連載
神尾寿の時事日想:
カーナビゲーション市場とGPSケータイの可能性
日本市場ではHDDやDVD-ROMの専用カーナビが主流となっているが、よりパーソナルでシンプルなカーナビも普及する余地はある。走行中の利用制限など追加すべき機能はあるが、その分野で大きな可能性を持つと筆者が考えているのがGPSケータイだ。
8月15日、米Palmが、スマートフォン「Palm Treo」対応のナビゲーションパッケージ「Palm GPS Navigator Smartphone Edition」の新バージョンを発表した(8月16日の記事参照)。これはBluetooth対応のSiRFstar III GPSレシーバ、ナビゲーションソフトTomTom Navigator 6、1Gバイトのメモリカード、充電システムなどのパッケージで、クルマのフロントガラスに装着してドライバーにカーナビゲーション機能を提供するものだ。
日本でカーナビというと、HDDやDVD-ROMの専用カーナビになる。最近はカーオーディオ機能を搭載したAVN (Audio Visual Navigation)タイプが主流で、2DIN一体型をダッシュボードに埋め込むケースが多い。自動車メーカーの純正カーナビ装着率も高く、特に200万円以上のミドルクラスでは、新車装着率が5割を超える車種が少なくない。日本市場でカーナビといえば、こういったダッシュボードに埋め込むタイプの専用機になる。
しかし、欧米、そしてアジア各国では、PND(Personal Navigation Device)と呼ばれるシンプルなカーナビが急成長している。シードプランニングのレポートでは、2005年のPND市場が380万台、2006年は1000万台になるとの調査結果が引用されている。この分野の草分けであるTomTomでは、タッチパネル操作と簡易地図ナビゲーションという基本機能を充実させる一方で、MP3の音楽再生機能やiPod連携機能などエンターテイメント要素を強化。Bluetoothも搭載し、携帯電話との連携も始まっている。
過日、筆者はダイムラークライスラー研究所のあるドクターと意見交換したのだが、その中でもPNDは注目のトピックスとして話題になった。この市場にはMicrosoftやGoogleなど、アメリカのIT企業やネット企業も食指を動かし始めており、「ネット側からのクルマへの浸透」という視点でも興味深い。
PNDのナビゲーション機能や表現力はシンプルだが、地図の更新をPC経由のネットサービスで行えるなど、PCやインターネットとの親和性は高い。そのため急成長するPND市場の一部を、スマートフォンのアプリケーションが獲得するシナリオは十分に考えられる。特に今後、PNDからネットサービスをリアルタイムで利用する方向性になれば、スマートフォン型PNDに可能性が出てくるだろう。
日本にもPND市場は存在するか
一方、日本市場は多機能・高性能型のカーナビが主流と見られており、カーナビメーカー関係者を中心に、PNDの日本での可能性に懐疑的な見方が多い。筆者も、従来型カーナビのダウンサイジングとしてPNDを訴求しても、コンセプトや流通方法によほどの変革がなければ、日本市場では受け入れられるのは難しいと考えている。
だが、潜在市場がないわけではない。先述したとおり、200万円以上のクラスではカーナビ装着率が高くなっているが、軽自動車やコンパクトカーではカーナビ装着率がグッと低くなる。これら“裾野の市場”にアプローチできるものが必要だ。
日本のカーナビ裾野市場の開拓において、筆者が注目しているのがauの「EZ助手席ナビ」である(2005年9月1日の記事参照)。これはパッセンジャー向けと用途が限定されるが、すでに20万人以上の利用者がいるという。またサービスを試してみても「道案内の道具」として必要十分な内容であり、月額315円で常に最新地図が使えるなどコストパフォーマンスが高い。オンデマンドVICSや駐車所満車空車情報、駐車禁止取り締まり重点地域情報の提供など、テレマティクス情報が充実しており(2005年11月10日の記事参照)、これらのサービスがパケット料金定額制の枠内で利用できるのもポイントだろう。
筆者は、日本型PNDの世界は、GPS携帯電話の発展系の1つとして存在するのではないかと考えている。今は“助手席”ナビであるが、しっかりとしたクルマへの装着と走行中の利用制限など安全性の向上ができれば、“ドライバー向けナビ”の可能性が出てくるだろう。この分野の将来性を考えれば、安全性向上に正面からチャレンジする価値はあると思う。
国内、そして海外のカーナビ市場は未だ未開拓領域の方が大きい。そして、そこにアプローチできるのは、シンプルでコストパフォーマンスのよいカーナビのソリューションだ。PNDの市場の今後と、その中でのGPS携帯電話の関わりに、注目しておく価値はある。
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[神尾寿,ITmedia]
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