タクシーの「おサイフケータイ対応」、期待と課題 神尾寿の時事日想:

» 2006年04月12日 18時43分 公開
[金子 順,ITmedia]

 タクシーのFeliCa決済対応が相次いでいる。この分野の草分けはJCBのQUICPayを採用した神奈中ハイヤーと(2005年8月2日の記事参照)、伊予鉄道のい〜カードに対応する伊予鉄タクシーだが(2005年8月24日の記事参照)、先月から他のタクシー会社にもFeliCa決済対応の発表が続いている。

 ビットワレットの「Edy」を採用するのが、ANZEN Group(以下ANZENタクシー)と飛鳥交通グループ、中央無線タクシー(4月10日の記事参照)。東京無線協同組合(東京無線タクシー)は三井住友カード&NTTドコモの「iD」を採用した(3月22日の記事参照)。JR東日本の「Suica電子マネー」は、国際自動車、日本交通が採用する(4月12日の記事参照)

 これらタクシー会社の対応により、首都圏のタクシーの大半は、何らかのFeliCa決済に対応することになる。

キャッシュレス化のメリットは大きいが課題もある

 タクシーの決済市場は少額から中額が中心であり、ユーザーとドライバーの両方に、現金の煩雑さから逃れたいというキャッシュレス化のニーズがある。宅配便の着払いと並んで、利用促進が期待できる決済市場だ。タクシーでは、これまでクレジットカード対応が試みられてきたが、オンライン認証を必要としないFeliCa決済に優位性がある分野である。

 さらにプリペイド方式の電子マネーに限れば、カード型よりもおサイフケータイ型の方が、タクシーでは使いやすい。その理由は、言うまでもなく「オンラインチャージ」の存在である。おサイフケータイのEdyやモバイルSuicaでは、タクシーに乗った後のチャージも可能だ。降りる際に残額不足で慌てる必要がない。もちろん、ポストペイ方式のiDやQUICPayなどクレジット決済サービスは、そもそも残額を意識する必要がないので、より簡便なタクシー料金の支払いができる。

 しかし、その一方で現在のFeliCa決済対応には課題もある。これまでFeliCa決済を採用した各事業者が必ず挙げる「リーダー/ライターの共用化がされていない」という問題である。

 しかもタクシーの場合、店舗よりも「使いにくさ」の課題は大きい。

 店舗ならば、自分が利用したいFeliCa決済が使えるお店を探すことができる。Suica電子マネーのように、分かりやすい場所に利用可能店舗が集中しているケースもあるだろう。しかし、街中を走るタクシーの中から、自分が使いたいFeliCa決済に対応した会社のタクシーを探しだし、呼び止めるのは困難だ。

 また、駅前やホテルの前など「タクシー乗り場」でも混乱が起きそうだ。目の前のタクシーはiDにしか対応していないが、自分が使いたいのは3台後ろにいるEdy対応のタクシー。そのような時はどうすればいいのだろうか。

一刻も早いリーダー/ライター共用化を

 繰り返しになるが、タクシーは「FeliCa決済」のメリットが出やすい分野であり、おサイフケータイの認知と普及、利用促進を後押しする上でも有望だ。

 しかし、タクシーの利用環境や特性を考えると、FeliCa決済の方式が乱立した状態での導入は、ユーザーの混乱を招き、「FeliCa決済は分かりにくい・使いづらい」という印象を持たれてしまう可能性がある。

 タクシーだけではない。先日、紹介した高速道路SA・PAやコインパーキングなどでも、FeliCa決済への期待とともに、電子マネーやクレジット決済サービスが乱立し、リーダー/ライターの共用化ができていない事を問題視する声は大きい(4月4日の記事参照)。タクシー業界だけでなく、FeliCa決済は確実に広がってきている。だからこそ、一刻も早いリーダー/ライターを共用化し、ユーザーにとって「分かりやすい・使いやすい」環境を構築してもらいたいと思う。

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