マイクロソフトがスマートフォン市場に本格攻勢。日本市場への影響は? 神尾寿の時事日想:

» 2005年09月30日 10時54分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 9月24日、米PalmとMicrosoftが正式に提携を表明。PalmがMicrosoftからWindows Mobileをライセンスし、スマートフォン「Treo」に採用することが明らかになった(9月24日の記事参照)

 スマートフォンは欧米市場におけるハイエンド携帯電話であり、PDAの代替という形でホワイトカラーを中心に普及している。これまで、この市場は携帯電話に特化したSymbian OSが強い分野であったが、PC用OSの巨人であるマイクロソフトが、いよいよ攻勢を強める。特に今回、アメリカのPDA市場で影響力が大きかったPalmとMicrosoftが手を組んだことで、ノキアやモトローラ、サムソンなど携帯電話メーカーの採用によって一大勢力を築くSymbianに相対する形になった。乱暴な言い方をすれば、PDA側から発展したWindows Mobile陣営と、携帯電話側から発展したSymbian陣営の衝突である。それは、PDAメーカーと携帯電話メーカーが「ハイエンド携帯市場」を取り合う戦いでもある。

 さて、日本市場を翻れば、この戦いは今のところ対岸の火事である。日本ではビジネス市場でPDAがほとんど受け入れられなかったためだ。特定業務向けのハンディターミナル市場は存在するが、汎用的なPDA市場は非常に規模が小さい。携帯電話のハイエンド化はiモード以降、コンシューマーユーザーのニーズが牽引してきた。スマートフォンを求める声はあっても、その多くはPC利用に長けた一部のユーザーであり、本来のターゲットである法人市場やホワイトカラーのニーズが立ち上がっていないのが現状だ。

 SymbianやLinuxなど汎用OSに話を限れば、採用例は増えつつあるが、これはあくまでコンシューマー向け端末の開発コスト削減と多機能化対応への布石である。

 これは日本市場の大きな特徴なのだが、日本の携帯端末は“コンシューマー向け”が前提なので、UIは端末メーカーが自由に作る必要がある。この理由により、UIが統一されているWindows Mobileは日本市場に入りにくいだろう。日本の携帯電話市場にMicrosoftが進出するには、Windows Mobileが、Windows Automotiveのように組み込みOSに特化し、UIをスキン化して“解放”する必要がある。

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