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神尾寿の時事日想:

ワンセグとの共存を目指す「MediaFLO」

米Qualcommの放送技術「MediaFLO」。携帯向け放送ということもあり、日本市場ではワンセグと競合するのではないか、と見る人は多いが、Qualcommでは「両社は共存できるもの」と考えているようだ。
2006年03月03日 10時48分 更新

 2月28日から、筆者はサンディエゴで開催されている「MediaFLO Day」に参加している。これはクアルコム社のモバイル向け放送技術「MediaFLO」を紹介するプレス向けのイベントであり、サービス開始に向けて準備が進む米国の実験用サービスや設備を見学。同社キーパーソンによるMediaFLOの商用化と普及へのスタンスが2日間をかけて語られる。

 現地時間3月1日の今日は、MediaFLOの米国市場での商用化の取り組み、技術的な解説とともに、MediaFLO関連設備の公開と説明が行われた(3月2日の記事参照)

携帯電話ビジネスの視点から、ワンセグ共存を目指す

 MediaFLO Day初日、筆者の印象に強く残ったのが、MediaFLOの国際的な事業開発を担当する同社シニアディレクターのオマール・ジャベード氏のセッションだ。ジャベード氏はすでに商用化に向けて動き出した米国市場以外のMediaFLO展開を担当し、当然ながら日本市場での商用化に向けた活動に深く関わっている。

 周知のとおり、日本市場では“携帯電話向けテレビ”として今年4月からワンセグの正式サービスが始まる。MediaFLOにとって逆風の環境にも思えるが、ジャベード氏は質疑応答で「ワンセグとは共存できる」と強調した。

 「日本はそもそもコンテンツのサービスニーズが高く、さらに(MediaFLOで必要になる)QVGA液晶などが普及している。MediaFLOのチップセットは小型なのでワンセグとは技術的に共存できる。さらにコンテンツやビジネスモデルの点でも、MediaFLOではキャリアが(放送サービスに)参加できる仕組みを想定している。一部で広告モデルもあるだろうが、基本はキャリア決済で有料コンテンツをユーザーに提供するモデルなので、ワンセグとは違いが打ち出せる」(ジャベード氏)

 実際、米国市場を担当するMediaFLO USAのサービスモデルでは、携帯電話キャリアのベライゾンが放送サービスやクリップキャストのコンテンツ決済を代行する仕組みだ(3月2日の記事参照)。また、サービス面では、映像コンテンツを端末内に蓄積してユーザーが見たいときに再生できる「クリップキャスト」など、ワンセグにない機能が用意されている。

 固定テレビの延長線上のビジネスモデルやサービス形態を取るワンセグに対して、現時点でのMediaFLOの展開イメージは携帯電話コンテンツの世界に近い。

モバイルのセンスで作られたMediaFLO

 むろん、クアルコムが考える「ワンセグと共存」のシナリオに不安要因がないわけではない。

 まず、QVGA液晶やサラウンド機能などデバイス部分の共有化が見込めるとしても、クアルコム製のMediaFLOチップセットとワンセグ受信用チップセットは、二重にコストがかかる部分だ。キャリアや端末メーカーが、このコスト増加を受け入れるかは難しいところだろう。

 また、日本のユーザーは有料の携帯電話コンテンツは受け入れているが、有料テレビは未だ一般化しきれていない。米国では全米で9400万世帯がケーブルテレビや衛星テレビなど何らかの有料テレビに加入しており、テレビにお金を払う素地がある。この日米ユーザーの姿勢の違いは、無視できない部分だ。

 しかし、それでも筆者はMediaFLOの今後に興味がつきない。なぜなら、MediaFLOがモバイル市場向けのセンスやノウハウを持つからだ。放送業界主導で始まるワンセグに注目する一方で、携帯電話業界が牽引する「携帯向け放送サービス」の世界を見てみたいと思う。

 重要なのは、ユーザーの利便性向上と、携帯電話ビジネスの市場を拡大することである。ワンセグとMediaFLOの共存というシナリオは、"携帯でテレビ"の普及と、それに関連した新ビジネスの可能性を広げる意味で、検討する価値があるのではないだろうか。

[神尾寿,ITmedia]

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