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2005/08/30 12:57 更新
神尾寿の時事日想: 
伊予鉄道はなぜ、「FeliCa採用」に踏み切ったのか (前編) (1/3)
おサイフケータイで電車に乗れるサービスを開始した、愛媛県の伊予鉄グループ。FeliCa採用は単発的な取り組みではなく、総合的なサービス向上施策の一環として導入された。慢性的な利用客減少と戦う、地方交通事業者の実情とは……?
8月23日、愛媛県の伊予鉄グループが非接触IC FeliCaを採用した「ICい〜カード」と、おサイフケータイ対応の「モバイルい〜カード」のサービスをスタートした(8月23日の記事参照)。同サービスは鉄道・路面電車・バス・タクシーという複数の公共交通手段を網羅し、おサイフケータイにも対応した。これらはすべて“全国初”の画期的なサービスである(8月24日の記事参照)。
伊予鉄はなぜ、これほど早いタイミングで「FeliCa全線採用」と「おサイフケータイ対応」に踏み切ったのか。また、そこにはどのような狙いがあるのか。
今日と明日の時事日想は特別編として、伊予鉄グループでICカード事業を担当するe-カード常務取締役である西野元氏のインタビューをお届けする。

通用しなくなってきた「地方のビジネスモデル」
ICい〜カード事業がなぜ立ち上がったのか。それを知る上で欠かせないのが、地方の公共交通システムと経済の関わりである。
周知の通り、地方では全国的に交通のクルマ(自家用車)依存度が高くなっており、一方で公共交通のニーズ・利用者が減少する傾向にある。これは伊予鉄グループが事業を行う愛媛県でも同様であった。
「平成12年度までで見れば、バスの利用者は最盛期の14%、7分の1以下にまで減ってしまった。鉄道の利用者についても(最盛期の)50%ダウン。(伊予鉄グループの公共交通事業全体で)毎年4〜5%ずつ利用が減っていくという状況にあった。当時、伊予鉄グループの鉄道・路面電車・バスで、毎年3〜4億円の赤字が出るという状況で、その分を不動産事業や百貨店事業、航空代理店事業で穴埋めするという構造」(西野氏)
しかし当然ながら、本業である交通部門の不振は伊予鉄グループにとって死活問題だ。ボディブローのように企業体力をじわじわと削り取る。特に伊予鉄が危機感を感じたのが、交通システムと地方経済の変化だった。
「モータリゼーションの進展により、道路がよくなり、クルマの所有台数が増えた。駐車場が整備された郊外型店舗が増える。大規模デベロッパーによる郊外の開発が進むことで、クルマの方が便利になり、公共交通離れが加速していく。これは地方都市の中心部から(大規模駐車場がある郊外型ショッピングモールに)人が離れてしまう事でもあります。同じベクトルで、公共交通の利用者も減っていくわけです」(西野氏)
クルマの普及と、クルマ中心社会への地方経済の変化が、人の流れを郊外に拡散させてしまい、中心市街部の空洞化と公共交通の衰退を招いているのだという。西野氏は「高度経済成長期に作られた地方の私鉄・バス事業のビジネスモデルは、(モータリゼーションなど)時代の変化の中で通用しなくなっている」と指摘する。
このような状況は愛媛県に限らず、多くの地方で起きている。地価が安く、クルマ中心の街作りをしやすかった地方郊外ほど、モータリゼーションが急速に進んだのだ。そして、交通システムの変化が地域経済を、道路沿いに店舗が連なる「ロードサイド型」や、飛び地のように大規模店舗が点在する「ショッピングモール型」に変えた。
「伊予鉄もかつてそうだったのですが、公共交通事業者も時代の変化に対して、サービス品質の向上で対応するのではなく、運賃値上げといった形で利用者にコスト負担を求めてしまった。しかし、これでは悪循環だったのです」(西野氏)
[神尾寿,ITmedia]
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