誠

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連載
2006/02/09 14:26 更新

Interview:
KDDIにとってのモバイルWiMAX(前編)

既存通信キャリアの中で、もっともモバイルWiMAXに熱心に取り組んでいるKDDI。3GネットワークにWiMAXを組み合わせることで、同社は何を目指すのか? KDDIに話を聞いていく。

 最近、携帯電話業界でにわかに注目されるようになったキーワードが「モバイルWiMAX(IEEE802.16e)」である。KDDIだけでなく、ソフトバンク(1月5日の記事参照)、イー・アクセス(2005年5月23日の記事参照)などが次々とモバイルWiMAX導入に積極的な姿勢を表明。さらに最大手であるNTTドコモも、モバイルWiMAX採用への意欲を表明している(1月31日の記事参照)

 今日と明日の時事日想は特別編として、KDDI技術統括本部技術開発本部長の渡辺文夫氏にインタビュー。KDDIのモバイルWiMAXへの取り組みとビジネス的な周辺環境、さらに今後の展望について聞いた。

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KDDI技術統括本部技術開発本部長の渡辺文夫氏

KDDIにとってのモバイルWiMAXの位置づけ

 KDDIは昨年7月からモバイルWiMAXの実証実験を始めており、3G携帯電話サービスをすでに展開している“既存キャリア”としては、この分野に最も積極的だ。また、同社は既に技術世代の進んだ3G技術「EV-DO」を導入済みであり、3Gにおける高速データ通信や定額料金制の充実という点で既存キャリアの中でリードを保っている。3Gでのビジネスが順調なのに、なぜ、モバイルWiMAX導入を急いでいるのか。

 「それは方式論ではなく、KDDIとしてモバイルブロードバンドをどう位置付けるか、という部分になってくるものだと思います。我々は(携帯電話キャリアとして)3Gをさらに進化させ、4Gに進んでいきます。その一方で、固定系キャリアとしてFTTHにも取り組んでいる。この両方のサービスを提供している視点で見ますと、お客様のニーズが固定系ブロードバンドの世界をモバイル化する方向に向かっていることが分かります」(渡辺氏)

 同社のイメージする世界は下図を見てもらうとわかりやすい。現在、携帯電話を軸とするモバイル技術の進展と固定系のブロードバンド技術の進展は、別々の流れであり、その間には大きな隔たりがある。FMCはこのふたつを融合させていくものだが、その隔たりを「どうやって埋めるか」という課題がある。

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 「(モバイルの今後に目を向けると)携帯電話型の世界は、この形のまま進化・発展していくでしょう。しかし、それとは平行して、低価格・常時接続で使えるモバイル通信の世界を考えていかなければなりません。携帯電話の世界ではパケット通信の定額制を実現できましたが、まだ随時接続ですから。

 もっとインターネット的な世界をモバイルに作る。そう考えるとセルラーの技術と、固定系の技術(の持続的な進化)だけでは足りるとは思えない」(渡辺氏)

 KDDIが将来的に考えているのが、モバイルと固定の世界を融合させた「ウルトラ3G」だ(2005年6月15日の記事参照)。この構想ではパケットベースコアネットワークにあらゆるアクセスインフラが統合される。この時、モバイルWiMAXは「多様なアクセスを実現する道具立ての1つ」(渡辺氏)として、携帯系と固定系の間にある隙間を埋める形になるという。

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なぜ、モバイルWiMAXなのか

 ウルトラ3Gのように、基幹ネットワークをIPベースで統合してアクセスラインの多様化を図るのは、KDDIに限らず今後の通信業界のトレンドになる部分だ。例えばNTTグループも、NTT東西とNTTドコモの基幹網をフルIPで統合する計画を表明している。

 KDDIはこのトレンドの中で、ワイヤレスブロードバンドの選択肢として「モバイルWiMAX (IEEE802.16e)」の商用化に取り組んでいるわけだが、一方で“なぜ、モバイルWiMAXなのか”という疑問もある。例えば、今年1月19日にはクアルコムジャパンが、WiMAXに懐疑的な意見を表明(1月19日の記事参照)。クアルコムとしては、IEEE802.20を将来的なワイヤレスブロードバンド技術の最右翼だと推している。

 「技術というのは、時間軸との兼ね合いなんです。ポイントは商用化のタイミングで、我々は2007年から2008年頃にターゲットをおいています。それに向けて大阪での実証実験や、並行して標準化作業をしてきているのですが、(実証実験などを準備した1年半前)当時はトライアルをできる技術、やる価値のある技術が802.16系しかなかった。モバイルの技術というのは、商用化までに早くても4年くらいかかりますから、準備段階で使える技術かどうかが重要です」(渡辺氏)

 KDDIがこだわるのは、モバイルWiMAXという技術ではなく、2007年から2008年という市場投入・商用化のタイミングだという。当然ながら、ここでいう商用化は市場実験レベルのものではなく、多くのユーザーに提供可能な「大規模なビジネスとして成立するもの」(渡辺氏)を指す。

 「当然ながら(商用化に向けた準備の間にも)、新しい技術は出てきます。こういった新技術は先に出た技術から学び、よりいいものを目指すので、当然ながら先行技術より優れているんですよね。間違いないですよ、これは(笑) しかし重要なのは商用化のタイミングであり、その時に市場での利用に耐えられる技術になるのか、です。そう考えると、選択肢は限られてきます」(渡辺氏)

 モバイルWiMAXについては、昨年12月に実質的な作業が終わり、1月に標準化が完了している。しかし、まだ商用化に向けて残された課題もあり、「今の標準化ベースではうまくない部分は、適宜、修正していきます。モバイルWiMAXは『大きなホットスポット』ではなく、携帯電話系のインフラに重畳するものですから、技術的な改善を地道にやっていかなければならない」(渡辺氏)。

[神尾寿,ITmedia]

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