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神尾寿の時事日想:

携帯ナビゲーションの道は一日にしてならず

着実に使い勝手を改良し、今ではauを代表するサービスとなった「EZナビウォーク」。他キャリアでも類似のサービスは提供しているが、auには大きな優位性がある。それはなぜだろうか?
2006年03月30日 10時19分 更新

 3月27日、KDDIは「EZナビウォーク」を機能拡張、新たに「3Dナビ」の機能を搭載した(3月27日の記事参照)。歩行時はクルマの運転時以上に「自分がどこにいて、どちらを向いているか」を把握しにくい。周囲の風景を3D化するメリットはカーナビ以上に大きく、この分野で先鞭をつけてノウハウの蓄積をすることは、KDDIとナビタイムにとって優位性に繋がるだろう。

 それにしても感心するのは、KDDIが「携帯電話ナビゲーション」をここまで育て上げてきたことだ。サービス開始当初は、GPS携帯電話を使ったナビゲーションサービスにどれだけの実用性や市場性があるか疑問視されたが、今ではauを代表するサービスになっている。筆者はサービス初期からのユーザーなのでよく分かるが、性能や使い勝手は着実に進歩している。3Dナビに限らず、ここ最近でも「EZ助手席ナビ」(2005年9月1日の記事参照)や「声de入力」(1月12日の記事参照)など、新機能の実装に余念がない。

 これらの改善により、ユーザーも着実に増えている。KDDIによると現在の月額会員は約75万人、これに加えて1日あたりの課金で利用するユーザーが存在する。さらに注目なのが、EZナビウォークが「解約率の低いコンテンツ」(KDDIコンテンツメディア事業本部コンテンツ推進部パートナーズビジネスグループリーダー課長補佐の江幡智広氏)である点だろう。EZナビウォークのユーザー満足感の高さは、そのままauの顧客満足度の底上げや「囲い込み」にも貢献している。

ナビゲーションは総合力とノウハウの世界

 むろん、GPS携帯電話を使った歩行者ナビゲーションサービスは、他キャリアの携帯電話向けにも存在する。しかし、これらがEZナビウォークの代替になるかというと、それは難しい。ナビゲーションは単純に「自位置と地図」を見せるだけのものではないからだ。位置と地図を軸に、様々なコンテンツやサービスを組み合わせていく。さらにUIも重要だ。ソフトウェアとサービス、ハードウェアをバランスよくコントロールするのが、「よいナビゲーション作り」では欠かせない。総合力とノウハウの蓄積がものをいう世界なのだ。

 EZナビウォークはKDDI自らがサービスを手がけているため、ナビ作りで重要なソフトウェアとハードウェアの一体的な開発がしやすい。例えば今回の3Dナビは、「(au携帯電話が採用する)クアルコムのコアチップに3D描画機能が内蔵されるのを前提にしている」(江幡氏)という。また、先の「声de入力」では、音声認識技術をKDDIが開発しただけでなく、実装にあたって端末のマイク位置の違いなどに合わせた調整が行われたという。こういったハードウェア開発と連携したナビ作りができるのは、キャリアの立場ならではである。

 さらに重要なのがノウハウの蓄積だ。EZナビウォークはナビタイムのナビゲーションエンジンを使用しているが、ハードウェアやUI、他のコンテンツサービスとの連携などを通じてKDDIにもノウハウの共有・蓄積がされている。特にコンセプトや商品企画でのノウハウ蓄積は重要なポイントだ。

 実は、カーナビ開発の世界では「誰が企画・開発したか」が重要な位置を占めている。業界内の名物プランナーや開発者が何人か存在し、開発責任者が誰かが評論家の評価に影響するほどだ。それほどまでにナビ作りは経験とノウハウの固まりなのである。

 最近の取材で強く感じるのだが、EZナビウォークを通じてKDDIの内部には「携帯電話ナビのプロフェッショナル」が育ってきている。コンテンツプロバイダに丸投げするのではなく、自らの経験をもとに携帯電話ナビをプロデュースする力がついてきているのだ。これはKDDIの大きな優位性になっている。

 GPS機能の搭載義務化を前に、ドコモやボーダフォンでも携帯電話ナビゲーションの充実に力を入れている。しかし、この分野の特殊性を鑑みると、コンテンツプロバイダ任せでは、いつまでたってもEZナビウォークを超えられないと思う。KDDIのように「キャリアのサービス」として標準機能化し、端末と一体的なサービス開発体制の構築、さらにキャリア内部でのノウハウの蓄積と人材育成が必要だろう。ナビゲーションの道は一日にしてならず、である。

[神尾寿,ITmedia]

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