とランキングを提供する「toplog」(トプログ)を公開した。

Photo アクセルマークラボが公開した3つのプロジェクト
Photo サイト間の横断検索に対応した「mogle」。小さい画面では複数サイトを検索しづらいという携帯固有の問題を解決する

 mogleではまず、Yahoo!オークションとBiddersのブランドカテゴリ内の商品の横断検索を提供。今後は全出品カテゴリに対応させ、楽天オークションやAmazon.co.jpを検索対象に加えるとともに、過去5年間の商品落札価格と現在の価格を比べられるようにする。横断検索の対象も拡張する計画で、複数の人材情報サイト間を横断検索できる「mogleアルバイト」(仮称)や、大手中古車販売サイトとYahoo!オークション間で検索できる「mogle中古車」を準備している。

 アクセルマークラボでは、1カ月に1プロジェクトのペースで新サービスや追加サービスを公開する予定。ラボで公開するサービスはいずれも無料で提供する。

独りよがりなサービスにならないように

 アクセルマークラボを立ち上げた経緯についてメディア・コンテンツ事業部長の田島満氏は、「ユーザーが使いたいと思うサービスを開発するため」だと話す。アクセルマークはコンテンツ配信を手がけるコンテンツプロバイダ事業を運営する企業でもあり、当然のことながらキャリアやコンテンツプロバイダの事情に精通している。こうした環境から生み出されるサービスが、本当にユーザーに求められるものなのかをアクセルマークラボに公開することで見極め、ユーザーの意見を反映しながら進化させるのが狙いだ。そしてサービスを進化させる中で、アクセルマークの収益につながるビジネスモデルを構築するという。

 これまでキャリアやコンテンツプロバイダの都合に左右されることが多かった携帯コンテンツ市場は、パケット定額制やフルブラウザの台頭で、ビジネスモデルが大きく変わりつつある。“PCなら無料、携帯は有料”というサービス展開が難しくなり、キャリアのコンテンツポータルも、サイトの検索機能が強化されるのに伴い、従来ほどの大きな意味を持たなくなる。

 一方で、今後重要視されるようになるのがユーザーの声だ。携帯サイトがPCと同様の存在になれば、携帯向けサービスはその存在意義をシビアに問われる。ユーザーの意見がサービスを向上させたり、影響力のある1ユーザーの声が眠っていた在庫をよみがえらせる──といった、双方向性が大きな意味を持つようになる。「PCでWeb 2.0が流行っているように、携帯の世界にもmobile 2.0があるはず」という田島氏のコメントからも、アクセルマークがコンテンツ変革期のトレンドを見据えて動いているのが分かる。アクセルマークラボは、変わりつつあるモバイルコンテンツ市場で、同社が新しいビジネスモデルを生み出すための重要な役割を担うことになる。

PCサイトへのアクセス手段を無料で提供できる理由

 アクセルマークがPCサイトへのアクセス手段を無料で提供できるのは、同社が「コンテンツ配信事業」「メディア事業」「アフィリエイト事業」の3つを事業の柱としているからだ。

 まず、公式サイトのコンテンツ配信事業を通じて、3.5G時代でニーズが高まる動画や楽曲、コミックなどの版権処理のノウハウや配信経路を確保している。これらのコンテンツは、自社で運営するアフィリエイトシステムに組み込まれ、版権コンテンツの提供手段を持たない公式サイトや課金手段のない勝手サイト、個人が運営するブログ向けにアフィリエイトプログラムを提供することで自社コンテンツをより広く露出させる手段とする(アフィリエイトのリンク先は自社の公式コンテンツに設定されており、決済はアクセルマーク経由でキャリアの課金システムを利用することになる)。現在は着うたを1曲販売するごとに10円の販売手数料をサイト運営者に支払っている。

 さらにメディア事業部門で、ユーザーの集客を見込める懸賞サイトやポイント獲得サイト、ブログサイトを運営することで、広告出稿を前提とした従来型のビジネスモデルも推進している。「3つの事業をバランスよく運営しているのは、携帯向けサイトではうちだけ」と、アクセルマークを率いる小林靖弘社長は胸を張る。

Photo アクセルマークの基盤となる3つの事業とその相関関係
Photo 自社で開発・運営するアフィリエイトシステム

 こうしたビジネスは、自社でブラウザを提供して裾野を広げることで、さらなる相乗効果が見込める。ビジネスモデルを確立できる下地があるからこそ、無料の新サービスを世に問うことができるというわけだ。

[後藤祥子,ITmedia]

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