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神尾寿の時事日想:

一足早く決済インフラとして定着したEdy

Intelがビットワレットに投資、PC向けコンテンツ決済手段としてEdyを推進することになった。他方式に比べ、一足先にユーザーに定着しつつあるEdyの、強さと課題は何か。
2006年04月19日 12時09分 更新

 4月18日、ビットワレットの電子マネー「Edy」に2つの朗報があった。

 ひとつは米Intelの投資部門Intel Capitalによるビットワレットへの出資だ(4月18日の記事参照)。出資金額は50億円で、ビットワレットが発行する転換社債型新株予約権付社債を引き受ける形で投資したという。インテルは現在、デジタルホーム技術「Viiv」の推進などコンテンツ分野にまで踏み込んできているが、そこで重要になるデジタルコンテンツ決済方式の1つとして、日本市場で急成長しているEdyを重要視したようだ。

 2つ目の朗報は、本誌の簡易アンケート「今後、あなたの携帯をサイフ代わりにするのはどれ?」で、ユーザーの高い支持を集めたこと(4月18日の記事参照)。ITmedia読者に限ったアンケートではあるが、高い認知度と支持率を得たことは評価できるだろう。

Edyはなぜ支持されるのか

 筆者は昨年、FeliCa/モバイルFeliCaの導入事業者を多く取材したが(時事日想バックナンバー)、そこでもEdyの評価は高かった。理由が大きく3つある。

 1つはEdyが「全国で使える」ことだ。プリペイド型の電子マネーとしては、JR東日本の「Suica電子マネー」がEdyと並んで紹介されるが、これは関東圏に限った話である。Suica電子マネーは駅ナカ・駅ウエなど駅周辺での導入が進み、確かに首都圏ではEdyより使いやすい場合がある。利用エリアが明確で集中しているため、Suica電子マネーは導入店舗あたりの利用率も高い。しかし、全国展開をする事業者や各地域の地場企業、地方在住者からすれば、“東京にある地域電子マネー”でしかない。極論すれば、現金のような特性と汎用性を併せ持つFeliCa型の電子マネーは、今のところEdyだけである。この優位性は大きい。

 2つ目は「ポイント機能・異業種連携」の柔軟性だ。Edyは当初からこの機能を重視しており、決済とポイントサービスを結びつけられる仕組みを持っていた。さらに異業種であっても、ポイント交換のスキームを用いて柔軟な“異業種連携”や“送客のスキーム”が構築できる。

 その好例が、全日本空輸(ANA)の「ANAマイレージクラブ」(AMC)のマイルプログラムだ(2005年12月23日の記事参照)。AMCマイルについては、Edy導入事業者の大きなインセンティブになっており、その効果は極めて高い。さらに先に紹介した九州での高速道路SA・PAでの導入実験に合わせた「ダブルマイルキャンペーン」のように(4月4日の記事参照)、ユーザーから見て関連する異業種を“マイル”で結びつけ、利用促進プログラムを実施することができる。

 そして最後の理由が「プリインストールの多さ」だろう。周知のとおり、EdyはANAマイレージクラブを中心としたカード型の普及はもちろん、最初期のおサイフケータイからアプリが初期導入されてきた。これはプリペイド型なので“誰でも使える”ことと、先述のとおり“全国で使える”からだ。Suica電子マネーのように地域性のあるものや、利用にあたり審査があるクレジット決済サービスは、「携帯電話に組み込んで売る」ことが難しい。

 なおドコモはF702iD以降のおサイフケータイで「iD」アプリを、今後のおサイフケータイで「DCMX mini」のアプリをプリインストールする。これはiDが全国で使えて、DCMX miniの存在によって幅広い層が使えるからだ。iDとDCMX miniの組み合わせは、Edyと同様に「現金に近い特性と汎用性」を持つと言える。

今後の課題は「決済+α」の訴求

 むろん、Edyに課題がないわけではない。

 ユーザー側からの課題は、今後もさらに「チャージの必然性」を作ることだろう。おサイフケータイやAMCカード利用者の中には、未だにEdyにチャージしたことがない未使用ユーザーが少なくない。この点では、公共交通利用という“チャージの動機付け”があるSuica電子マネーや、ポストペイのクレジット決済サービスの方が優位性がある。利用店舗の拡大と、ポイントシステムのさらなる充実が必要だ。

 また、事業者側からの課題は、クレジットカードに比べて比較的高めと言われるEdy決済手数料のハードルを上回る“導入効果”を作ることだ。Edy利用者を増やし、店舗での利用率を向上させる。その上で、集客と優良顧客を囲い込むことにより、売り上げ拡大に大きく貢献していく必要がある。

 ユーザー、そして導入事業者の両方に「決済+α」の訴求をしていく。それが決済インフラとして定着してきたEdyの次の課題だろう。

[神尾寿,ITmedia]

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