W-CDMAとは何か? 1 塩田紳二のモバイル基礎講座 第10回: (1/3 ページ)

» 2005年12月28日 19時49分 公開
[塩田紳二,ITmedia]

 W-CDMAを解説する前に、本連載の第1回で解説した3Gについて思い出してみましょう(3月4日の記事参照)

 3Gの電波通信方式には大きく5種類あり、W-CDMAはそのうちの1つです。IMT-2000では、W-CDMAは「IMT-DS」と呼ばれていて、このDSとは「Direct Spread」の略です。日本語に直すと「直接拡散」で、これは、スペクトラム拡散変調の方式を意味する用語でもあります。規格上の名称はIMT-DSなのですが、日本では、W-CDMAが一般的なので、この名称を使います。

 一方cdma2000は「IMT-MC」と呼ばれます。MCは「Multi Carrier」の略で、複数の搬送波(Carrier)という意味になります。ただし、このcdma2000も、変調方式という点では、直接拡散方式です。

 同じCDMAを使いながら、この2つに違いがあるのは、cdma2000がcdmaOneの上位互換となるように広帯域化したものであるのに対し、W-CDMAは、cdmaOneとの互換性を持たず、新しい方式として提案されたものだからです。この裏には、日本欧州連合と米国、Nokia/Ericsson/ドコモ対Qualcommといった対立があったためです。

 W-CDMAを理解するには、先行技術であるcdmaOneと、その後継技術であるcdma2000との違いなどを理解する必要があります。それで、今回は、これら3つについて比較しつつ、W-CDMAの解説をしていきたいと思います。

W-CDMAとCDMA2000の違い

 W-CDMAとcdma2000の大きな違いは、割り当てられた帯域をそのまま使うか、3つに分割して使うかにあります。cdma2000には「1x」「3x」という仕様があり、下りの帯域を3つに分割し、そのうち1つだけを使うものを1x、3つすべてを使うものを3xと呼んでいます。3xは、より広い帯域を使うようにして高速データ通信などを実現した方式です。cdma2000本来のモードといってもいいでしょう。1xでは、cdmaOneと互換性があります。そのため、以後特に区別しない限り、cdmaOneについてはcdma2000という用語に含まれることとします。

W-CDMAが帯域をそのまま使うのに対し、cdma2000では3つに分割して利用する。なお、c/sはチップレート(Chip/Sec)を指す

 cdma2000では、上り(端末から基地局)の通信は、5MHzの帯域を1つの搬送波で使うのに対し、下りは、3つの搬送波(つまり3つの異なった周波数帯)を使って通信を行います。このために、MC(Multi Carrier)と呼ばれます。

 3つの帯域に分けたのは、1xとの互換性を重視したためです(また、広帯域を使いにくい、米国の周波数割当ての事情によるともいわれています)。下りを3つの周波数帯にわけているため、連続した5MHzの帯域は必要なく、1.25MHzの3つの帯域があれば、3xを実現できるようになっています。

 cdma2000もW-CDMAも、上りと下りで別の周波数帯を使います。このとき下りの周波数帯は、基地局1局だけが送信するのに対し、上りの周波数帯は、多くの端末が送信を行います。cdma2000 3xでも上りの周波数帯の帯域は、W-CDMAのそれと同じですが、どちらも、多数の端末で共有しているため、帯域を狭くすると収容できる端末数が減ってしまいます。

※なおcdma2000 1xには、転送レートを上げた1xEVという方式もあります。これは、正式には、1x-EV-DO(Data Only、のちにData Optimised)といい、下り方向をデータ通信に適した信号とすることで最大2.4Mbpsのデータ通信を可能にした方式です。

 W-CDMAとは、cdmaOneに比べて広い帯域の信号を利用することから付けられた名称です。日本ではW-CDMAと呼ぶことが多いのですが、同じ方式を採用するヨーロッパなどではUMTS(Universal Mobile Telecommunication System)と呼びます。海外メーカーの3G端末では、UMTS対応といった呼び方をしていることろが少なくありません。UMTSは、IMT-2000関連の文書で使われている呼び方であり、通信技術というよりは3Gの通信サービスの名前といってもいいでしょう。これに対してW-CDMAは、NTTドコモが開発していたときの呼び方で、どちらかと通信技術の名前です。なお、同じUMTSでも、規格は年々改訂されており、現在の多くのネットワークは、Release 4以降のもの(Release 6まである)がほとんどですが、先行して開始したドコモのFOMAは、Release 4(以前はRelease 2000と言った)以前のRelease 1999の仕様を含んでいます。

CDMAの基礎

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