モバイル広告の世界を正常化したい――サーチテリアの挑戦 Interview:(2/3 ページ)

» 2006年07月11日 15時09分 公開
[吉岡綾乃,ITmedia]

規模は小さく、手間がかかるのがモバイル広告

 サーチテリアのSEM広告には、大きく2つの特徴がある。1つは「カテゴリー単位の広告管理」もう1つは「リスティングした結果の並べ方」という2つだ。

 従来、広告主がSEM広告を出す場合には、まずキーワードを考えることから始める必要があった。例えば保険会社がSEM広告を出す場合であれば、「保険」「保険会社」「ほけん」「ホケン」「見積もり」……というように、広告内容に関連しそうなキーワードを、数百、あるいは数万個考える。それぞれのキーワードに対して、URLを設定し、広告タイトルや説明文を考えた上、クリック金額も個別に設定しなくてはならない。広告主や広告代理店にとって、これは非常に面倒かつ時間のかかる作業といえる。しかもこの作業が、3キャリア分必要になるのだ。

 そこでサーチテリアでは、キーワードをジャンル別に分けてカテゴリー化し、カテゴリー単位で扱えるようにした。上の例でいえば、保険に関するキーワードを1つのカテゴリーにまとめ、広告主は好きなカテゴリーを選ぶだけでいいようにしたのだ。キーワードの追加や削除といったメンテナンスはサーチテリアが行う。広告主はキーワードごとではなく、カテゴリーに対して入札を行えばよく、複数キャリアへの対応もサーチテリアで行ってくれる。キーワード別に3キャリアに設定するのに比べ、広告主や広告代理店の負担が格段に減ることが分かるだろう。

 現在、サーチテリアが提供しているカテゴリーは350以上。「着メロ」のように大きなカテゴリーの場合は、「洋楽」「J-POP」などのサブカテゴリを置くようにしているという。

OvertureにもGoogleにも特許が抵触しない方法とは?

 もう1つのポイントが「リスティングした結果の並べ方」だ。複数の広告主が同じキーワードに対して入札する場合、入札したクリック単価に応じて順位を付けるというのがOvertureの取った特許だった。

広告主 クリック単価 順位
A社 100円 1位
B社 50円 2位
C社 30円 3位
D社 20円 4位
Overtureが特許を取った入札方式

 仮に「保険」というキーワードに対し、A、B、C、D社という4つの会社がそれぞれ、100円、50円、30円、10円と入札した場合の例が上の表だ。仮に検索結果の他に3つSEM広告枠があったとすると、上の例では常に「A社、B社、C社」の順で表示され、D社は表示されないことになる。

 これに対し、GoogleのAdSenceは少々異なる。Googleでは実際にクリックされる率を重視し、「クリック金額×クリック率(CTR:Click through rate)」で順位を付けるようにしたのだ。クリック率は、一定の回数の露出に対して、何回クリックされたかをカウントして計算する。

 仮にA社、B社、C社、D社のクリック率が10%、90%、50%、10%とすると、下表のようになる。

広告主 クリック単価 クリック率 クリック単価×クリック率 順位
A社 100円 10% 10 3位
B社 50円 90% 45 1位
C社 30円 50% 15 2位
D社 20円 5% 1 4位
Googleが特許を取った入札方式

 ここではB社のクリック率がとても高いと仮定して計算しているが、実際にはこのようなことはまず起こらない。普通は上位に表示されるものほどよくクリックされるため(=クリック率が高いため)、クリック単価の順とほぼ同じ結果になってしまうのだ。これだと、結果として出る順位はあまりOvertureの方法と変わらない。

 入札金額で順位が決まってしまう仕組みでは、他社が自社よりも高い金額で入札していないか、常に検索結果をチェックしなくてはならないが、これは広告主や広告代理店にとって大きな負担になる。PCよりも広告の表示スペースが少ないモバイルの場合はさらに問題で、もし枠が1つしかなければ、1位以外の露出が見込めない会社は出稿することを止めてしまう。これでは、多くの広告主を集められなくなってしまう。

 そこでサーチテリアでは、入札したクリック単価を足したものを分母に、クリックした金額を分子にして、露出する確率を決めるという方法を取った。例えば、これまでの例で見ると、1位として出現する確率は以下の通りだ。

広告主 クリック単価 クリック単価÷クリック単価合計 1位出現率
A社 100円 100÷200 50%
B社 50円 50÷200 25%
C社 30円 30÷200 15%
D社 20円 20÷200 10%
サーチテリアの入札方式

 この場合、1位として出現する確率が高いのはA社、B社、C社、D社の順だが、A社でさえ1位になれるのは2回に1回。A社以外にも1位になる可能性が残る。2位を決める際は、1位の会社を抜いて同じ計算を行い、出現率を算出する。仮に1位がB社だとしたら、A社の2位出現率は150÷100で、75%になるわけだ。3位以下も同じ方法で決めていく。

 この方法であれば、入札金額が高いほうが出現率が高いが、入札金額が安い会社にも露出する可能性が残るため、広告主が減る恐れは少ない。モバイル広告のように表示面積が低く、上位の数少ない企業しか露出できない媒体では好都合だ。

 また、例え他社より入札金額が安くても、露出する確率がゼロになるわけではないので、検索結果をチェックするために巡回する手間をかけなくて済む、というメリットもある。

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