鉄道サービスとしての高い完成度。JR西日本「ICOCA」Interview(1/2 ページ)

» 2006年03月24日 14時40分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 非接触IC「FeliCa」を使った公共交通サービスというと、東京在住の読者は真っ先にSuicaを思い浮かべるだろう。確かにSuicaはこの分野の嚆矢であり、モバイルSuica対応などサービスの進化と拡大にも熱心だ。

 だが、公共交通でのFeliCa活用というと、関西地域も見逃せないエリアだ。関西ではJR西日本の「ICOCA」、スルッとKANSAIの「PiTaPa」が相互利用サービスを実現している(2005年11月11日の記事参照)。また、神姫バスの「NicoPa」では、ICOCA/PiTaPaの利用対応だけでなく、2月1日からおサイフケータイ対応の「モバイルNicoPA」をスタートしている(2005年11月24日の記事参照)

 今日の時事日想は関西特集の第一弾として、西日本旅客鉄道(JR西日本) 開発本部事業創造部金融ビジネス企画課長の山道正和氏と、鉄道本部営業本部担当マネージャーの安村範文氏にインタビュー。JR西日本ICOCAのこれまでと、今後の展望について聞いていく。

JR西日本開発本部事業創造部金融ビジネス企画課長の山道正和氏(左)と、鉄道本部営業本部担当マネージャーの安村範文氏(右)

ICOCA開始の狙いと効果

 JR西日本のICOCAは2003年11月にスタートし、今年3月までの累計で約225万枚(定期券約119万枚、乗車券約106万枚)が発行されている。日本でも有数のFeliCa型乗車券サービスである。

 JR西日本がFeliCa採用に踏み切った理由は、JR東日本とほぼ同じだ。

 「大きなポイントは2つ。メンテナンスコストの削減とお客様の利便性向上、事業分野・サービスの拡大です。FeliCa採用に至った背景としては、(JR)東日本さんと同様に改札機通過速度を磁気カード以上に上げられる、という点がありました」(安村氏)

 JR西日本は、大阪などの大都市圏を抱えていることもあって、その背景事情や導入後の効果はSuicaに似た傾向にある。例えば、自動改札機の全利用数に対するICOCA利用率は約50%で、これもSuicaと同じ割合だ。

 ICOCAは現在、267駅が対応している。JR西日本全体では約1200駅を管轄しているが、ICOCAは京阪神地区での展開という位置付けだ。ICOCA対応駅の拡大も「一段落という状況」(安村氏)だという。

 ICOCAカードの種類としては、プリペイド乗車券、定期券、子供用の3種類がある。また、JR西日本のクレジットカード「J-WESTカード」では子カードとして「SMART ICOCCAカード」が発行される。ICOCAへのチャージは一部の券売機が対応しているほか、駅のホームや改札周辺にICOCA専用チャージ機を設置しているという。

 「関西では残額が10円でもあれば改札内に入場し、電車にお乗りいただけます。降りる時に精算していただければいい、という方針を磁気式カードの頃から採用してきました。ですからホームへの専用チャージ機設置などはニーズが高いですね」(安村氏)

 Suicaでは初乗り運賃が残っていることが駅改札を通る条件になっている。しかし、ユーザーの利便や駅改札のスムーズな運用という観点では、「残額があれば入場できる方が合理的」(安村氏)という考え方は納得できる。

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