モバイル業界に明日はあるか? 危機感にじませる津田会長ケータイ国際フォーラム(1/2 ページ)

» 2006年03月16日 21時00分 公開
[杉浦正武,ITmedia]

 3月16日、京都で開催されている「ケータイ国際フォーラム」の講演にボーダフォンの津田志郎会長が登場。移動体業界が直面する苦境を紹介したほか、IPネットワーク網の相互接続性などについて議論が尽くされていないのではと警鐘を鳴らした。

Photo ボーダフォン日本法人の売却が噂される中の登場に「出席するかどうか迷った」と告白する津田氏

ひずみが生じてきている――通信業界の苦悩

 津田氏は、ボーダフォンを取り巻く環境が変革期を迎えようとしていると話す。この変革期を乗り切るために、固定通信市場で何が起こったかを振り返って参考にしたいという。

 その固定市場では、通信事業者が厳しい競争にあえぐ構図が続いている。「料金が低廉化し、勝者不在のエンドゲーム(終盤戦)になっている。ネットワーク価値は低下し、ひずみが生じてきている」。通信事業者は一般に巨大な投資を必要とするものだが、それを維持するリスクが高まり、結果として各事業者は疲弊しつつあるという。この状況が、モバイル業界でも起こるのだろうか? と不安を投げかけた。

 同氏はまた、モバイル業界がいまや“成熟期”に入っていると指摘する。新規顧客を獲得したといっても、それは実質「ほかのキャリアからの乗り替え」であることが多く、純粋に携帯を利用していなかったユーザーの新規加入(=純新規)の比率は減りつつある。この中で、「成熟期において既存のビジネスモデルは持続可能だろうか」。これも業界がずっと抱えている問題の1つだという。

 津田氏が気にしているのは、どうやら端末価格の安さのようだ。海外では日本と異なり、通信キャリアがインセンティブを支払って端末代金を値下げする文化があまりない。「欧米のビジネスモデルは、ハイエンドのコストの高い端末が、非常に安く売られるビジネスモデルではない。ユーザーは料金プランを選択し、さらに『契約期間』を選択して、それで端末価格が決まる。契約期間のレンジが長ければ端末が安くなるわけで、この仕組みなら(通信キャリアは)コスト回収が可能だ」

 翻って日本では、新規端末を比較的安価に購入して、即解約しても払い戻しの必要はない。「その分はどこで負担するかというと、(販売)代理店に手数料が全額支払われずに、払い戻しで賄われる。通信事業者にも代理店にも満額の収入がない、というかたちで穴埋めせざるを得ない」。成熟期に入り、買い替えや事業者間乗り換えが短期間に頻発するようになると、事業者は回収もれのリスクが高まるという。

 「端末の実勢価格の水準がどうあるべきか、というのは非常に難しいテーマだが、考え直さなければ安定成長には問題になるのではないか」

どこで間違えたのか? 端末メーカーの不振

 津田氏はさらに、携帯メーカーの海外事業の不振に言及する。「日本の通信市場は世界最先端といわれている。確かにノンボイス系(データ系)サービスの利用では一歩リードしているが、そういわれながら実は、それを支えるサプライヤの現状はいかがなものか」

Photo

 よく知られているとおり、日本の携帯メーカーは世界の市場ではトップ5に全く食い込めないでいる。「ニュースでランキングが報じられると、トップ5あたりまでが記載され日本のメーカーは『その他』扱いだ。何か問題があるのではないか?」

 ここで津田氏は、踏み込んだ発言をする。日本の通信キャリアがメーカーから端末を買い上げるという、日本独特のビジネスモデルが影響しているのではないか――というわけだ。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.