連載
Interview:
PiTaPaはなぜ“ポストペイ方式”なのか――スルッとKANSAIに聞く(前編) (1/3)
関西の私鉄・バス路線で利用できる共通乗車券サービス「PiTaPa」は、ポストペイ(後払い)方式を採用することによりきめ細かい割引サービスを受けられる、優れたサービスだ。しかしポストペイを採用することは、サービス事業者側にも大きなメリットがあった。
JR東日本「Suica」(特集参照)があまりに有名なため、非接触IC「FeliCa」を使った公共交通サービスというと“プリペイド方式”というイメージが強い。同じJRグループのJR西日本「ICOCA」(3月24日の記事参照)や、伊予鉄道「い〜カード」(2005年8月23日の記事参照)、長崎バス協会「長崎スマートカード」(2005年12月13日の記事参照)などもプリペイド(前払い)方式である。
そのような中で、公共交通向けIC乗車券システムとしては珍しい“ポストペイ(後払い)方式”を取るのが、スルッとKANSAIが運営する「PiTaPa」だ。現在、京阪神を中心に、私鉄・バス会社9社が対応している。
プリペイド型IC乗車券が大半である中で、PiTaPaはなぜ「ポストペイ方式」を採用したのか。スルッとKANSAI PiTaPaビジネスサークルコアリーダー執行役員の松田圭史氏に、PiTaPaの背景とビジネスモデル、電子マネーやパーク&ライドへの取り組み、異業種連携などについて聞いた。
スルッとKANSAI PiTaPaビジネスサークルコアリーダー執行役員の松田圭史氏1社単独ではできないサービスをする
スルッとKANSAIは1996年3月に、磁気式プリペイドカードによる私鉄・バス共通乗車券システムを企画・検討するための協議会として誕生した。東京圏でいうと、地下鉄・私鉄が共同で利用する「パスネット」をイメージするとわかりやすいだろう。スルッとKANSAI加盟社局は鉄道22社局(バス兼業含む)、バス会社29社局の51社局。関西圏が中心だが、岡山や静岡など他地域にも広がり始めている。
「スルッとKANSAI協議会は磁気式プリペイドカードの企画・検討もしましたが、設立目的はそれ(磁気式プリペイドカードの導入検討)だけではありません。協議会に参加する私鉄・バス会社が共同で、お客様の利便性向上、部材の共同購入による経費節減、共同PRなどを通して、各参加社局が収益向上をしていきましょう、というところにあります」(松田氏)
スルッとKANSAI協議会は私鉄・バス会社がサービス改善を一体的に図るための「参加企業が集まる場の提供」(松田氏)と位置付けられている。同協会の取り組みは乗車券システムに留まらないのが特徴である。
例えば、スルッとKANSAI参加社局の共同フリーペーパー「遊びマップ」では、共同PRとして各企業が負担する発行コストを抑えたほか、記事で紹介する沿線タウン情報を参加社局全体に広げて、「各社局の事業エリアを越えた旅客の流動を促す事に成功した」(松田氏)という。
他にも、企画乗車券として従来では取り込むのが難しかった旅行者向けのサービスにも取り組んだ。それがスルッとKANSAIの43社局で乗り放題になる「3Dayチケット」や「2Dayチケット」である。これは国内旅行者はもちろん、海外からの旅行者も取り込んで年3万枚を超えるヒット作になった。
「スルッとKANSAIは(共同乗車券システムの構築だけでなく)様々な共同企画を立ち上げて、1社単独ではできないサービス改善を実現してきました。これが我々の成功体験になっています」(松田氏)
また地道な取り組みとしては、レールや枕木、蛍光灯、切符の紙など部材の共同購入にも力を入れており、こちらでも2割〜5割のコスト削減を実現した。
2000年には「株式会社スルッとKANSAI」が誕生した。これまでの企画・検討する場は従来からのスルッとKANSAI協議会が残り、そこで企画された内容をスピーディーに事業化する「両輪を持つ体制」(松田氏)ができあがった。
スルッとKANSAIは設立当初から、私鉄・バス会社がお互いの経営状況を鑑みながら、力を合わせてサービス改善とコスト削減を総合的に行う仕組みになっていた。これが後のPiTaPa誕生における伏線になる。
[神尾寿,ITmedia]
Copyright© 2012 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
新着記事
- 「空港行き」の電車代、見直さなければいけない
LCCの就航によって「ちょっと旅に出てみようか」という人も多いのでは。しかし空港へ行くまでの電車代は、旧態依然のまま。高い。鉄道会社はそろそろ「空港行き」の運賃を見直すべきではないだろうか。 - 金環日食で騰がる株はコレだ!
投資4コマ漫画『カブ・ジェネレーション』。世界中がわいた天文イベントとなった金環日食。この盛り上がりで株価が上昇しそうな銘柄を探したはるかが、ある銘柄を発見したようです。 - 報道関係者の2割弱、震災報道の内容を変えられた経験あり
日本に未曽有の被害を出した、東日本大震災とそれに伴う原発事故。報道関係者は、原発事故に関しては感情的な報道を避けるよう意識していることが分かった。京都大学こころの未来研究センター調べ。 - “億万長者”役員の出身大学ランキング――1位は?
上場企業で年間1億円以上の報酬を受けている役員は、どこの大学を卒業しているのだろうか。東京商工リサーチの調査によると……。 - 誠VOICE 第16回「2000年以降の首相であなたが一番評価する人は?」
新着記事
どうなる? 鉄道の未来(5):「空港行き」の電車代、見直さなければいけない
投資4コマ漫画『カブ・ジェネレーション』:金環日食で騰がる株はコレだ!
誠 Weekly Access Top10(2012年5月12日〜5月18日):東京スカイツリーに行く人、行かない人
杉山淳一の時事日想:鉄道自殺は増えていない。自殺全体が増えている
アクセスランキング
- 借金大国日本で“踏み倒す人”が急増している理由(2012年04月10日)
- なぜ“普通のオトコ”は、なかなか見つからないのか?(2012年04月26日)
- 女性が男性に求めていること……それは信じられない数字だった(2012年04月27日)
- 会社を辞めたい……そう感じる人が多い業種(2008年12月04日)
- 「鉄道ファン=良い客じゃない」――この構図にしたのは、誰か(2012年05月21日)
- NHKが、火災ホテルを「ラブホテル」と報じない理由(2012年05月15日)
- こうすればワタシは“落ちる”――現役キャバ嬢に「口説き方」を聞いた(後編)(2009年03月10日)
- 新入社員が3年で辞める本当の理由(2012年05月23日)
- “ナマポ”ってなに? 若者の間で広がる不正受給(2012年05月22日)
- こんなモノを身につけてはいけない? 男性のNGグッズとは(2009年11月26日)













