実際、インデックスが開発したモバイル長崎スマートカードのアプリは、残高や利用履歴の確認画面が見やすいようにデザインに気が配られている。これはバスに限らないが、公共交通では定期券区間からの乗り越しや、複数路線の乗り継ぎが多いので、利用履歴確認ができるメリットは大きい。
「また、これはカード型サービスが既に対応しているから、という理由もあったのですが、今回は『定期券』のおサイフケータイ同時対応にも力を入れました。通勤利用のビジネスマンはもちろんですが、携帯電話という事を考えると、学生など若い人の(バス)利用増の効果にも期待したかった」(中塚氏)
おサイフケータイに対するもう1つの期待が、FeliCaカードの発行原価圧縮によるコスト削減だ。
「FeliCaカードは正直なところ原価が高い。しかも長崎スマートカードでは一部のバス事業者の反対があり、デポジット制を取らなかったため、最悪『使い捨て』られるリスクがあります」(中塚氏)
磁気式プリペイドカードではなく、FeliCaカードを採用した理由の1つに「繰り返し使える」という技術的優位性がある。しかし、デポジット制を取らなかった運用面の理由により、「使い捨てられる」リスクが高まるという皮肉も生じた。
「現在、販売後に再チャージされないスマートカードの比率は5%以下ですが、発行枚数が約32万枚ですからね。(FeliCaカードの使い捨てによる)コスト負担は大きい」(中塚氏)
FeliCaカードの原価は発注枚数によって異なるが、長崎県バス協会の場合は1枚あたりの原価が500円を超えるという。複数回の繰り返し利用が前提にならなければ、事業者側は完全な赤字になる。
「使い捨てられるリスクを避けるため、2回目以降のチャージ以降に利用分を10%積み増しするなど工夫をしています。しかし、根本の部分でカードの発行原価の負担は大きい状況です」(高崎氏)
一方、モバイル長崎スマートカードの場合、アプリのダウンロード後に窓口で発券手続き(利用者登録)を行うと、フェリカネットワークスに支払うライセンス料がかかる。しかし、カードの発行原価と比較すれば、FeliCaアプリのライセンス料の方が安いという。これはFeliCaチップというハードウェアが、携帯電話という形でユーザーが購入済みであるためだ。
「モバイル長崎スマートカードでもライセンス料という原価はかかりますが、携帯電話を使い捨てにする人はいません。チャージをして使う繰り返し利用が基本になりますから、長期的に発行原価コストの圧縮ができると考えています」(中塚氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PRアクセスランキング