QUICPayで少額決済市場が大きく変わる――JCBの戦略(前編) Interview: (2/2 ページ)

» 2006年02月23日 09時28分 公開
[神尾寿,ITmedia]
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QUICPayで、親カードのメインカード化を狙う

 QUICPayは現在、JCBのクレジットカードに追加して“子カード”として利用する形を取っている。FeliCaカードとしては、磁気+接触IC+FeliCaの3機能を1枚に収めることも可能だが、「ETCカードのように利用シーンやニーズに応じて使い分けてもらう方がいいと考えている」(青木氏)。おサイフケータイの場合も、QUICPayが子カードになるという形は変わらない。

 「ETCカードもそうなのですが、QUICPayのような子カードを発行すると、親カードが(利用者の)メインカードになりやすいというデータが得られています。子カードで利用シーンを増やす、QUICPayで少額決済分野を補完するというアプローチには、親カードのメインカード化を促すという狙いがあります」(青木氏)

 JCB全体としても、現在は発行枚数を増やすより、クレジットカード1枚あたりの利用頻度・利用額を増やすことにビジネス的な重点が置かれているという。QUICPayには、少額決済など現金市場をクレジット決済で取り込むとともに、紐づけられた親カードのメインカード化を促し、トータルでのクレジットカード利用頻度・利用額を底上げするという狙いがある。

 「一般的には、成人男性で平均3〜4枚のクレジットカードを所有していますが、皆さんきちんと使い分けられているかというと、それほどでもない。ほとんど使っていないカードが存在する。我々は(発行したカードが)使われなければビジネスにならず、一方で、サービス維持費はかかるわけです。カード会社からすると、1枚のクレジットカード利用頻度が高くなるほど利益率が上がりますので、お客様のメインカードになり、たくさん使っていただくことが極めて重要です」(吉田氏)

 JCBはブランドとしても、イシュア(カード発行会社)としても多くの提携カードを抱えているが、この「メインカードを狙う、親カードの利用額を増やす」というスタンスが、iDとの違いにもなっていると、青木氏は指摘する。

 「QUICPayにおけるおサイフケータイの位置づけは、あくまで親にあたるクレジットカードの補完です。一方、iDは、ドコモが関わっているので『携帯電話がクレジットカードになる』というスタンスを取っている。入り口が逆なのです。また利用店舗についても、家電量販店などドコモと関わりが深いところから対応しているようです。QUICPayはスーパーやファミリーレストランなど、一般ユーザー(の少額決済)が使われる場所から利用店舗を広げていっています。このあたりの(発想やスタンスの違いが)サービスの違いになって現れてきている」(青木氏)

 おサイフケータイ登場前からプロジェクトがスタートしているQUICPayは、その歴史を見ても分かるとおり、携帯電話対応を重視はしているが、“初めにおサイフケータイありき”ではない。おサイフケータイ対応を積極的に進めつつ、QUICPayカードの開発・普及も同時に進める方針だ。

 「FeliCa採用で形状が自由になりましたから、ブーメラン型カードのようにユニークなものや、もっと小型のカードを用意していきたい。消費者の方が利用しやすいQUICPayを開発していこう、と思っています。携帯電話のストラップ、というアプローチもありでしょう。すべてのクレジットカード利用者がおサイフケータイをお持ちかというと、そういうわけではありませんから」(吉田氏)

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