誠

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連載
2005/10/17 16:25 更新

神尾寿の時事日想:
ようやく実現するか? 無線LAN「コインスポット」

「100円無線インターネット」のニュースを見て、数年前に書いた自分の原稿を思い出した。無線LAN設備を、一時的に多数のユーザーに貸し出せる仕組みは、ノンPCの無線LAN対応が進む今後こそ必要になりそうだ。

 10月14日、恵安が自営アクセスポイントシステム「100円無線インターネット」を発表した(10月15日の記事参照)。この発表を見て筆者は首をかしげた。どこかでこういうコンセプトを記事にした覚えがあったのだ。

 ハードディスクを検索してみると、2002年に日経パソコンの連載記事向けに「無線LANサービスに欲しい“100円コインスポット”」というタイトルの記事を書いていた。当時、公衆無線LANアクセスの第1次ブームのさなかであり、その中でエリアと料金の問題を指摘して書いたのだった。

 あれから3年、ようやく“コインスポット”向けの設備が登場したわけだが、その間にモバイル市場を取り巻く状況も変化した。

 まずノートPCの無線LANはインテルの努力もあり、標準機能になった。利用するか否かは別として、無線LANが利用できるPCは増えている。ノートPCの軽量化とバッテリー持続時間の拡大も進み、その気さえあれば、実用的なノートPCを使ったモバイルが利用できるようになった。

 もう1つの大きな変化が、ノンPC分野への無線LAN普及だ。その筆頭はポータブルゲーム機で、任天堂の「ニンテンドーDS」(2004年5月12日の記事参照)とSCE(ソニーコンピューターエンタテイメント)の「PSP」(2004年12月7日の記事参照)が共に無線LAN機能を内蔵している。

 携帯電話も無線LAN対応の拡大が確実視される分野だ。そのトリガーはFMCであるが、2006年後半から2007年には3G+無線LANのハイブリッド端末が増えそうだ。ドコモが躍起になって、現在は採算性の低い公衆無線LANサービス「Mzone」に投資するのも、将来的にメインストリームの携帯電話にも無線LAN対応が進む布石だと、筆者は考えている。

コインスポット、ビジネスとしての難しさ

 ノートPCの市場は着実に広がっているが、規模の上では携帯電話やポータブルゲーム機は「ケタが違う」のが現実だ。これまでの公衆無線LANアクセスのビジネスを見ても、PCユーザー向けのみでは、採算の取れるスポットエリアは限られ、ビジネスの規模にも限界がある。コイン式駐車場のように、コインスポットを街中に普及させるには、ノンPCの取り込みが不可欠だろう。

 しかし、その一方で、ノンPCは初期設定の簡易化や手厚いサポート体制、メーカーやキャリアとの連携が欠かせない。利用に伴う設定に関して“セルフサービス”であった従来の公衆無線LANアクセスでは成功しない分野だ。「100円無線インターネット」は課金面では柔軟であるが、ノンPCを想定すれば、やはり設定やサポート面で課題を抱えていると思う。

 ノートPC、そしてノンPCにおいて、公衆無線LANに対するニーズは大きくなっている。しかし、そのビジネスモデルについては今も暗中模索なのが現実だ。「100円無線インターネット」のようなコインスポット設備を活用する事業者とビジネスモデルが登場するかどうか。期待を持って見守りたい。

[神尾寿,ITmedia]

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