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Interview:

携帯の世界における「世界観」「検索」の意義とは――KDDI高橋誠氏に聞く(後編) (1/2)

現在、auのコンテンツサービスの中でも伸びているのが、LISMOとeコマース分野だという。他キャリアも取り組んでいる分野だが、その中にはある工夫があり、それが「auらしさ」につながっている。前編に引き続き、高橋氏に話を聞いていこう。
2006年03月29日 12時57分 更新

 矢継ぎ早に新たなコンテンツメディアサービスを投入し、この分野での地歩を固めるau。その範囲は音楽などエンタテイメント分野から、eコマース、GPSナビゲーションによる実用分野まで幅広い。同社のコンテンツメディア戦略について、KDDIコンテンツメディア本部長の高橋誠氏に聞いていく。

ay_kddi02.jpg KDDIコンテンツメディア本部長の高橋誠氏

音楽だけにとどまらないLISMOの世界観

 LISMO(1月19日の記事参照)は音楽から打ち出された「コンテンツのFMC」(高橋氏)であり、そこが大きな軸であることは間違いない。しかし、高橋氏はLISMOの概念は音楽だけに縛られるものではないと話す。そのひとつの例としてあげられたのが、クリップキャスティング型の映像配信「EZチャンネル」(2003年10月22日の記事参照)と、将来のLISMOの関係だ。

 「現在、EZチャンネルは携帯電話インフラで配信していて、これはこれで発展していきます。ただ将来的に(LISMOの音楽分野のように)複数の配信経路になる可能性はあります。EZチャンネルの考え方はビデオポッドキャスティングに近いですし、LISMOの概念自体が広いですからね。特にPC側ソフトウェアは、音楽と映像をはじめ様々な連携機能が1つにまとまっていくでしょう。LISMOは音楽から始まりましたが、その(PC連携・コンテンツFMCの)世界観には映像やゲーム、電子書籍といったものへの広がりが含まれています。

 映像に話を戻すと、今までのEZチャンネルは(データサイズが)3メガバイトまでという制限があって、その上限値の影響は大きかった。ところがLISMOによるPC連携、固定網ブロードバンド経由での配信になれば、映像の内容における自由度があがります。例えばビジネスマン向けの英会話コンテンツみたいなものもいけるかもしれない」(高橋氏)

 世界観とその広がりを大事にする姿勢は、アップルコンピューターのiPodに似ている部分がある。前編でも述べられたとおり、LISMOはiPodをよいお手本にしており、携帯電話の特徴を生かしながら追いかけているのだ。

 しかしiPodの世界観は巨大だ。それを支える要素のひとつがiPodに接続する外部機器の多さである。iPod向けにはスピーカーをはじめとする専用周辺機器が多く作られており、カーオーディオメーカーや自動車メーカーもこぞって連携を打ち出している。これらはiPodのエコシステムであり、iPodが世界観とブランドを有する支柱になっている。

 「周辺機器との連携や広がりは、今後の課題だと認識しています。例えばトータルの世界観の話では、細かい部分ですが、『なんでイヤホンが(本体カラーに関わらず)黒しかないんだ』といった問題がある。我々(コンテンツメディア部門)の想いとしては、外部のオーディオ機器と連携するために、(携帯電話で一般的な)平型コネクターではなく、ステレオミニ端子を装備したい。端末価格が上がらないようにしながらも、こういった外部連携をしやすい要素はしっかりと作っていかなければいけないでしょう」(高橋氏)

 インタビューの中で高橋氏が強調したのが、「LISMOが世界観である」という点だ。音楽というひとつのカテゴリーにとどまらず、連携するのはPCだけとは限らない。広がり感を大事にするスタンスは、LISMOの大きな可能性になっている。

 しかし一方で、高橋氏が例として挙げたイヤホンの問題1つをとってみても、これまでの携帯電話キャリアには「携帯電話の都合を優先し、そこで閉じようとする傾向」がある。LISMOが今後、その世界観を広げていこうと考えるならば、イヤホン端子の共通化や、iPodの「Dock」のように世代を超えて互換性を保証する汎用拡張バスを導入するなど、やらなければならない事は多いだろう。

eコマース市場の伸びとキャリアの可能性

 auは現在、多方面でのコンテンツメディアサービスの強化を行っている。LISMO以外で伸び盛りなのが、eコマース分野だという。

 「au Recordsだけで月間8000万円近く売れている。au Booksも火がついていて、月間3000万円くらい。auブランドの販売サイトだけで月間1億円を軽く超えている」(高橋氏)

 KDDIコンテンツ・メディア事業本部コンテンツEC本部長兼ECビジネス部長の長島孝志氏のインタビュー(2月22日の記事参照)で語られたとおり、これらauブランドの販売サイトはケータイeコマースの“購入体験”を積んでもらうための場所だ。auのeコマースの主柱はeコマースポータル「au Shopping Mall」にあるため、その規模と裾野が大きく拡大する最中にあることが分かる。

 「これらeコマースでキャリアとして重要なのが、お客様の大半がauの決済システム(まとめてau支払い)をお使いだということです。eコマースの拡大は回収代行サービスの収益増になりますから、キャリアのメリットも大きい」(高橋氏)

携帯での世界でも「サーチ」が競争力になる

 LISMOをはじめauのコンテンツメディアサービスが増えているが、その中で今後、高橋氏が重要になると指摘するのが「サーチ(検索)」の機能や技術である。「auでは以前から公式サイトの検索機能に力を注いできましたが、ここはさらに発展させる余地がある」(高橋氏)という。

 その中でも重視しているのが、検索の網羅力と精度だ。

 「(将来的には)ローカルやネットワークの区別なく、ユーザーが求める情報を的確に探し出すサーチ機能が必要になると考えています。例えば、あるキーワードを入れると、携帯電話のローカルフォルダ、LISMOで繋がったPCの個人フォルダ、さらには公式コンテンツからインターネット上の情報まで網羅的に検索する。そういった総合的なサーチ機能が実現できれば、ユーザーにとっても使いやすいと思っています」(高橋氏)

 この取り組みの端緒はすでに存在する。auでは公式サイト検索はもちろん、EZ Music!など分野別ポータルに検索機能を設けている。その利用率は「かなり高い。EZ Music!ではアーティスト名から曲を探すという使い方が定着している」(高橋氏)という。

 一方で、ユーザーの使い勝手を向上させる上でも、auは検索機能を積極的に取り込んでいる。最近の例では、EZナビウォークの声de入力などがそれにあたる。他にも、おサイフケータイ向けにGPSで周辺の利用可能スポットを探すサービスなど、細かな部分の機能強化に余念がない。

 「ドコモさんは(キャリアとしての)検索機能の開発にあまり熱心でないように見えますが、我々はこの部分に力を入れていきたい」(高橋氏)

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