MNPを前にフルラインアップを構築したドコモ 神尾寿の時事日想:

» 2006年01月18日 12時50分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 1月17日、NTTドコモが「702i/iDシリーズ」を発表した(1月17日の記事参照)。同シリーズは高機能・プレミアム路線を取る90xシリーズに対して、多様なコンセプトを持ち、ユーザーの裾野を広げるベーシックモデルに位置づけられる。クルマで例えるならば、90xシリーズは高級セダン、70xシリーズはコンパクトカーやミニバンのような位置付けだ。

 周知のとおり、携帯電話の高性能化や多機能化は一般ユーザーにとって十分以上になっている。自動車業界がそうであるように、市場の成熟期には多様なコンセプトとデザインを持つベーシックモデルの重要性が高くなる。ドコモは902iシリーズでラインアップの「広がり感」を演出することに成功したが、702i/iDはさらに個々のコンセプトが重視されている。

 ラインアップの裾野を広げ、多様なユーザーニーズに応える。ベーシックモデルの本質から見て、70xシリーズはこの1年で大きく成長した。

 昨年、ドコモが初代700iシリーズ(2005年2月2日の記事参照)を発表した段階では、コンセプトやデザインの多様化までは至らず、やや小型軽量なのが売りの90xの縮小コピーだった。しかし、昨年秋の701i(2005年8月2日の記事参照)ではコンセプトとデザインが多様化し、90xとの違いが明確に打ち出された。702i/iDではその流れがさらに洗練されており、902iとの補完関係が明確になった。今回の発表で、FOMA端末は競争力のある"フルラインアップ"を構築できたといえる。

MNP戦線で重要な春商戦モデル

 702i/iDにはFOMAラインアップの完成以外に、もうひとつ重要な役割がある。

 同シリーズは今年春商戦向けの主力モデルであるが、それと同時に今夏の新機種投入以降は在庫が値下がりし、低価格な“量販モデル”に転化する。

 今後、ドコモ以外のキャリアも続々と「春商戦モデル」を発表する。ドコモのFOMAラインアップが完成したことで、各キャリアの競争は例年にない激しいものになるだろう。MNPの戦いを見る上で、各キャリアの春商戦モデルの出来映えと売れ行きは重要な指標になる。春商戦モデルの発表ラッシュから目が離せそうにない。

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