QUICPayとiD、「プリインストール」の影響力 神尾寿の時事日想(1/2 ページ)

» 2006年08月25日 04時31分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 8月23日、一部新聞が、KDDIがこの秋以降発売するau端末に、ジェーシービーが開発した非接触ICクレジット決済「QUICPay」を搭載すると報道。KDDIがこれを認めた(8月23日の記事参照)

 周知のとおり、携帯電話へのFeliCaクレジット決済システムのプリインストールについては、NTTドコモのおサイフケータイが「iD」と、同社がイシュアとしてiDを使う「DCMX」を搭載している。おサイフケータイの利用促進にはFeliCa ICアプリのプリインストールが最も効果的であり、今回のKDDIのQUICPay初期導入は、この流れに追随したものだ。

 なお、KDDIは今回QUICPayをプリインストールした理由として、「モバイル決済推進協議会(moppa)が『QUICPay推進』を掲げているためで、(他のFeliCaクレジット決済システムに対する)排他的なスタンスを取るものではない」(KDDI広報部)とコメントしている(2005年10月25日の記事参照)

プリインストールは、QUICPay逆襲の起爆剤になるか

 ジェーシービーによると、7月末時点でのQUICPay利用者数は「モバイル決済推進協議会のイシュア事業者全体で約7万人」(ジェーシービー企画部渉外グループ)だという。一方、携帯電話へのFeliCa ICアプリプリインストールで先行したドコモは、自らがイシュアとなるDCMX mini / DCMXの利用者だけで「7月末時点で約50万人」(ドコモ広報部)だ。ドコモの後を追うQUICPay陣営としては、今回のauへのプリインストールを足がかりに、利用者数においてiD/DCMXに追いつきたいところだろう。

 だが、QUICPayとiDの携帯電話へのプリインストールを比べた場合、そこには大きな違いがある。それが「キャリアがイシュアとなるサービスの有無」だ。周知のとおり、ドコモがプリインストールするiDには、ドコモ自身がイシュアとなるDCMXがある。しかし、KDDIの「KDDI THE CARD」は提携カードであり、JCBのQUICPayはその中の“選択肢の1つ”に過ぎない(5月29日の記事参照)。また現時点で、「KDDI THE CARD」のauショップでの申し込み受付は行っていない。

 「将来的な構想として、KDDI THE CARDのauショップでの取り扱いは検討しています。しかし、JCBなど(moppaの)他のカードの申し込み受付等までauショップで行うことは検討していません。現時点では、あくまでauの携帯電話にQUICPayをプリインストールするところまで、というスタンスです」(KDDI広報部)

DCMX利用促進に果たす、ドコモショップの力

 筆者は、FeliCaクレジット決済サービスの普及と利用促進において、キャリアショップの果たす役割は非常に大きいと考えている。それは全国のドコモショップにおいて実証されている。例えば、先日取材した九州では、あるドコモの販売会社1社だけで、「ドコモショップで(DCMXサービス開始後に)月間平均2000件のDCMX加入申し込みを獲得している」(販売会社幹部)。iDが利用できる店舗がほとんどない離島のドコモショップ1店舗だけでも、月に200件以上のDCMX利用者を獲得したという。

 「iDが利用できる店舗はまだ少ないですが、iDとDCMXの将来性をきちんと説明することで、お客様に加入していただいている。これはお客様との間に信頼関係を築き上げて、接客に時間がかけられるドコモショップだからできること」(ドコモ販売会社幹部)

 NTTドコモは、iDのアプリを携帯電話にプリインストールするだけでなく、自らがイシュアとなるDCMXを用意し、全国のドコモ販売網を用いて利用者の獲得をしている。ドコモショップの数と、販売力とクオリティの高さを鑑みると、これは無視できない。

 今回、QUICPayはau携帯電話のプリインストールアプリになることに成功したが、より多くの利用者数を獲得するには、DCMX miniのような簡易的なサービスと、キャリアショップとの密な連携が必要になるだろう。特に後者は、全国規模での普及・利用促進において重要だ。

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