Windows Mobile プラットフォームとは何かWindows Mobile ビジネス活用講座――第2回(3/4 ページ)

» 2006年05月24日 00時00分 公開
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Intel XScaleアーキテクチャ――携帯でもMMX命令

 連載第1回で述べたように、Windows Mobile デバイスの最大のメリットは、メールの読み書きやオフィスドキュメントの閲覧、グループウェアへのアクセスなどPCとほぼ同じことができ、使い勝手の点でもPCに近い点にある。

 Windows Media Player Mobileを搭載し、動画再生など負荷が高い処理も行えるWindows Mobile デバイス。しかしOSがどんなに多機能でも、ハードウェアがそれに見合うものでなくては実用的なデバイスにはならない。Windows Mobile が実現するさまざまな機能の実行を支えるのが、「Intel XScale」と呼ばれるアーキテクチャを持つ、インテル製プロセッサだ。

 以前からIntel XScaleは、Pocket PCなどに広く使われてきた。これはかつて「StrongARM」と呼ばれていたプロセッサを強化したものだ。StrongARMは、ARMプロセッサを旧DEC(Compaqに買収されたのち、HPと合併)で改良したもので、DECが半導体部門をインテルに売却したため、インテルの製品となった経緯がある(表)。

年月 経緯、製品リリース
1998年5月 DECから半導体部門を買収
1998年10月 SA-1100
1999年3月 SA-1110
2000年8月 Intel XScale マイクロアーキテクチャを発表
2002年2月 PXA250/210
2003年3月 PXA260/263/255
2003年10月 PXA261/262
2004年4月 PXA270

 英ARMのARMアーキテクチャを拡張したプロセッサだが、インテル独自の強化が施されているため、既存のARM用のアプリケーションが動作するのに加え、独自の命令を使うことで、より高い処理性能を発揮できるのが特徴だ。

 特筆すべきは、PC用のIA-32プロセッサ(Pentium 4など)と共通のSIMD演算命令セットである、Wireless MMX命令をサポートしている点だ。これにより複数の浮動小数点演算を同時に行えるため、メディア処理などの性能が向上している。

 また製品バリエーションとして、メモリなどをスタックチップとして統合したものや、携帯電話用のベースバンドプロセッサを統合したものなどがある。このため、PDAだけでなく、携帯電話にも利用されるようになってきた。

 Intel XScaleは、バッテリー駆動のデバイスを想定して、省電力と高性能の両方を実現する工夫がなされている。工夫のポイントは“モードを切り替えることで、バッテリー持続時間を延ばす”“ワイヤレスMMX”“ワイヤレス SpeedStep”の3点だ。

 Intel XScaleはいくつかの動作モードを持っており、モードによって消費電力と通常状態への復帰時間が異なる。たくさんの機能を停止すれば消費電力は下がるが、その分通常の処理状態へ復帰するのに時間が必要になる。逆にフルパワーが必要な高い負荷がかかる処理のときには、クロックを最大まで上げるTurboモードがあり、必要に応じて各モードを利用できる。

 メディアデータを再生するには、伸張処理など必要な処理を一定時間内に終わらせる必要があるが、逆に必要な処理が終われば、次にデータが必要になるまでは休むことができる。Wireless MMXなどの高機能な命令を使ってメディア関連の処理を短い時間で済ませ、次に再生用データが必要になるまで、低消費電力状態にとどめておき、消費電力を抑える――これがIntel XScaleの省電力の仕組みだ。

W-ZERO3にも採用されている「インテル PXA270 プロセッサー」とは?

photo インテル PXA270 プロセッサー

 Intel XScaleマイクロアーキテクチャの最新プロセッサが、W-ZERO3にも採用されている「インテル PXA270 プロセッサー」である。

 PXA270は、単なるCPUではなく、PDAやスマートフォンの各機能を実現するために必要な周辺回路を含んでいる。一般的に電話機能を持つ場合、通信関連の処理を行うベースバンドプロセッサと、画面表示や全体の制御などを行うアプリケーションプロセッサの2つのプロセッサを使うことが多い。PXA270は、アプリケーションプロセッサとして利用することを想定しており、ディスプレイインタフェースやタッチパネル、USB、SD/MMCカードなどのインタフェースを内蔵している(図)。また、カメラインタフェースを持ち、動画や静止画の撮影を制御できる。PDAであれば、メモリ(フラッシュROMやRAM)、無線LANなどのインタフェースデバイスなどを接続する程度で構成できる。

PXA270のブロック図

 また消費電力を低減するための機構として、PXA270には「ワイヤレス SpeedStep」が搭載された。これは、アプリケーションによるCPU負荷に合わせて、クロックや電源電圧を変動させる技術だ。そのポイントは、「いかに上手にプロセッサを休ませるか」にあるといえる。同じパワーでプロセッサを動かし続けるのではなく、必要に応じて高速に動かしたり、休ませたりすることでバッテリーの持続時間を延ばすのだ。

 負荷のあまり高くない処理の場合には、クロックや電源電圧を下げて消費電力を削減し、逆に負荷が高いときには、クロックや電圧を上げることにより処理を短時間で終了させる。ワイヤレス SpeedStepによって、PXA270は従来よりも負荷の高い処理にも対応できるようになった一方で、消費電力を押さえ、より長いバッテリー駆動時間が期待できるようになっている。

 W-ZERO3は、画像表示、動画再生、Webブラウズやメール送受信といったほとんどの機能を、PXA270が備える機能で実現している。表示も内蔵のディスプレイコントローラで行っている。

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制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2006年6月30日