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神尾寿の時事日想:

「LISMO Music Store」のメリットはどこにある?

5月17日にオープンが決まったLISMO Music Store。しかし現在の状況を見る限り、「着うた」や「着うたフル」の時と比べ、見切り発車という印象が否めない。詰めが甘いと感じる理由はいくつかある。
2006年04月21日 22時55分 更新

 KDDIが、au携帯ユーザーを対象にPCを介して音楽を配信するサイト「LISMO Music Store」を5月17日にオープンすると発表した(4月20日の記事参照)。LISMOは音楽を中心としたコンテンツ分野でのFMCを目指した取り組みであり、auの春商戦モデルから投入されている(1月19日の記事参照)

 その中でLISMO Music Storeは、PCとホームブロードバンド回線をコンテンツ流通路として使い、携帯電話ネットワークを使わずに音楽配信を実現するものだ。iTunes Music Storeやmoraなど、既存のPC向け音楽配信サービスに近い位置づけになる(1月19日の記事参照)

価格・音質よりもラインアップを重視

 着うたフルは「いつでも・どこでも買える」という利便性と、「J-POPを中心に新しい曲・流行の曲が多い」ことと引き替えに、1曲300円という割高な価格設定が受け入れられてきた。また、携帯電話でダウンロードし、携帯電話で聴くという手軽なリスニングスタイルが基本なので、音質よりも圧縮率を優先したHE-AACの48Kbpsという音質でもユーザーの納得が引き出せた背景がある(2004年11月18日の記事参照)

 今回のLISMO Music Storeは、その着うたフルの延長線として「まずは楽曲のラインアップを重視した」(KDDI広報部)という。

 従来の着うたフルと同じく、J-POPの新曲やヒット曲のラインアップを増やすために、価格設定と音質面で“着うたフルと同じ”という形にして、レコード会社の不安や反発を招かないように腐心している。これらの努力により、LISMO Music Storeのラインアップは、最新のJ-POPを中心に他の音楽配信サービスにない楽曲が集められるだろう。

 しかし、その一方で、“PC向けの音楽配信”として見れば、1曲300円は明らかに高く、音質面でもiPodなど音楽専用プレーヤーでの再生を前提にしたものより劣る。携帯電話向けで納得されていた価格や音質が、PC向けとしても通用するかという課題があるのだ。

着うたフルとの差別化を急ぐ必要がある

 さらに根本的な問題がある。それは携帯電話で提供される着うたフルと、LISMO Music Storeは「何が違うのか」という点である。

 価格と音質は携帯電話と同じ。またLISMO Music Storeの売り物である楽曲ラインアップにしても、当面はau携帯電話向けに提供される着うたフルよりも少ない。これではユーザーは、PCを使うメリットを一体どこに見出せばいいのだろうか。現在のLISMO Music Storeは、ユーザーに対する説得力に欠けるのだ。

 KDDIがJ-POPの新曲やヒット曲を充実させる上で、レコード会社の値下げへの理解を引き出しにくいというのならば、せめて音質面は早急に向上すべきだ。LISMO Music Storeの価格設定を考えれば、携帯電話向けや他の音楽配信サービス以上の音質でなければユーザーは納得しがたいだろう。

 また、携帯電話向けより試聴時間を長く設定したり、ランキングやリコメンド上位曲の試聴をダイジェスト的に続けて再生できる機能を用意するなど、サービスや操作性の面でも“LISMO Music Storeならでは”の使いやすさを訴求する必要がある。

 あくまで私見だが、当初のLISMO Music Storeは、着うたや着うたフルの時と比べると、サービス開始時期を優先した「見切り発車」のような印象を受ける。ユーザーへの説得力や訴求力の点で“詰めの甘さ”を感じるのだ。

 KDDIがLISMOで取り組む「コンテンツ分野のFMC」の中で、音楽配信は重要な位置を占めるサービスのはずだ。レコード会社への配慮は確かに必要だが、ユーザーを失望させてしまったら元も子もない。サービス開始後、早期の成長と改善に期待したいと思う。

[神尾寿,ITmedia]

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