ライバル登場はEdyの「追い風」――ビットワレットに聞く(前編) Interview: (2/2 ページ)

» 2006年05月29日 20時27分 公開
[神尾寿,ITmedia]
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ターゲット層を想定した利用店舗拡大が功を奏した

 急速に成長するEdyだが、その背景には、ビットワレットが持つ「ユーザー拡大」と「加盟店増加」の戦略がある。

 「まずは日常的に『よく使われる』ことを重視しています。日常生活で使われないと、加盟店の利用率が高くなりませんから、ユーザーと加盟店の両方がハッピーではない。その点で我々は今、ユーザー数や加盟店数といった規模の拡大も重要ですが、それ以上に顧客満足度を重視しています」(宮沢氏)

 特に加盟店には、Edy導入によって顧客単価の向上やリピート利用の増加という導入効果がはっきりと現れてきており、導入後の満足度は高いという。

 「利用場所については、これまでスーパーやコンビニエンスストア、ドラッグストアなど日常生活の場所を重点的に整備してきました。購買層として重視したのは女性。ここをターゲットに(利用店舗を)線で繋ぐ戦略をとりました。現在、Edyユーザー全体では女性比率が高い状況になっています。

 2番目のターゲットとして、『ファミリー』に焦点を合わせました。観光地やファミリーレストランなど、家族で訪れるような場所、シーンです。これは全日本空輸や高速道路会社との協業に当たる部分です。

 3番目は職域やビジネス、教育の分野です。社員証や入館証、学生証にEdy機能を導入し、その施設や周辺地域で利用店舗を増やす。タクシーでの(Edy対応の)取り組みも、ビジネス領域になりますね。

 このようにEdyの利用場所の拡大においては、利用者層を想定したストーリーを持つことで、利用率の向上がしやすいように工夫しました」(宮沢氏)

 Edyは各加盟店のポイントプログラム連携など、多彩なCRM機能が用意されている。この特性を生かして、利用者層とその利用スタイルをストーリーとして想定、それに沿った導入プログラムを設けることで、「(導入後の)囲い込み効果と利用率の向上を実現している」(宮沢氏)という。その効果の大きさは、Edy対応加盟店の増加にも奏功していると言えそうだ。

インテル出資の背景と、その意義

 “かさすだけ”という非接触IC「FeliCa」の特性をいかし、リアル決済分野での急成長が目立つEdy。しかし、ここにきてネット決済分野も重要な開拓領域になっているという(4月26日の記事参照)

 「リアルな世界とネットの世界を『決済』で結びつけていく。これがビットワレットにとって、新たな領域になってきています。ネット決済でのEdy利用は、絶対額ではリアル決済より少ないのですけれども、利用額の伸び率を比較するとネット決済は(リアル決済の)2倍近くになっています」(宮沢氏)

 このPCインターネットへの取り組みの中で、軸になるのは決済であるが、Edyが狙うのはそれだけではない。

 「Edyはマーケティング機能が豊富なのが特徴ですから、決済とマーケティングのシナジー効果に力を入れています。(決済とマーケティングで)リアルとインターネットの世界を結び、シナジー効果を作る。それに向けて準備をしています」(宮沢氏)

 現在、Edyのネット決済で利用の中心になっているのは、デジタルコンテンツだという。

 「クレジットカードよりも手軽に使えますし、カードナンバーを相手に伝える(心理的な)不安もない。また、電子マネーは個人情報を含みませんから、匿名性がある。デジタルコンテンツを気軽に安心して買いたいというユーザーに支持されています」(宮沢氏)

 しかし、その一方で利用拡大にはハードルも存在する。その中でも高い壁になっているのが、PCへのリーダー/ライター搭載だ。現在、コンシューマ向けPCでは、ソニーのVAIOシリーズのほかに、NECが一部の機種で、オフィス用PCでは富士通がFeliCaリーダー/ライター搭載モデルを用意しているが、携帯電話と比べれば搭載モデルは少ない。

 「今後のPC分野への広がり、特にリーダー/ライター搭載機の普及において、先のインテルとの資本提携は大きな意味を持ちます。(投資については)当初、インテル側からの申し入れがあったのですが、これはEdyのネット決済利用を促進したい我々にとっても歓迎すべきものでした」(宮沢氏)

 気になるのは、インテルがビットワレットに投資したことがどのようなプロダクトやサービスに繋がるかだろう。その点について宮沢氏は、「今まさに(インテルとの協業は)動いている段階でして、まだお話しできる状況にありません。しかし近日中に、何らかの発表ができると思います」と話す。また1つ期待できるのは、今後、リーダー/ライター搭載のPCが、今まで以上に登場しやすくなるということだ。「デジタルコンテンツはもちろん、物販やチケット、あるいは公共料金の支払いまで、様々な可能性が広がると考えています。また、インターネット上でお店情報を見たユーザーにデジタルクーポンを配布して(リアル店舗に)送客するといった仕組みも、今後、PCへのリーダー/ライター普及が進めば可能になります」(宮沢氏)

 リアル決済で着実に地歩を確立するEdyにとって、インテルの投資を受けたことは、その事業領域をPCインターネットにまで広げる橋頭堡と言えそうだ。

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