家電やPC、ロードサイドへ進出するEdy――ビットワレットに聞く(後編) Interview: (2/2 ページ)

» 2006年05月31日 18時46分 公開
[神尾寿,ITmedia]
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ロードサイドでも勝算あり

 6月1日から改正道路交通法の駐車禁止取り締まり強化が施行される。警察庁では駐禁車両の検挙数を従来の2〜3倍にする方針であり、都市部を中心にコインパーキングの需要が高くなっている。Edyはすでに、パーク24などいくつかのコインパーキングや民間駐車場で採用実績があるが、今後のロードサイド市場をどのように見ているのだろうか。

 「まず(改正道路交通法による)コインパーキング分野の成長は大きなチャンスだと思っています。しかしながら、我々はそこだけではなく、もっと総合的にロードサイド(の電子決済市場)を開拓していきたい。道路とEdyの組み合わせでは、ガソリンスタンドやファミリーレストランもあり、そのような広がりのひとつとして駐車場を捉えています」(宮沢氏)

 ロードサイド市場は激戦区である。ガソリン代や高速道路料金の支払いではクレジットカードの利用率が高く、しかも自動車関連で使うクレジットカードは生活のメインカードになる比率が高い。それはガソリンスタンド系や自動車ブランド系の提携クレジットカードの多さが如実に物語っている。

 また、おサイフケータイ向けクレジット決済サービス事業者も、三井住友カードやJCB、UFJニコスの3社すべてが「ロードサイドでは絶対に負けられない」と口を揃える。

 一方で、ロードサイドではEdyに不利な面がある。ロードサイド市場では、コンビニなどに比べて決済金額が大きいのだ。例えば、ガソリンスタンドでは、普通乗用車が満タンで給油すれば5000円を超えてしまう。プリペイド方式をとるEdyでは、残額不足やチャージ頻度が上がる手間がハードルになる。

 「確かにガソリンスタンド単独で見れば(決済金額が大きい)課題がありますが、おサイフケータイでのEdy利用ならばチャージが簡単ですし、チャージ額が増えるので(決済金額の大きさは)あまり問題にならないですよ。また、我々はロードサイド全体でのEdy利用率を高める方法を考えています。まだ詳しくはお話しできませんが、勝算はありますよ(笑)」(宮沢氏)

チャージの課題をどう解決するか

 Edy対応店舗は急速に増えてきており、その中にはガソリンスタンドに限らず、決済金額の大きい業種もある。例えば、その身近なものがドラッグストアであり、マツモトキヨシではコンビニエンスストアよりも明らかに決済金額が大きい(5月12日の記事参照)

 プリペイド方式は確かに利用者のニーズがあり、Edyの強みになっているが、中額から高額までEdy利用が広がると、「残高がすぐなくなる」ことになる。Edy利用者の6割がカード型であり、残る4割のおサイフケータイユーザーの中にも、クレジットカードからのオンラインチャージができない・好まない層が存在することを考えると、「チャージの問題」は少なからず存在する(2005年12月16日の記事参照)

 「現在、全国1万3000カ所に現金チャージ機を設置しています。これを増やしていきたい。さらにコンビニや飲食店のレジでは、基本的に現金チャージができる体制にしていきたいと考えています。また、決済金額が大きくて利用頻度が高いスーパーマーケットでは、チャージ機を置くのが必須だと考えています」(宮沢氏)

 専用の現金チャージ機を増やすとともに、ビットワレットが期待するのがATMのEdyチャージ対応だ。

 「我々は(ビットワレットの)設立当初から銀行ATMでチャージをしたいと考えていました。しかし銀行統合や再編などがあり、なかなか実現しなかったのですが、今も検討していただいています。また郵政公社さんには、郵貯ATMでのEdyチャージ対応をしていただくことになりました。今年秋の郵貯カードのIC化にあわせて、Edyを含む電子マネーの対応をしていただくのですが、その流れの中で郵貯ATMのEdyチャージ対応になると思います」(宮沢氏)

海外市場の可能性も見えてきた

 周知のとおり、Edyに限らずFeliCaを活用したサービスは、日本と一部のアジア諸国では普及しているが、まだ世界的な広がりは持っていない。しかし、宮沢氏はこの1年で、海外市場の可能性が見えてきたと話す。

 「この1年で海外の様々なプレーヤーの方にご訪問いただく事が増えました。我々も海外展開を多角的に検討しています。いろいろな国の可能性が出てきたな、と感じています。

 昨年のインタビューでは、海外市場はアジア中心とお話ししましたが、あれは私の認識不足でした(笑) 欧米や、その他の地域への展開が考えられます。例えば、クレジットカード利用率が高いといわれる北米でも、プリペイド型のサービスが爆発的に増えている。

 キャッシュリプレースメントのニーズが各国で高まっていまして、クレジットカード利用はもちろん増えているのですが、プリペイドの領域も(海外市場でも)顕在化してきた。Edyの海外展開はすでに検討に入っています」(宮沢氏)

 非接触IC「FeliCa」と電子マネー「Edy」。もし、この2つが世界に羽ばたければ、日本発の技術と決済サービスが海外に広がる快挙になる。また、ドコモのiモードアライアンスを通じて、おサイフケータイの仕組みが世界に広がる足がかりにもなるだろう。世界的な規模の展開で出遅れた日本の携帯電話産業にとっても、海外市場に攻め込む大きなチャンスになる。

 日本市場の展開、ネット決済への進出、そして海外展開。Edyの今後に、さらに注目しておく必要がありそうだ。

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