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Interview:

iDにとっての小額決済市場――三井住友カードに聞く(前編) (1/2)

ドコモとともに、強力にiDを推進する三井住友カード。儲からないと言われる小額決済市場に熱心に取り組む理由や、他陣営との考え方の違いについて聞いていく。
2006年04月17日 15時38分 更新

 昨年末に登場してから、急速に勢力を拡大し続けるおサイフケータイ向けクレジットブランド「iD」(2005年11月8日の記事参照)。携帯電話業界トップのNTTドコモと、クレジットカード業界で第2位の三井住友カードが手を組んで誕生したiDは、ドコモがイシュアとなってカード発行を行うクレジットサービス「DCMX」(4月4日の記事参照)の登場により、さらに勢いを増す気配を見せている。

 今日の時事日想は特別編として、三井住友カード iD企画部グループマネージャーの楠木康弘氏にインタビュー。三井住友カードにとってのiDの狙い、戦略について聞いていく。

ay_kamio01.jpg 三井住友カード iD企画部グループマネージャーの楠木康弘氏

クレジットカードは小額決済に向かない

 おサイフケータイ向けの多くのクレジット決済サービスがそうであるように、iDもまた「小額決済市場」を開拓・獲得するために誕生した。現金利用が中心の小額決済マーケットをいかにキャッシュレス化するかは、クレジットカード業界共通のテーマになっている。

 「(三井住友カードでは)これまで小額決済市場の創出のために、『VISAッピ』(2003年9月29日の記事参照)や『VISAキャッシュ』など様々な取り組みをしてきました。しかし、これらは技術先行だった部分と、小額決済市場のキャッシュレス化が成熟しておらず、結局どれも商用化されずに終わっています」(楠木氏)

 これにはクレジットカード会社が取ってきた戦略の影響も大きい。誕生以来、クレジットカードは“よそいき”の高額決済市場にフォーカスした市場開拓を行ってきた。「カード会社としても、T&E(Travel & Entertainment)を軸にしたマーケティングを行ってきた」(楠木氏)こともあり、休日のショッピングや飲食、海外旅行時の利用率は向上したが、その半面で“平日の利用”はほとんど開拓されていないのが現状だ。

 「クレジットカード利用率の高いお客様でも、『平日の生活』でカードをお使い頂けているかというと、思ったほど使われていない。今では大手スーパーのほとんどがクレジットカード対応をしていて、『使えない』わけではない。お客様が『使わない』のです」(楠木氏)

 多くの人が日常生活でクレジットカードを使わない理由は何か。1つにはクレジットカードの“サインレス決済”が浸透していないことが考えられる。多くのスーパーやコンビニエンスストアはサインレス化をしており、実際の決済にかかる時間は通信による認証だけだ。しかし、「クレジットカード決済は時間がかかると思われている」(楠木氏)ことから、現金の方が手軽で素早いと考えている消費者がまだ多いという。

 さらに楠木氏は、非日常・高額にフォーカスしてきたこれまでのイメージ戦略が、日常生活でのクレジットカード利用のハードルになっていると指摘する。

 「スーパーやコンビニで、クレジットカードを使うという事が『恥ずかしい』と思っているお客様がけっこういる。ゴールドカードをお持ちの方などはカードを出すことがステータスになる半面、スーパーなど日常シーンで出すのはちょっと恥ずかしいですよね(笑)。数千円以上にならないとクレジットカードは使わないという人が多くて、そういったマインドの部分はいくら(クレジットカード決済の)仕組みを作っても変わらない」(楠木氏)

 スーパーやコンビニなどは生活圏で利用することが多く、少額だとクレジットカードの利用に心理的な抵抗感があるのは事実だろう。これはクレジットカードの持つステータス性や、匿名性がない点が逆効果になる一面といえる。

 そこで三井住友カードが注目したのが、おサイフケータイである。携帯電話は日常生活のツールとして定着している上に、おサイフケータイ機能は、今や携帯電話の必須機能だ。今後は“インフラ”としてユーザーの手元に存在する。

 「おサイフケータイならばクレジットカードを出すわけではないので、(これまでのクレジットカードが持つ)ハードルがない。少額でもお使いいただきやすい。以前、我々が取り組んだVISAッピと比較すると、ユーザーが利用ごとに事前準備をする必要がないなど利便性が高いのも(おサイフケータイの)メリットですね」(楠木氏)

 また、小額決済市場がキャッシュレスに向けて成熟してきているのも、注目すべき要素だと楠木氏は話す。

 「EdyやSuicaマネーなど、電子マネー陣営が急成長したことにより、小額決済を取り巻くキャッシュレス化の流れは、1年前と比べて明らかに加速してきています。ユーザーの受容性が変わってきているのもポイントでしょう」(楠木氏)

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[神尾寿,ITmedia]

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