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神尾寿の時事日想:

“王者の戦い”を捨てた夏モデルに、本気になったドコモの怖さを感じた

ドコモの夏モデル10機種を見て、筆者はこれまでのドコモの端末ラインアップとは明らかに違う、という印象を受けた。ドコモの“本気”を感じたのだ。MNPを前にしたドコモの本気とは何か。
2006年05月12日 10時40分 更新

 5月10日、NTTドコモはFOMA 90xシリーズ8機種と70xシリーズ2機種、さらにカード型FOMA1機種の計11機種を発表した(5月11日の記事参照)。さらにHSDPA向けの音楽新サービス「ミュージックチャネル」、電話とメッセージを組み合わせた新サービス「着もじ」、また「電話帳お預かりサービス」も発表し、商戦向けの新モデルの特徴として「HSDPA」「音楽とゲーム」「セキュリティ」「DCMX」の4つのポイントを挙げた(5月11日の記事参照)。中でも、特に重視し、「強く打ち出していきたいのは、音楽だ」(ドコモマルチメディアサービス部のサービス企画担当部長 前田義晃氏)という。

 ドコモの場合、例年ならば夏商戦向けモデルは“マイナーチェンジ”という位置付けであり、ラインアップの小変更と、実験的な新サービスの小規模な導入を行うのが常だった。しかし今回は、ラインアップが大幅に拡充された上に、新サービス投入にも力が入っている。

正面から「au対抗」を打ち出す

 特に印象的なのが、明らかな「au対抗」策を打ち出してきたことだ。

 周知のとおり、ドコモはプライドの高い企業であり、これまで他社が先行した分野に正面から乗り込み、叩きつぶすような真似はしてこなかった。カメラ付き携帯電話や着うたなど投入がそうであったように、あくまでドコモオリジナルの新分野・新ビジネスを投入した“ついでに”、他社が先行した分野も新サービスの一要素として取り込む手法が多かったのだ。

 しかし、今回ははっきりと「音楽に力を入れる」と強調している。これは従来の「音楽“も”、力を入れていますよ」とは明らかに違うトーンだ。

 音楽分野でのau先行のイメージを覆すために、着うたフルの採用だけでなく、auのEZチャンネルとポッドキャストのコンセプトを融合させたような音楽新サービス「ミュージックチャネル」を投入。音楽分野のサービス開発、ブランドイメージ構築に本腰を入れている。

 また、端末ラインアップを見てもau対抗色は明らかだ。今回、発表された10機種は、各モデルのコンセプトとデザイン、機能が見事に棲み分けられており、ラインアップ全体でバリエーション感が生まれている。この手法はauが得意としてきたもので、ドコモも902iシリーズの頃から同様の傾向が見えていたが、それが一気に進んだ印象だ。アウトドア派ユーザーのニーズが大きかった防水端末を、ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ性の小型ストレート端末で仕上げた企画端末「SO902iWP+」(5月12日の記事参照)など、商品企画とマーケティングの連携も冴えわたっている。

王者の戦いから、覇者の総力戦に

 ここにきて改めて感じるのは、「本気になったドコモ」の底力、強さである。ドコモはプライドと余裕を持った王者の戦い方を捨てた。これから始まるのは、覇者の力による総力戦だ。ドコモは端末・サービス開発におけるリソースの大きさを武器に、他社に見劣りする要素をすべてなくす「物量作戦」を展開してくるだろう。夏以降は料金プランでも、他社の動向を見ながら同様の施策をとる可能性は高い。

 1990年代、一時的にシェア獲得争いで負けたドコモは、サービスや料金競争でライバルを徹底的に叩きつぶした事がある。手負いのドコモが本気になると、どれだけ怖ろしいか。筆者は旧DDIセルラーや旧J-フォンの関係者から、多くのエピソードや事例を聞いたことがある。

 MNPを前に、本気になったドコモにどう対抗するか。KDDIと、新体制になるソフトバンクの動向に、注目していきたい。

[神尾寿,ITmedia]

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