BREWの特徴を生かしたビジネスアプリとは BREW最新事情(3/4 ページ)

» 2005年09月09日 17時56分 公開
[平野正喜,ITmedia]

 メディアソケット取締役の西本雅一氏は、今年6月、BREW JAPAN .COMに「BREWコミュニケーションアプリの可能性と本格的なビジネス向けメーラの開発について」と題したコラムを寄稿している。この中で西本氏は「メールを使ったコミュニケーションアプリには大きなニーズと可能性がある」ことに加え、「コミュニケーションサービスやアプリは、コンシューマ分野が主流だったが、最近では、端末の進歩により、ビジネス分野でも十分に利用できるアプリが開発できるような環境が整ってきた」ということを背景にして「法人分野のニーズを取り入れた本格的高機能ビジネスメーラ」として「POPメーラ」を開発したと述べている。

 西本氏はBREWの大きなアドバンテージについて「端末連携機能と通信機能が開放されていることであり、特に、この通信機能はソケットレベルのIP通信として利用することができるので、多様なネットワークアプリケーションの実現を可能としている」と説明している。これを読むと「POPメーラ」がBREW上で開発された理由も納得がいく。

 また西本氏は「今後も端末やプラットフォームの機能拡大に合わせて、多くの機能を取り込んでいくことができるようになるものと考えている」とも述べているが、筆者は、加えてダイナミックなカスタマイズが可能になることを期待している。あまり使わない機能が増えた結果、全体の動作の軽快さを失っては意味がない。できれば、BREWアプリの特質を活かした小さく軽快なメーラーを中心に、各機能を部品的に配置し、用途に合わせて機能を差し替えたり、使わない機能を外したりできるメーラが実現すれば、多くのビジネス分野での利用が期待できると思われる。

BREWならではの個人情報保護&漏えい防止機能を備えた「渉外支援システム」

 今年7月に開催された展示会「ワイヤレス・ジャパン 2005」(特集参照)のKDDIブースでは、BREWのビジネスソリューションに関するプレゼンテーションが複数行なわれた。

 その中で紹介されたのが、KDDIと日本ヒューレット・パッカード(HP)による協業事例だ。KDDIとHPが3月に発表した「渉外支援システム」(3月11日の記事参照)のフォローアップといえる内容である。

 「渉外支援システム」は、金融機関の渉外対応者を対象としている。金融機関では、顧客の名前や住所のほか預金残高などの情報を専用の端末や用紙に出力して外に持ち出して渉外を行うのが一般的だ。このシステムでは、担当者が毎朝、その日訪問予定の顧客データを携帯電話にダウンロードし、ダウンロードしたデータを参照しながら顧客訪問を行なえる。渉外支援システムを利用することにより、業務を効率化すると共に、個人情報の保護や漏えい防止対策を徹底できる。

 鍵になったのは、高い個人情報漏えい防止機能である。現実のビジネスでは営業効率と防御対策のバランスが難しく、特に金融機関の渉外対応者の場合は、情報の取り扱いが個人任せになっている部分が多い。個人情報保護法をここにそのまま当てはめ、訪問顧客情報の持ち出し制限をかけたりしてしまうと、渉外対応者の能力を落としかねないのである。

 「本当に講じなければならない対策」としてKDDIが説明したのが、「情報漏えいリスクが最小限になるインフラ」「情報漏えいした場合の2次被害対策」そして「“使えるシステム”の構築」である。

 まず「情報漏えいリスクが最小限になるインフラ」としては、通信の全ての経路でデータを暗号化することなどに加えて、BREWアプリによる「その日の活動が終わるとデータが自動的に消去される仕組み」を開発した。

 次に、「情報漏えいした場合の2次被害対策」については、携帯電話内の情報にアクセスするための認証パスワード設定などに加えて、一定期間データアクセスがない場合にデータを自動的に消去する機能を搭載した。もちろん、携帯の紛失時などに、システム管理者から携帯電話に情報を直接送信できる「センタープッシュ機能」で、携帯電話内の個人情報を消去することもできる。

 最後の「“使えるシステム”の構築」が、簡単そうに見えて、もっとも難しかったのではないだろうか。受信が遅く圏外エリアでは使い物にならないWeb方式に対して、(BREWアプリによる)ダウンロード方式が提供するユーザの使用感のアップが述べられている。訪問先が圏外でも圏内でも利用できるため、渉外担当者は場所を気にせずに業務ができる。

 また、万一携帯を紛失した場合には、データ消去が完了した時点で、GPSによる位置情報が付加された確認メッセージが管理者に送られ、紛失した携帯電話の位置が特定できるようになっている。これも、GPSや携帯内蔵カメラと連携できるBREWのメリットを生かした例といえるだろう。

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