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連載

韓国携帯事情:

生活密着、SMSの多様な利用方法と、文字入力方法

公共機関でもフル活用の韓国SMS。これまで端末メーカーごとにハングル入力方法が異なるのが不便な点だったが、携帯以外の家電も含めた多様な機器に同じ入力法を使うべく、KTが動き始めた。
2006年03月20日 23時45分 更新

 韓国は日本と異なり、携帯電話でのメッセージのやり取りにSMSを利用することが圧倒的に多い。文字数は限られてしまうが、安くかつ手早く送受信できるSMSは友達同士のメッセージやり取り以外にも多くの場で利用されている。ところでSMS作成時必須の文字入力だが、携帯電話によって入力方式が異なっているのも、韓国と日本で異なる点だといえる。SMSを取り巻く環境について報告する。

公共機関でもフル活用

 「お客様の2月の納付料金は6万8000ウォンです。納期日は2月27日です」(キャリアが事前送付する月の料金報告)、「第10回××展示会。3月8日10時から、会場は××にて。皆様のご参加をお待ちしています」(主催者によるイベント開催のお知らせ)、「<報道資料>××株式会社。確認をお願いいたします」(報道資料送付のお知らせ)──。

 友達同士のメッセージ以外にも、毎日のように送られてくるSMS。上記に挙げた以外にも、キャリア会員カードの利用可能ポイントのお知らせ、携帯電話料金と一緒に請求される「携帯電話決済」利用時の認証番号、本人確認が必要なWebサイトの入会確認など……さまざまな用途で利用される。

sms1.jpg KTFが3月から開始した「magic n Music DJ」サービスは、ユーザー1人1人の要望に合わせて、プロのDJが着メロやリングバックトーンなどの音楽コンテンツをSMSで推薦してくれるサービスだ

 手軽で安いSMSは韓国ユーザーにとっては生活に密着したサービスで、インターネットではSMSの同時大量送信サービスを提供するWebサイトが人気であるほか、SMSを利用した数々の新サービスも登場している。

 ソウル教育庁は3月に入り、SMSで学校の動きなどを保護者に知らせるサービスを、ソウル全体の小・中・高校で開始すると発表した。これは学校行事や留意事項などをSMSで随時発信するもので、簡単な内容であれば教師にSMSを送っての相談も可能だ。これまでソウル市にある一部の小・中・高校で試験サービスが行われていたが、保護者からの反応が良かったため適用範囲を拡大したのだという。日常の細かな動きを、学校に問い合わせたりする手間なくSMSで知ることのできるサービスは、忙しい親世代から人気だ。

 またこれと同様に、予防接種や健康診断などの案内をSMSで送信する保健所や、土地関連の問い合わせおよび申請に対する結果をSMSで知らせる地方自治体などもあり、韓国では公共機関がSMSを積極的に利用する様子がよく見られている。

メーカーごとに異なる文字入力方式

 ところでSMSの入力に欠かせないのが文字入力だが、韓国は日本と異なり文字入力方式がメーカーごとに違っている。そのためたとえばMotorolaからAnycallへ機種変更した人が真っ先に混乱するのが文字入力方法で、これを避けるために毎回同じメーカーの携帯電話を買う人もいるほどだ。

 それぞれのメーカーが採用している文字入力方式は、Samsung電子が「チョンジイン」、Pantechグループは「ハングルサラン」「スカイII」、LG電子は「ezハングル」、VKは「スンリハングル」、Motorolaは「Motorola方式」というように、全くバラバラの状態だ。

 こうした状態を統一すべきとは誰もが感じてはいるものの、これらの入力方式にはそれぞれ特許があるため、メーカーの利害関係絡みで統一はなかなかうまくいかない。思い切って第3者が開発した文字入力方式を投入しようにも、既に多くの人が現行の文字入力方式に慣れきった状態であるほか、メーカーにとってはユーザーを囲い込むための手段の1つでもあるということで、重い腰はなかなか上がらない。統一よりも自社の文字入力方式を推進しようという動きがむしろ強いのだ。

 LG電子が採用している「ezハングル」は、もともと言語科学社が開発した「ナラッグル」という入力方式だ。LG電子が言語科学社から通常使用権を買い取った。ところで昨年その言語科学社からKTが「ナラッグル」の特許権を買い取っている。それと同時にこれを「KTナラッグル」と改名した。

 KTナラッグルは今後、WiBro対応端末機やPDA、VoIP対応電話機、電子辞書、ゲーム機など多様な製品に適用される予定だ。KTでは、KTナラッグルを採用する中小端末機メーカーに対して、初期契約金および売上が100億ウォンを突破するまでのロイヤリティを全額免除する方針を固めるなど、KTナラッグルの普及に熱心だ。

 このように特許権を買い、ロイヤリティを一部免除するほどKTが入力方式に力を入れる理由は、今後同社がさまざまな有・無線通信事業を展開する中で、各種デバイスによる文字入力が不可欠と判断したからにほかならない。これまで携帯電話の入力方式としては、端末の占有率が大きいSamsung電子の「ジョンジイン」が有力だったが、KT次第ではその勢力図に変化が見られるかもしれない。韓国の文字入力方式は、企業の力関係が左右している状態だ。

sms2.jpg LG電子の「チョコレートフォン」(SK Telecom向け「LG-SV590」、KTF向け「LG-KV5900」、LG Telecom向け「LG-LP5900」)、Motorolaの「Z」こと「MS600」。よく見ると、アルファベットの上にあるハングル文字が異なっている
sms3.jpg Pantechグループは2005年に「SKY」ブランドのSK Teketechを買収したが(5月16日の記事参照)、昨年下半期頃からPantechの入力方式も「スカイII」に変わった。2006年1月に販売された「PT-L1900」は「スカイII」、2005年5月に販売された「PH-S6000」は「ハングルサラン」で、同じ会社でも端末の販売時期によって入力方式が異なっている

佐々木朋美

 プログラマーを経た後、雑誌、ネットなどでITを中心に執筆するライターに転身。現在、韓国はソウルにて活動中で、韓国に関する記事も多々。IT以外にも経済や女性誌関連記事も執筆するほか翻訳も行っている。


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