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「スマートプラスは人間向けのETCを目指す」――UFJニコス(前編) (1/2)

ビザ・インターナショナルが「VISA TOUCH」の決済スキームとして採用したことにより、俄然注目度が上がっているのが、UFJニコスのクレジット決済サービス「スマートプラス」だ。スマートプラスの特徴や、マルチリーダー/ライターの難しさについて訊いていく。
2006年06月22日 19時09分 更新

 ドコモのクレジット業界参入をきっかけに、おサイフケータイを利用したクレジットサービスが注目を集めている。現在、おサイフケータイで利用できるクレジットサービスは3種類。ドコモ+三井住友カードの「iD」、JCBが展開する「QUICPay」、そしてUFJニコスの「スマートプラス(Smartplus)」だ(2月22日の記事参照)

 3月16日、VISA International(ビザ・インター)は、三菱UFJフィナンシャルグループと提携してスマートプラスの普及に共同で取り組むと発表した(3月16日の記事参照)。さらにビザ・インターは6月12日、非接触ICクレジット決済を「VISA TOUCH(ビザタッチ)」という名称で展開すること、そしてVISA TOUCHの決済スキームには、UFJニコスのスマートプラスを採用することを明らかにした(6月12日の記事参照)

ay_vt.jpg VISA TOUCHのロゴマーク(左)。加盟店に表示されるアクセプタンスマーク(右)

 VISA TOUCHのサービスが始まると、VISA TOUCHのロゴ(アクセプタンスマーク)を掲示している店舗では、VISA TOUCH及びスマートプラスのロゴが付いたカードや、VISA TOUCH及びスマートプラスのアプリをインストールしたおサイフケータイが利用できるようになる。3月時点でVISA TOUCHに賛同している企業は、三菱東京UFJ銀行、セントラルファイナンス、ディーシーカード、ジャックス、オーエムシーカード、すみしんライフカード、スルガ銀行、UFJニコスの8社。これらの企業が発行しているVISAカードは、VISA TOUCHに対応する見込みだ。サービスのブランド名は「VISA TOUCH」になるが、UFJニコスが現在「スマートプラス」という名前で呼んでいるように、カード発行会社によってサービス名称は変わると思われる。

 導入が決定した店舗を積極的に発表するiD陣営や、モバイル決済推進協議会が推奨する決済スキームであることをPRしているQUICPay陣営に比べると、スマートプラスはやや動きが目立たない印象があったことは否めない。しかし、ビザ・インターがスマートプラスのスキームを採用し、ビザの名を冠したブランド名で展開することになれば、スマートプラスの普及には大きく拍車がかかるだろうと予想される。

 UFJニコスはなぜスマートプラス事業に力を入れているのか、また今後どのような戦略でスマートプラス事業を推進していくのか。UFJニコスIT事業部部長の鳴川竜介氏に話を聞いた。

ay_ufj01.jpg UFJニコスIT事業部部長の鳴川竜介氏

携帯と結びつくことによる、クレジットカードのメリットとは?

 UFJニコス(旧・日本信販)は、クレジットカード会社各社の中でも「携帯にクレジット機能を入れる」ことに古くから取り組んでいる会社といえる。鳴川氏は日本信販時代から、「携帯+クレジットカード」というテーマに取り組んできた人物だ。

 クレジット会社であるUFJニコスが、携帯電話を使った決済に取り組む理由は何か。鳴川氏は「クレジットカード業界全体に閉塞感があり、パイを広げないといけない、という思いがある」と話す。広げる先のターゲットが、小額決済市場だ。「(現金による)一回の決済が3000円以下のマーケットは、27兆円程度あると言われている。これは現状のクレジットカードのマーケットに匹敵するくらい大きなもの。これを取り込んでいければいいと思っている」(鳴川氏)

 日本信販は2003年、VISA、ドコモとともに「VISAッピ」の実証実験を行った(2003年9月29日の記事参照)。VISAッピは、赤外線通信を利用して、携帯電話でクレジットカード決済を行おうというものだ。

 「当時、『携帯でクレジット決済をするのなら、携帯向けにマーケティングツールを提供したり、高付加価値サービスを提供したりする必要があるだろう』と考えていた。しかしそれは違う」と、鳴川氏は振り返る。「VISAッピをやってみて驚いたことがある。利用明細を見ていくと、ランチタイムに1000円以下の売り上げがかかっている。これは、従来のクレジットカードではありえないことだった」

 日本では、クレジットカードを使うのはある程度高価な支払いの場合、という考え方が主流だ。若い人でも3000円程度、もう少し年配のユーザーであれば、1万円を超えないとなかなかクレジットカードを出すことはないという。

 VISAッピの実験でもう1つ気づいたポイントが、決済の速さだった。カードを出し、端末を店員が操作して、サインをして……とカード処理をしていては、時間のない昼時に、レジ前に行列ができてしまう。「これまでクレジットカードを使わなかったような、小額の決済を気軽に行うようになる。これこそが携帯の強みなのだと分かった」(鳴川氏)

 VISAッピの実験では当初、携帯向けに高付加価値サービスを提供することを考えていた。販促目的でクーポンを配布するなどの試みだ。しかし鳴川氏は「スーパーやドラッグストアの販促ツールは、折り込みチラシがメイン。販促ツールとして見た場合、携帯は折り込みチラシに勝てない。ちょっとしたアプリ開発でも1000万円以上かかってしまう携帯は、コストパフォーマンスの面で不利」と話す。「携帯に高付加価値サービスは必要ない。小額決済が、スピーディに行えること。ここに目標を絞ることが大事と分かった」

 VISAッピで得た経験を生かし、スマートプラスでは“1回の決済額が数千円以内で、しかも速い処理が必要なところ”にターゲットを絞って加盟店を増やしているという。「高級店で支払いをする際に、数秒で決済が済む必要はない。高額な支払いは、カードを使ってサインをして、ゆったりとすべきものだと思う。1回の支払いが少額で、しかも処理時間が速いことを生かせるところでなければ、スマートプラスの対応を加盟店から申しこまれても、お断りすることもある」

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[吉岡綾乃,ITmedia]

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