「iDは、JCBとは競合しない」――NTTドコモ夏野剛氏 神尾寿の時事日想・特別編: (1/3 ページ)

» 2006年01月11日 18時35分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 昨年、NTTドコモは新端末を相次いで投入し、また通信事業以外への参入も発表した。MNPを前に、2005年は1つのターニングポイントであり、その流れは確実に2006年に続いている。しかし、その一方で動きの早さに翻弄されている人もいるのではないだろうか。

 本日と明日の時事日想は特別編として、NTTドコモマルチメディアサービス部長の夏野剛氏へのインタビューをお届けする。2005年後半、重要なテーマとなったクレジットサービス事業の展望と、902iシリーズおよび新サービスの狙いについて聞いていきたい。

NTTドコモマルチメディアサービス部長の夏野剛氏

iDは「プラットフォーム事業」であり「ブランド」

 昨年、携帯電話業界だけでなく、クレジットカード業界にまで大きな波紋を広げたのが、ドコモのおサイフケータイ向けクレジットブランド「iD」だ(2005年11月8日の記事参照)

 iDの発表からサービス開始までの同時期に、ドコモ自身がイシュア(カード発行事業者)となり、クレジットカード事業に乗り出すことも発表されたため、ドコモがクレジット分野にどのように取り組むつもりなのかが少々分かりにくくなっている。夏野氏も、iDについて「時々、誤解されることがある」と苦笑する。

 「iDが、例えばJCBなどと競合すると見られる方もいらっしゃるようですが、iDはブランドなんです。ですから、仮にJCBがiDをブランドとして使いたいということであれば、それは可能です。iDというのは、カード会社に対するオープンプラットフォームだと思ってください」(夏野氏)

 ドコモはiモードのコンテンツ事業において、プラットフォーム事業者の立場に徹底していた。その姿勢はiDでも変わらないという。

 「なぜiDのような(ブランド)プラットフォームが必要かというと、店舗で(おサイフケータイを)リーダーライターにかざした時に、どのクレジットカードでも利用できるという環境を誰かが作らないといけないから。特におサイフケータイはマルチアプリケーションであり、複数のクレジットカード機能を搭載できますから、その点でも(おサイフケータイに特化した)ブランドが必要になった」(夏野氏)

 プラスチックカードの世界ではVISAやMASTER、JCBなどがブランドを提供し、各イシュア事業者の発行するカードに汎用的な利用環境を提供している。ユーザーの使いやすさを考えれば、同様の汎用性がおサイフケータイのクレジットカード機能でも必要になるが、「(おサイフケータイ向けのブランド環境構築を)誰もやる人がいないから、我々が率先してやる」(夏野氏)というスタンスだ。

プレーヤー 役割
ブランド ルールの策定、プラットフォームの提供 iD、VISA、マスターなど
イシュア カード発行業務、会員募集 三井住友カード、クレディセゾン、日本信販など
アクワイアラ 加盟店業務、募集、管理 三井住友カードなど

 「(ブランドとしての)iDが目指しているのは、“ケータイでクレジットカード機能が使える”というブランドです。おサイフケータイのユーザーが店舗を訪れた時に、iDのステッカーがあれば『おサイフケータイのクレジットカードが使える』と一見して分かるようにしたい。

 また、iDは複数のカード会社に対してだけでなく、おサイフケータイを採用する他キャリアにも展開する考えです。(au、ボーダフォンに対しては)我々が1つのコンテンツプロバイダーになる形です。技術的には、(ドコモと同じく)オープンな技術であるJavaを使うボーダフォンでは使えるようになります。auはBREWというクローズドな技術を使っていますし、審査の段階でauさんの判断があるかもしれませんが」(夏野氏)

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