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Nokiaの戦略から読み解く、FMCのこれから

通信業界のこれからを語る上で重要なキーワードとなるのがFMC(固定と無線の融合)。Nokiaの戦略からFMCの将来と課題を探る。
2006年03月22日 23時33分 更新

 通信業界全体でこのところ急浮上しているキーワードがFMC(固定と無線の融合)だ。その言葉が示す通り、固定網とセルラー無線網を意識することなく、1つの電話番号、1つの端末で両サービスを利用できる世界が実現するといわれている。ここでは、フィンランドのNokiaの戦略をベースにFMCの現在と将来についてまとめてみる。

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 Nokiaのネットワークス事業部でFMCマーケティング・営業担当ディレクターを務めるミッコ・サルミネン氏は、FMCが注目を集めている背景を次のように説明する。

 「3つのトレンドがある。1つはブロードバンドの普及率の伸び。現在、ブロードバンド加入者は約2億人といわれているが、2008年にはこの数は5億に膨れると予想されている。2つめが携帯電話普及率の伸びだ。無線セルラー網の音声トラフィックは固定網のそれを少しずつ侵食してきており、2007年には1対1になるといわれている。3つめはブロードバンド(IP)がもたらしたVoIP。2009年には音声トラフィックの10%がVoIPに移行するという予想もある」(サルミネン氏)。つまり、音声はIPとモバイルへ移行しており、これがオペレーターに、固定とモバイルの両プラットフォームを組み合わせたIPベースのサービス提供へ向かわせているということになる。

 FMCを実現する重要なコンポーネントとなるのがIMS(IP Multimedia Subsystem)。IP技術ベースのマルチメディアサービスを実現するプラットフォームで、3GPPが標準化を進めている。これとVoIPの標準とされるSIP(Session Initiation Protocol)を組み合わせることで、プッシュツートークなど、さまざまなサービスを統合できる。

Photo 音声はモバイルやIPに移行している

 IMSのメリットについて、サルミネン氏は次のように説明する。「IMSのメリットは2つある。まず、1つのプラットフォームであらゆるサービスが提供できる点だ。これによりシステム運行担当者など管理部分を合理化できる。2つめは、その上にある全てのサービスをあらゆる端末に提供できる点だ」。これにより、同社のIPベースのテレビ通話アプリケーション「Video Sharing」(2005年4月の記事参照)やプッシュツートークをPCで利用できるようになる、と続ける。サルミネン氏によると、Nokiaは現在、Telecom Italia、France Telecom、ElisaなどのオペレータとIMSのトライアルを進めているという。

FMCの過渡期のサービスとして注目を集めるUMA

 ただしSIP/IMSの構築はいわば最終形であり、過渡期にFMCサービスを実現する技術としてUMA(Unlicensed Mobile Access)がある。3GPPが標準化に取り込んでいる技術で、Nokiaも今年2月にスペイン・バルセロナで開催された「3GSM World Congress 2006」でUMAを「今年のキーワード」と位置付け(2月14日の記事参照)、オペレーターの関心が高いことを示唆した。

 UMAは、無線LANなどの免許不要な周波数帯を経由してW-CDMAなどのセルラー網に接続可能にする技術で、モバイルオペレーターが屋内カバレッジの問題を解決する技術として注目している。UMA対応の端末を利用することで、無線LAN(つまりVoIP)が利用できるときは無線LANを、それ以外はセルラー網を利用できる。もちろん、ハンドオーバーは通話が途切れることなくシームレスに行えるという。こうしたUMA端末は、米Motorola(2005年7月)や韓Samsungなどが提供しており、最大手のNokiaが本腰を入れることで(2月14日の記事参照)、FMCの課題とされてきた端末不足が多少解決することになりそうだ。

 現在FMCを提供している英BTも、UMAを用いている。固定網プロバイダの同社は、無線セルラー事業部をO2として売却(その後、スペインのTelefonicaが買収を発表している)、固定電話事業社およびISPとして展開しており、昨年9月に「BT Fusion」というFMCサービスを開始した。当初、ハブ(無線LANルータ)との通信技術としてBluetoothを用いるが、今年中に無線LANに移行する予定だ。GSM網では、BTは英Vodafoneと提携し、MVNOとして展開する。

 サルミネン氏は、年内にも欧州で初の商用IMSが運行を開始するだろうと予測。また、今後約5年の間で欧州の中から音声トラフィックが(PSDNから)IMSに完全に移行する国も現れるだろうとも見る。

 では、FMCに意欲的なのはどのプレイヤーだろうか? 先のBTを始め、トライアル中のところは固定網オペレーター、あるいは固定と携帯の両方を持つハイブリッド型が多いようだ。実際、PSDNベースの音声トラフィックは年20%の割合で減少しており、固定網オペレータはVoIPが起爆する前から、すでにモバイルという脅威を経験している。

 積極的な姿勢をとる固定網オペレーターに対し、無線セルラー網オペレーターは、どちらかというとモバイルに進出しはじめたVoIPというトレンドに背中を押された格好だ。サルミネン氏も、無線網オペレータは現状維持の姿勢をとるオペレータも多いことを認める。また、ハイブリッド型では、「組織編制などの問題も無視できない」と指摘する。

 このようにFMCでは、固定網、無線網、ISP、ケーブル事業者、VoIPプロバイダなどがこの市場に参画することになり、オペレーターにとっては、戦略や提携によって将来が左右される大切な時期となる。「技術だけの戦いではなく、ビジネスモデルの戦いでもある」とサルミネン氏が読む通り、競争の性質が変わってきたようだ。「少し先のことを読むのは難しい」と語るサルミネン氏が、唯一いえることとして挙げるのは、ユーザーへのメリットだ。「価格は低下し、1台の端末、1台の電話という便利さを手に入れられる」

 すでに、モバイルとひとことでいっても、3G、HSDPA、無線LAN、WiMAXなど、異なる方向から発生した多数の技術が存在する。無線LANを内蔵する携帯電話があれば、3Gを搭載したノートPCも出てきている。通信業界にとって、今後数年間は激動期となりそうだ。

[末岡洋子,ITmedia]

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