次世代ディスプレイの牽引役は「地図」 神尾寿の時事日想:

» 2006年04月20日 15時55分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 今年もまた国際フラットパネルディスプレイ展が始まった(4月4日の記事参照)。携帯電話にとって「ディスプレイ」の進化が重要なイノベーションに結びついてきたことは今さらいうまでもない。

 古くは1999年、iモードが登場したことにより、メールやコンテンツを見やすくする「ディスプレイの大型化」が始まった。2000年11月にはTFTカラー液晶搭載機が発売され、エンターテインメント分野を中心としたコンテンツビジネスの活況、携帯電話カメラの活用など、携帯電話の可能性を広げる下地になったのは記憶に新しい(2003年11月11日の記事参照)

 昨年の国際フラットパネルディスプレイ展のトレンドは「動画対応」だった(2005年4月22日の記事参照)。高精細で応答速度が速く、発色も鮮やかな液晶技術が競われていた。これは今月始まったワンセグを筆頭に、携帯電話向け映像サービスが増加することを睨んだものだ。

 今のところワンセグ対応機は各キャリアの一部機種のみだが、今年の秋商戦以降はMNPの競争力強化もあり、ワンセグ対応機は1キャリア3〜4機種に増えそうな気配がある。またワンセグ以外の新たな映像サービスに力を入れるキャリアも出てきそうだ。動画向け液晶技術は引き続き注目といえそうだ。

次なる牽引役はGPSと地図

 では、映像以外にディスプレイの新たなニーズになるものは何か。筆者は来春以降のGPS搭載義務化(2004年5月18日の記事参照)による、地図とナビゲーションサービスだと考えている。

 その動きはすでに見え始めている。例えばボーダフォンの最新機種「904SH」(2月28日の記事参照)は携帯電話初のVGA液晶を搭載するが、その用途として重要な位置を占めるのが地図とナビゲーションサービスだ。特にナビゲーションは、歩行者向け、そしてクルマ向けの助手席ナビともにVGA化のメリットを強く感じる分野だ。また、auでも「EZナビウォーク」の着実な成長が、大きくて見やすい液晶ニーズの1つになってきている(3月27日の記事参照)

 地図とナビゲーションの視点で考えると、今後、液晶分野で重要になる要素は大きく2つある。

 1つは単純だが、大型化と高解像度への対応だ。小さい画面でも地図を見やすくするアプローチは確かに存在するが、とはいえ大画面・高解像度の情報量の差は地図だと如実に表れる。あくまで私見だが、使いやすい携帯電話ナビゲーションに最適な液晶は、2.8インチ以上のVGA液晶だと考えている。むろん、このサイズと解像度を実現しながら、携行性を失わない薄型化や小型化の工夫も必要だ。

 もう1つが消費電力の低減だ。今後、ナビゲーション技術が向上してくると、必然的に地図とナビの表示時間は長くなってくる。クルマ向けの助手席ナビではなおさらだ。しかし、今のEZナビウォークなどでは液晶の消費電力を抑えるため、ルート案内中もキー操作が一定時間ないとバックライトを消灯してしまい、画面が見えなくなってしまう。今後は画面表示を維持したまま、消費電力を抑える技術が必要になる。

 地図とナビゲーションの用途では、ルート案内中は画面内容が視認できればよい。映像サービスのように画質や明るさはそれほど重要ではないのだ。そのため、この分野のニーズを考えるならば、半透過型液晶などバックライトオフでも表示内容が見られる技術の進歩が注目である。

 GPS携帯電話を使ったナビゲーションサービスは進化が著しく、歩行者向けとクルマ向けの両方で、今後の成長が期待できる。GPS搭載義務化が行われる来春以降、液晶はもちろん、他のデバイス分野のニーズにも影響を及ぼすだろう。

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