ハイエンドモデルの進化が続けば日本市場はまだ発展する──ルネサス テクノロジInterview(1/2 ページ)

» 2006年07月14日 21時33分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 2001年から始まった3Gへの移行は、いよいよ佳境に入りつつある。この分野で先行したKDDIはもちろん、最大手のドコモもFOMAの契約者がムーバの契約者数を上回った。サービスエリアもムーバ並みになり(7月12日の記事参照)、3Gシフトは仕上げの段階だ。

 3Gが市場の主役になったことで、コンテンツやサービスの高度化も急速に進んでいる。また端末自体の性能向上に伴い、音楽や映像など、リッチなコンテンツを携帯電話で扱うことも一般的になった。このような変化の中で、半導体メーカーはどのような将来を見ているのか。携帯電話の高機能化に重要な役割を担ってきたアプリケーションプロセッサ「SH-Mobile」を開発するルネサス テクノロジの、システムソリューション統轄本部 システムソリューション第二事業部 副事業部長 兼携帯プラットフォーム開発センタ長の川崎郁也氏に聞く。

Photo システムソリューション統轄本部システムソリューション第二事業部副事業部長兼携帯プラットフォーム開発センタ長の川崎郁也氏

ドコモのFOMA躍進がルネサスの追い風

 2006年は番号ポータビリティ(MNP)制度実施の年ということもあり、各キャリアは新端末の投入に積極的だ。直近でも、ドコモが902iS/702ixシリーズ計17機種を矢継ぎ早に大量投入したのは記憶に新しい。また、シェアを気にかけるキャリアが主導する形で端末の高機能化も進んでいる。このような状況により「ルネサスのビジネスは大変好調」(川崎氏)だ。

Photo ワイヤレスジャパン2005で展示されたSH-Mobile搭載機

 「特にドコモのFOMAとauのハイエンド端末が市場の主役になったことが(ルネサスの好調さにとって)大きい。業績は順調に推移しています。我々が狙っていた分野は“マルチメディアを応用した携帯電話”です。市場でいえばミドルクラス以上のセグメントになります。ここは今の3Gの市場ですから、3Gのシェア拡大がルネサスの追い風になっています」(川崎氏)

 通信速度が向上する3Gでは、「通話とメールだけ」でしか使われないと、キャリアのメリットが小さい。3Gへの移行をARPU(ユーザー1人あたりの平均収益)向上につなげるために、キャリアはさまざまなコンテンツやサービスを投入し、利用促進に努める。この市場環境そのものが、半導体の性能拡大のニーズになり、ハイエンド分野に強いルネサスに味方している。

音楽ケータイやワンセグの好影響

 端末側の多機能化としては、デジタルオーディオプレーヤーを内蔵した「音楽ケータイ」と、4月1日から本放送が始まったモバイル向け地上デジタル放送「ワンセグ」の受信ができる「ワンセグケータイ」がユーザーの注目を集めている。

 「音楽機能は今後さらに一般化するでしょうし、携帯電話でデジタルテレビ放送を視聴するというニーズも高い。特に後者は、日本でワンセグサービスがすでに始まっているほか、海外でもDMBやDVB-Hなどのデジタル放送が大変注目されています」(川崎氏)

 ワンセグ対応端末はボーダフォンのAQUOSケータイこと「905SH」などが話題になっているが、各キャリアともに今は“端末ラインアップの一部”という状況だ。だが、その状況は変わると川崎氏は言う。

 「今のワンセグが置かれている状況は、ちょうど携帯電話にカメラが搭載され始めた頃に似ていますね。あの頃も『携帯電話にカメラなんかいらない・流行しない』と言う人がたくさんいた。しかし、一気にカメラ付き携帯電話は広がりました。ワンセグも同じ(普及パターン)だと思います。最初はまだキャリアさんも半信半疑だったわけですけれども、すぐに標準的にラインアップされる機能になると思いますよ」(川崎氏)

 現在、ワンセグ対応端末はハイエンド機という位置づけであり、特にドコモでは端末数が少なく、販売価格も高めだ。だが、この価格の問題もすぐに解決する。

 「(ワンセグ対応端末が高いのは)それはボリュームの問題ですから、すぐに変わりますよ。ワンセグを載せることによる価格上昇分はどんどん小さくなっていきます。またキャリア側も最初は『市場の反応を見る』ためにワンセグ端末を出したわけですが、ユーザーのニーズが強いとわかってきますから、今後は標準的な機能として(価格上昇を抑えて)幅広く搭載していくでしょう」(川崎氏)

 デジタル放送への対応については、ルネサスは半導体メーカーの中でもトップランナーであり、日本だけでなく海外市場でも採用例を持つ。海外のデジタル放送規格への対応もいち早く進めており、携帯電話におけるデジタル放送サービスの広まりは、同社にとって大きなアドバンテージになるといえそうだ。

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