誠

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連載
2005/11/29 10:08 更新

神尾寿の時事日想:
テレビ電話をかけない“もう1つの”理由

大規模なキャンペーンが繰り返されているものの、なかなか普及しない「携帯テレビ電話」。現在のテレビ電話には、サービスの使い勝手や利用環境に加え、もう1つ大きな問題がある。

 ITmediaの吉岡記者が、ユーザーの視点からテレビ電話に関するコラムを書いた(11月28日の記事参照)。“なぜテレビ電話が使いにくいのか”を、ストレートに書いている。

 以前のコラムで筆者も書いたが、現在のテレビ電話は「ぶしつけなコミュニケーション」であり、キャリアや端末メーカーはそれを抜本的に解消する手段を用意できていないのが実情である(3月14日の記事参照)。ドコモの「キャラ電」などテレビ電話の普及に対するキャリアの努力は感じるが、それも小手先の感が否めない。吉岡記者が指摘するように、テレビ電話のサービスの使い勝手や利用環境には大きな課題がある。

 さらに筆者は、テレビ電話が普及しない理由は、もう1つあると考えている。映像のクオリティだ。

 一度でもテレビ電話を使ったことがある人ならわかると思うが、現在の3Gの能力では、テレビ電話の映像は画質が悪く、動きがギクシャクしている。コミュニケーション用途にはクオリティが低すぎるのだ。音声通話で例えるならば、ノイズだらけで音も途切れがちな状況のようなものだ。今の携帯テレビ電話の映像クオリティは、多くの一般ユーザーに許容される品質水準に達していない。

 携帯テレビ電話は、ただでさえ「かけづらい」ものだ。その上、せっかくテレビ電話をしても映像が貧弱では、ユーザーは失望してしまうだろう。映像で感動できず、むしろストレスが溜まるようならば、多少の不自由を承知で携帯テレビ電話を使う人はいなくなってしまう。今の携帯テレビ電話は、新市場を創出するどころか、キャリアと技術者の独りよがりと言われても仕方がないレベルにある。

 将来に向けてテレビ電話を本当に普及させたいならば、キャリアはサービスのすべてにおいて見直しを図るべきだ。はっきり言おう。今の携帯テレビ電話は、普及戦略として失敗している。技術的にできるからではなく、ユーザーの視点で求められる品質と機能、料金体系などサービスの在り方を再構築しなければ、いつまで経っても中途半端なままだ。

 コミュニケーションの世界が広がることは、本質的には素敵なことである。各キャリアの技術者の努力にも敬意を表する。だからこそ、「ユーザーに受け入れられるテレビ電話」のために、一歩を退いたところから、商品企画をやりなおす勇気が必要ではないだろうか。

[神尾寿,ITmedia]

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