「パラダイムシフトを見破るのなんて、簡単だ」短期集中連載・夏野さんに聞いてみよう(1/2 ページ)

» 2005年10月07日 23時59分 公開
[杉浦正武,ITmedia]

 短期集中連載「夏野さんに聞いてみよう」、第3回はNTTドコモ執行役員の夏野剛氏が携帯業界の進化の歴史をどうとらえ、今後の動向をどうにらんでいるかに焦点を当てる。

 本連載は10月5日に開催された「NICT情報通信ビジネスセミナー2005」での、ドコモのプロダクト&サービス本部のマルチメディアサービス部長、夏野剛氏の講演内容を紹介するもの。同講演で夏野氏は、多岐にわたる内容を歯に衣着せぬ物言いで話した。

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「携帯が普及したのは、アナログがデジタルになったからじゃない」

 夏野氏は、携帯電話の歴史を振り返るとこれまでに3つの大きな変化があったと話す。これは夏野氏の持論であり、これまでも発表会場で同種の主張をたびたび展開している(2004年6月16日の記事参照)

 最初の大きな変化は、音声通話用の携帯電話が大幅に普及したタイミングを指す。夏野氏はこの原因を「アナログ方式からデジタル方式に切り替えたことが関係した、というひとがいるがこれは全然関係ない」と断じる。

 夏野氏が指摘する音声携帯が普及した原因は、ずばりいって端末販売の方法を改めたこと。それまで携帯は「(10万円単位の)高い保証金を積んで、ドコモから“レンタルする”かたちで使ってもらうという、すごいことをやっていた」。それを、長く契約してもらえることを前提に端末本体を安く提供する……という今日のような販売方式に改めたところ、爆発的に普及したとの見方だ。

 夏野氏はこの変化は、トップの判断によってもたらされたと振り返る。「当時のドコモの社長が過激な男でですね……(笑)。大星(公二氏)というんですが、やっちゃえということで」。最初のスタートダッシュに成功したドコモは、巨大なマーケットシェアという報酬を得ることになる。

 「当時はすごい時代だった。一番エリアがつながるのもドコモ、一番端末が小さいのもドコモ。しかし5年もやると競争のやり方が分かるもので、ほかの企業も追随してくる」。夏野氏は、光通信のように“より過激”な手法で携帯を販売する事業者も出てきたと話す。

 「1999年になると、差別化が効かなくなった。そこで導入したのがiモードだ」。これが2番目の大きな変化になる。夏野氏はこのような業界全体を巻き込む大きな変化をパラダイムシフトという、と解説し「こういう時がビジネスチャンスなのだ」と説く。

 夏野氏は、ブロードバンドの分野でソフトバンクグループがとった手法も、携帯の分野でドコモがとった手法と似ていると話す。

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