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2005/12/23 12:56 更新

特集:FeliCa携帯、本格始動
ANAはなぜ「電子マネー&おサイフケータイ」に熱心なのか? (1/2)

マイレージプログラムとの連携でEdy&おサイフケータイをバックアップするほか、携帯電話を利用したチケットレスチェックインサービスにも積極的な全日本空輸(ANA)。なぜEdyとおサイフケータイに熱心なのか。そして、その効果はどれだけ出ているのかを取材した。

 コンビニエンスストアのam/pmと並び、「おサイフケータイ」ビジネスの初期参加企業である全日空(ANA)。同社は電子マネー「Edy」にとっても強力な推進者であり、全国各地のEdy対応エリア拡大に果たした役割も大きい。

 ANAはなぜEdyとおサイフケータイに熱心なのか。そして、その効果はどれだけ出ているのだろうか。

 本日の時事日想は特別編として、全日空営業推進本部顧客マーケティング部の北沢克児アシスタントマネージャーと、営業推進本部顧客販売部ANA SKY MOBILE担当の鈴木敦之スーパーバイザーのインタビューをお届けする。

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マイレージ+Edyの相互交換で、マイレージプログラムを身近に

 周知の通り、ANAはおサイフケータイの登場以前から、電子マネー「Edy」の推進役としてFeliCa分野に関わってきた。同社は2002年秋頃からEdyに着目し、その約半年後、2003年5月からANAマイレージカードでEdyに対応した(2003年3月3日の記事参照)

 「Edy対応はかなり急ピッチで進めました。当時、なぜマイレージカードと電子マネーの融合を急いだかと言いますと、航空業界の環境変化があります。

 当時の大きな出来事として、JAL(日本航空)とJAS(日本エアシステム)の経営統合がありました。それまで国内の航空ビジネスは、ANA、JAL、JASの3社で競争しており、その中で当社のシェアは約半分。残りをJALとJASが分け合うという状況で、(ANAにとって)競争が厳しくなかった。しかし、JALとJASが経営統合したことで、当社にとって重要な国内旅客事業における競争激化が起きてくる」(北沢氏)

 航空業界では「国際線のJAL、国内線のANA」という棲み分け状況が、長い間続いていた。ANAのマイレージプログラムでは国内利用シェアの高さを背景に、ビジネスマンの出張や帰省など国内線の利用を獲得しつつ、「貯めたマイルを海外旅行で使う」というニーズで国際線の利用も獲得していた。しかし、JALとJASが経営統合し、国内線の競争が対等になると、国際線の規模で劣るANAのマイレージプログラムは不利になる。

 「国際線の本数や対地を増やすといっても、成田など空港の発着枠の制限があり、思い通りにはいかない。国内線・国際線の路線網を背景にしたマイレージプログラムでは、(経営統合したJAL・JASに)将来的に勝てないという結論に達しました。我々のマイレージプログラムとしては、(不利を覆すために)『貯めやすくて、使いやすい』という環境を作らなければならなくなった」(北沢氏)

 そこで生まれたのが、マイレージプログラムを身近にする、という発想である。

 「多くの人にとって飛行機は未だに非日常の領域にあります。出張などで頻繁にご利用される方もいらっしゃいますが、一方で年に数回しか飛行機に乗らない人もいる。(従来のマイレージプログラムがターゲットにする前者だけでなく)後者の方々にとってもマイレージプログラムを身近なものとして利用していただき、その年に数回の搭乗で確実にANAを選んでもらうようにする。そのために注目したのが、電子マネーのEdyでした」(北沢氏)

 ANAでは、ANAクレジットカードを発行していたが、こちらはクレジットカード利用で貯まったポイントをマイルに交換できるという一方通行。“航空機の搭乗以外にマイルを使う”という道筋ができていなかった。そこで、特に重視されたのが、貯めたマイルを航空サービス以外でも使う、という点だという。

 こうして2003年5月に誕生したEdy機能付きのANAマイレージクラブでは、世界初の試みとして、「貯めたマイルをEdy電子マネーにする」ことも、「Edyの利用に応じてマイルが貯まる」こともできる、マイルとEdyの相互交換プログラムが導入された。

 「貯まって使い、使って貯まるというサイクルを、飛行機搭乗以外にも作る。マイレージクラブの強化が、当社のFeliCa採用のきっかけです」(北沢氏)

コストはかかるが、収入にも結びついている

 しかし、ここでひとつ疑問となるのが、貯めたマイルをEdyに交換して「飛行機搭乗以外で使う」のでは、マイレージプログラムの本来の趣旨に外れるのではないか、という点である。そこには当然ながら、コストもかかる。

 「確かにマイルを飛行機搭乗やアップグレードにお使いいただく分には、当社の中で(マイルが)循環するので直接的なコスト負担はない。しかし、Edyとの連携ではマイルが外に流出するので、当然ながらコスト負担になります。マイレージプログラムの本質からすれば、これは一種の反則技かもしれません。しかし、コスト負担はあっても、Edy連携でマイルの活用がしやすいからANAに乗る、とお客様に選択される効果がある。収入増への貢献をきちんと果たしています」(北沢氏)

 ANAはEdyの利便性を向上させるため、Edyの利用店舗整備にも関わりを持っている。空港内施設のEdy対応はもちろんのこと、am/pmとの連携や協同キャンペーンの実施、さらには地方の商店街や観光地のEdy対応にもコミットしているケースが多い。

 「貯めたマイルをEdyでお使いいただける店舗が多い方が、ANAマイレージクラブの会員様が日々の生活の中でマイルが貯めやすくなる。これは当然ながら(Edy連携する)ANAマイレージクラブの訴求力向上に繋がります。コンビニなど全国チェーンでの展開はANA本部が、地方の商店街などへの導入は各地域支店が協力させていただいています。

 我々としては、Edyの推進によって各地域が(ANAのコーポレートカラーである)青色に染まっていく事を目指していまして、逆に(JALの)赤色に染まることを防ぐ狙いもあります。日常利用のEdyでANAマイルをアピールすることで、『飛行機に乗る時はANAを選ぼう』という潜在顧客を増やすという戦略です」(北沢氏)

 ANAによるEdy導入支援は、熊本の上通商店街が最初の事例であるが、「熊本の(ANAマイレージクラブの)会員加入率は他地域より高く、アクティブユーザー比率も高い。県別で見ると(Edy利用地域整備を)初期からやっているエリアは、会員加入率が高いという傾向が出ています。例えば商店街や観光施設のEdy採用が多い九州エリアなどは、ANAマイレージクラブの加入率も好調です。Edy利用促進の本業へのフィードバック効果は出始めています」(北沢氏)。

 一方、EdyとANAマイルの交換プログラムは、Edy導入店舗への送客効果としても現れている。amp/pmの事例では(12月21日の記事参照)、カード型Edy利用者の約4割がANAマイレージクラブのユーザーであり、20代〜30代の女性層の利用者増加に貢献していた。

 「詳しい(送客)効果については各事業者しか把握していませんが、Edy利用に占めるANAマイレージクラブユーザーのシェアは30〜40%。Edy導入店舗とのポジティブフィードバックが生まれていると考えています」(北沢氏)

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[神尾寿,ITmedia]

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