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ケータイ国際フォーラム:

イー・アクセス千本氏、携帯業界を斬る「国家として致命的ミス犯した」

「ケータイ国際フォーラム」講演で、イー・アクセスの千本会長が業界の問題を一刀両断にした。ライブドア問題やソフトバンクの動向、国内携帯メーカーの不振まで幅広く話した。
2006年03月16日 22時22分 更新

 3月16日、京都で開催中の「ケータイ国際フォーラム」講演にイー・アクセスの千本倖生会長が登場。歯に衣着せぬ物言いで、ライブドア問題やソフトバンクの動向を含め、通信業界の現状を幅広く論じた。同氏はまた日本の携帯メーカーが世界の市場で苦戦している状況にも触れ、「戦略を間違えた」と斬って捨てた。

Photo 京都は、若き日の千本氏が京セラ創業者の稲盛和夫氏と一緒に第二電電の立ち上げ計画を練った場所。それだけに、この地への思い入れもひとしおだという

ライブドア問題やソフトバンクの買収交渉にも言及

 この日、千本氏の講演は昼食休憩後の1時30分から開始された。千本氏は「1時からの講演なんて“最悪”でね……(昼食を食べて眠くなっているだろうが)少し皆さん方に起きていてもらおうと思って、大体こんなことを話すと起きていてくれるんじゃないかと」。そういって同氏が示した講演のアウトラインは、「ホリエモン問題」「ソフトバンクのボーダフォン買収」など刺激的な項目がズラリと並んだ。

 ライブドアをめぐる一連の騒動については、「フジテレビの日枝さん(日枝久会長)はまんざら知らない仲じゃない。ホリエモンの株をどうしようか、なんて一緒に食事しながら話をしていた」というエピソードを披露。自分は六本木ヒルズの近くに住んでいるが「ヒルズには住んでいない。ああいう『バブルの塔』には住まない」としつつ、「ホリエモンは一時はビンビンに肩で風を切っていて、こんな年を迎えるとは思わなかっただろう」とコメントする。続けてイー・アクセスの役員構成で社外取締役が多いことを紹介し(2005年5月12日の記事参照)、「ライブドアに足りなかったのはコーポレートガバナンスだ」と一蹴した。

 ソフトバンクのボーダフォン買収交渉については、あくまでソフトバンクと英Vodafoneの交渉であり、日本法人であるボーダフォンの津田志郎会長は「何も言えない立場」なのだろうと推測する。

 交渉がまとまるのは4月初旬前後という見方もあるが(3月6日の記事参照)、「私の直感でいうと2カ月ぐらいかかりますね」とも。これはソフトバンクが1兆数千億円ともいわれる資金を集めるため、時間がかかるからだという。「1兆何千億のファイナンスは、いかに孫さん(孫正義社長)でも大変ですから」とした。

携帯業界は「致命的なミス」を犯している

 千本氏はまた、自分は海外によく出かけることをアピールする。「今回も海外から帰ってきたばかりで京都に行ってくれと言われ、またシリコンバレーに行って、その次は日本に帰ってきた後にニューヨークに行ったりする」

 先日スペインのバルセロナで開催された世界最大規模のカンファレンス「3GSM World Congress 2006」にも出席したと千本氏。そうした海外で見たことを総合して判断すると、世界のITの動きが収れんするところは「光ファイバーでなくすべてモバイル」と自説を繰り返す。

 「光ファイバーなんかにお金をバンバンかけて引いている事業者もあるが、あれはビジネスモデルとしてワークしない。ADSLよりちょっと上積みした料金がもらえるだけで、入会サービスもするから投資の回収に50〜60カ月もかかる。(集合住宅などを対象に住居の手前まで光ファイバーをひく)FTTCは、これは僕は正しいと思う。しかしFTTHなんてナンセンスなことをやっているのは世界で日本だけ。プロフィタブルでない(利益の上がらない)モデルは長続きしない」

 同氏はさらに、バルセロナの3GSM会場で日本の携帯メーカーが全く勢いがなかったとも話す。勢いがあったのはフィンランドのNokiaやスウェーデンのEricssonといったメーカーで、ここに「ライジングサン」(同氏)である韓Samsungや韓LGといったメーカーが挑む構図。中国メーカーも有望で、第2のSamsungになるだろうと予言する。

 しかし日本の携帯メーカーは、どのブースも規模が小さいか、人だかりが少ない。「NECも富士通も、携帯事業部が真っ赤っか。松下(パナソニック モバイルコミュニケーションズ)も大変苦労している」。海外メーカーが巨額の黒字を達成しているのに比べると、「どっか何か戦略を間違えているわけですよね」という。

 千本氏は「日本の衰退を招いたのは、ドコモのせい」と鋭く言い放つ。日本の既存キャリアが日本独自仕様の“クローズドな”通信環境を整備した結果、端末メーカーが海外に開かれた商品戦略を練ることができなかったという議論だ。これは同じ日の講演で、ボーダフォンの津田志郎会長も指摘している(3月16日の記事参照)

 「海外のトップエグゼクティブが来日すると、彼らはだいたい(スマートフォンである)『BlackBerry』を持っている。しかし、成田空港に着いたとたんにそれは無用の長物になる。BlackBerryは米国でも中国でも、世界のどこでも使えるが、日本では全く使えない」

 日本独自仕様の携帯を作ることは、海外メーカーの国内進出を防ぐ意味はあっただろうが、一方で日本製品を輸出できないという問題を生んだとした。

 「国家として、致命的な戦略ミスを犯している。これから決定的な競争をちゃんとやらないと、日本メーカーは永遠に海外メーカーに勝てない」。イー・アクセスが新規事業者としてユーザーに端末供給を開始したあかつきには、クローズドな戦略はとらずに世界に出てもそのまま使える携帯を提供するのだと強調した。

[杉浦正武,ITmedia]

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