九州の状況は“いびつ”だ――KDDI au九州支社に聞く(後編) Interview: (2/3 ページ)

» 2006年08月23日 16時55分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 このような地域の中で、au九州支社は「おサイフケータイ」の普及について、どのような考えとスタンスを持っているのだろうか。

 「ここ(おサイフケータイ)はドコモがauに対して差別化を図ってきている部分だと考えています。我々は音楽分野で先行しましたが、ドコモはおサイフケータイで先行している。あくまで個人的な見解ですが、おサイフケータイはauの方が遅れていると言えるでしょう。このような状況でありますから、auが今おサイフケータイに特化してPRすることは難しいと思っています」(東尾氏)

 むろん、これはauがおサイフケータイを訴求しても、この分野で先行するドコモを利するから訴求を控えるという、マーケティング的な判断である。au九州としておサイフケータイに注目していないわけではない。

 「時期的な判断としても、九州全体でおサイフケータイを使えるお店はまだ少なく、ユーザーも限定的な層だと思っています。特に鉄道会社の対応がまだなのが、ボトルネックになっている。おサイフケータイの端末は今後も登場しますし、auでもEdyなどの主要サービスは使えます。ですから、しばらくはドコモ(の市場開拓)に便乗すればいいのかなあ、と考えています」(東尾氏)

法人市場獲得の手応え

 MNPのタイミングで注目されているのが、ビジネスユーザーの動きである。“トヨタのお膝元”である東海地域を除けば(8月10日の記事参照)、ビジネスユーザーの獲得はドコモが得意とする領域であり、特に法人契約の獲得では強い力を有している。

 「九州でも法人契約の開拓に非常に力を入れており、KDDIのモバイルソリューション事業部が担当しています。全国の他地域と同様で、法人契約が多いのは九州でもドコモというのが現状です。これは(ムーバの)エリアが広く、このエリアの優位性が法人契約の獲得で重要だったからです。しかし、auも3Gのエリアではドコモを追い抜きましたので、我々の評価も上がってきています」(東尾氏)

 法人市場ではコンシューマー以上にエリアの広さが重視される。この部分でドコモをキャッチアップしたことで、auならではの付加価値サービスの訴求が可能になった。

 「auの3Gエリアが信頼されるようになったことで、例えば(ビジネス便利パックなどの)セキュリティや、ビジネス通話定額などの通話料のグループ定額サービスなどが訴求できる(7月26日の記事参照)。特に後者は(法人ユーザーが)反応しましたね。ただ、九州での法人契約獲得については、安易な安売りはしないという姿勢をとっています。必ずしもauが一番安いわけではないですが、セキュリティやエリアといった部分での品質や安心感をなど、お金には換えられない価値を訴求しています」(東尾氏)

3つの施策で販売インフラを強化

 以前、KDDI au営業本部長 兼 au事業本部 関東統括責任者の福崎努氏にインタビューを行ったとき、福崎氏がauのMNP対策として重要なものとして挙げていたのが「販売インフラの強化」である(6月30日の記事参照)。九州地域では専売店の販売比率が高いこともあり、特にauショップの「改善が極めて重要」(東尾氏)になっている。

 「具体的には3つの施策を考えています。1つは新店の設置で、auショップが出店可能な場所があれば積極的に出店します。これにより(auショップの商圏から外れる)ブランクエリアを減らします。2つめが移転です。過去に出店したauショップも、街や道路の構造が変わったり、駅ができるなどして人の流れに合っていない店舗もあります。そして、3つ目が改装です。店舗の立地は変えないのですが、改装して店内をきれいにしていく。これら3つの施策を、各県単位で急ピッチに行っています」(東尾氏)

 他にも、店舗の床面積拡大や、敷地内や近隣に駐車場を完備するといった改善にも力を注ぐ。「お客様目線にたち、売り場作りではなく、『買い場作り』をする姿勢が重要」(東尾氏)という考えだ。

 キャリアショップの規模や立地、クオリティについては、これまでドコモショップのレベルが高く、他キャリアはそれを追いかける状況だった。しかしauは、まずは店員のスキル向上に注力し(2005年9月21日の記事参照)、ここにきて店舗自体の改善にも力を入れている。特に専売店の重要性が高い地方のシェア争いでは、キャリアショップの差が、勝敗に影響する要因の1つになりそうだ。

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