気になるのは「PHSの残すインフラ」 神尾寿の時事日想:

» 2006年02月01日 12時21分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 1月31日、NTTドコモが「2007年第3四半期をめどにしたPHSサービス終了」を発表した(1月31日の記事参照)。これによりドコモのPHSは名実ともに引導を渡されたことになる。

 ドコモのPHSは終わる。しかし、気になるのはPHS終了後に、その残された設備インフラがどのように“転用”されるかだ。

 周知のとおり、PHSの特徴は多数の基地局でエリアを構成する「マイクロセル方式」である。これはエリア拡大に時間がかかり、急成長が望めないというビジネス的なリスクを持つが、一度エリアが完成すればネットワークの収容力や冗長性でマクロセル方式より有利な面がある。この点は最近のウィルコムを見ればわかるだろう。

 また、PHSで使われるマイクロセル方式にはもう1つ利点がある。それが高速データ通信を実現する新たな通信方式を導入する際に、マクロセルよりも取れる選択肢が多いということだ。

PHSに代わり、WiMAXが乗るか

 特に最近になって台頭してきたモバイルブロードバンド技術は、軒並み「マイクロセル向き」である。IEEE 802.16eや802.20方式は言うに及ばず、マクロセル向けに作られた技術も適応変調方式による高速化がメインのため、基地局から端末までの距離がスループットに如実に表れる。乱暴な言い方をすれば、セル半径が小さく、基地局が密である方がユーザーが得られる実効速度は高くなる。このような技術的傾向は今後も続くだろう。つまり、今後のモバイルブロードバンド時代を見据えると、マイクロセル型の設備インフラを持つことは強みになると言える。

 しかし、新たな基地局の設置には土地の確保を始めとする様々な調整処理で時間がかかる。手っとり早く、コスト効率がいいのは、現存する「マイクロセル型の設備インフラ」に新技術を載せ替えていくことだ。ウィルコムの手法はまさにこれで、彼らはひととおり完成したPHSのインフラに「W-OAM」など新技術を導入して高速化を図っている。次世代PHSを含む同社の新技術導入の背景には、常に「完成したマイクロセル型インフラを持つ」という強みがある。

 そこでドコモのPHSに目を向けると、サービス終了時期に興味がわく。ドコモはPHSサービス終了を「2007年第三四半期」としているが、このタイミングはモバイル版WiMAXの商用化と目される時期にちょうど重なる。まったくの憶測であるが、仮にPHS終了で残された設備インフラの大半が「モバイル版WiMAX」に転用されたら、ドコモはかなり有利な立場になる。また、WiMAXではなく、HSDPAの小型局が置かれたとしても、やはり他社に対する強みになるだろう。

 PHS終了で残される設備インフラを、ドコモがどう活用するのか。興味が尽きない部分である。

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